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「#切ない」のBL小説を読む
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 たとえば、手をつなぐと恥ずかしがる。ほしいものはないかと問えば、とくにないと返される。何か作業をしているときに手伝うと申し出れば、大丈夫だから待っていてほしいと帰される。もてなす側の部屋の主が、ティータイムの準備をしてもらうなんて事態もあった。

「さすがにひどいと思うんだ」

「……それは……えっと、ごめんなさい」

 ムスッとしたジョージの正面で、リンが殊勝に目を伏せる。そういう表情をさせたいわけではない。シミュレーションと違って上手く話が運べていない自分に苛立ちつつ、それを押し込めて優しくリンの名前を呼ぶ。目が合って、ニッコリと笑いかける。

「俺を傷つけた罰として、リンにはこの商品の実験体になってもらう」

 左右で色の違う丸眼鏡のような形のグミを見せると、リンがぱちくりと瞬いた。何これと尋ねられたので、寂しがりグミ(仮)と答える。

「こうブチッとちぎって、二人で半分ずつ食べる。そしたらしばらく、その相手と離れると寂しくなって、そばにいると満足するって商品だな」

「それ需要あるの?」

「あるぜ」

 たとえば片想いしてる子とか、倦怠期のカップルとか、まあその他大人の事情を抱えた人間たちからの需要が。と馬鹿正直に説明しかけて、すんでで呑み込む。リンに聞かせていい内容じゃない気がする。

 咳払いを一つして、ひとまずグミをちぎる。片割れを差し出すと、リンが見るからに苦い顔で渋々受け取った。

「ヨシノの魔法使って効果なくすとかはダメだからな」

「しないよ、そんな不正」

 淡々と言って、リンがグミを口にした。ジョージもグミを口に放り込む。固さはちょうどいい、味も美味い。グミとしては何の問題もない商品である。寂しがり成分の効き目は、人によるが。

 先日フレッドがアンジェリーナに食べさせたときは、あまり効果がなかったらしく、珍しく何度もため息をついていた。回想しているうちに、グミが喉を通過した。リンを一瞥すると、彼女も食べ終わったようで、ぎゅうと唇を引き結んでいた。

「……水ほしいな」

 さりげなく立ち上がって、杖を取り出す。リンもいるかと聞いたら控えめに肯定されたので、うなずいてキッチンに姿くらましした。呼び寄せ呪文にしなかったのは、一回離れて彼女に寂しい思いをさせたいという下心である。

 我ながら性格が悪いと感想を抱きつつ、部屋ではどんな反応をしているのか気になりつつ、なるべく緩慢な動作でグラスを戸棚から出す。ふだんだったら魔法で用意しているのに珍しいと、ロンに怪訝な目で見られたが無視した。

 水の入ったグラスを持って姿現わしするとこぼれるという名目の元、地道に階段を上って部屋に戻る。勝手にドアが開いて、リンが「おかえりなさい」と迎えてくれた。至って無表情だが、どことなく雰囲気がそわそわしている。どうやら効いているようだ。ジョージは内心でガッツポーズを決めた。

 さっさと水を飲んで、リンを引き寄せる。いつもだったら一瞬は逃げるはずなのに、無言で抱きしめられてくれた。なんだこれすごい。感動しつつ、ぎゅうぎゅうと抱きしめる。

「……苦しい」

「ごめん」

「………ッ」

 気合いで潔く解放すると、寂しそうな目で見上げられて、ついでにシャツを握られ、軽く引っぱられる。いつものリンにあるまじき様子に、意地悪して駆け引きしたい気持ちが揺らいだ。

「……キスしたい」

 気づいたらまたリンを抱きしめていて、おまけに願望が口から漏れていた。リンの身体がかすかに跳ねる。さすがにお預けを食らうだろうか。考えていたら「い、」と声がした。

「一回だけ、なら……」

 マジか。歓喜して、遠慮なく唇を重ねる。完全には唇を離さないように気をつけて角度を変え、引き剥がそうとしてくるリンの手を無視して口内に侵入する。一通り好き勝手したあと唇を離すと、恨みがましい目で見られた。

「ッ、一回だけ、って、言ったのに」

「唇くっつけてから離すまでが一回だろ」

 ニッと口角を上げて見下ろすと、たいそう物言いたげな顔をされた。ジョージは目を細めて、片手でリンの顔の輪郭をなぞる。リンの頬が薄く染まった。

「涙目でそんな表情されると、またキスしたくなるんだけど」

「……誰のせいだと」

「俺だな。お褒めいただき光栄至極」

「褒めてない」

 ムッとした表情のリンの額に、ジョージが自分の額をくっつけた。リンが目を丸くして、困惑したように視線をさまよわせる。ちょんと鼻先をくっつけると、反射なのか目をつむっておもしろい。

「なあ、まだ寂しい? 俺のシャツ、また引っぱられてるけど」

「……?!!」

 リンがのけぞろうとして、ジョージの腕に阻まれて失敗した。真っ赤な顔をそらして、唇を引き結ぶ。シャツを引っぱっていた手も離れて、しかしさまよったのち恐る恐るとジョージの背に回ってきた。

「……グミのせいだから」

「うん、そうだな」

 吹き出しそうになるのをこらえて相づちを打つ。リンが不機嫌そうな顔を向けてきたが、赤面なのでいつものような迫力はあまりない。

「リン、かわいい」

 頬にキスを落とす。一拍のち、首筋に軽く頭突きを食らった。地味にダメージが大きくて、調子に乗り過ぎて怒らせたかとヒヤリとする。リンの頭が小さく動いたので身構えたが、首筋にすり寄るような動きに変わったので身体の力を抜く。

 片手で髪を梳くように撫でて、時おりポンポンとしたり、自分の頬をすり寄せてみたりと、貴重なハグを楽しむ。幸せだと呟いたら、リンが身じろいだ。

「……さっきの、なんだけど」

「うん?」

 さっきのってどれだ?と疑問に思いつつ、リンの言葉を待つ。背中側のシャツが軽く下に引っぱられる感覚がした。

「……もう一回なら、キス、していい」

「えっじゃあ遠慮なく」

 頭が理解するより先に口が返事をして、そのままの勢いでリンの唇に重なっていた。キスしながら状況を把握して、そんな自分に呆れてしまった。だが結果幸せなので問題ない。

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 ビルのほうが簡単にイメージできたのですが、それならむしろジョージで書いてみようと。ジョージに甘やかされるっていうのが新鮮な印象でした。ただ書いてるうちに流れが変わって、果たしてこれはドロドロな甘やかしと言えるのか……。言えると信じてアップします。
 WWWにはこんな商品ないと思うけど、ぜひ作ってほしい。



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