「アルバ、大丈夫?」



 心配そうな表情を浮かべたハーマイオニーは、床の上の松明を見て、杖の先から水を出し、あっという間に消火した。さすが、我らがグリフィンドールの頼れる頭脳だ。アルバは感嘆し、礼を言った。



「ありがとう、ハーマイオニー」


「べつに、これくらいどうってことないわ。それより、あなた本当に大丈夫? どこかに怪我とかしてないわよね?」



 じっと見てくるハーマイオニーの後ろで、もう一人に宥められていた金髪の女子生徒が、アルバに顔を向けた。ゆらゆら揺れる瞳が、アルバを見つめる。彼女の目を見返して、アルバは快活に笑ってみせた。



「大丈夫、ぜんぜん無事! ほら、俺、反射神経いいから、華麗に避けたよ。こう、正義のヒーローみたいな、かっこいい動きでさ」



 シュパッと「かっこいい動き」を軽く実演したあと、首を傾げながら「俺の勇姿、見ててくれた?」と言ってみせる。そんなアルバに、見知らぬ女子生徒二人が目を丸くする。その前で、ハーマイオニーが溜め息をついた。



「まったく、アルバったら。すぐヒーローごっこに持ち込むんだから……でも、それだけ元気なら大丈夫ね」


「ごっこ遊びじゃないって。本気だよ、本気!」


「はいはい」


「おい、ハーマイオニー、ほんとに、」


「……ふふっ」



 軽く手を振ってあしらってくるハーマイオニーに、アルバが口を開いたとき、誰かがクスクス笑い出した。視線を巡らせて、アルバは瞬く。金髪の女の子と、その隣にいる女子生徒が、そろって笑っている。


 さっきまで泣きそうな顔をしていた女の子が笑っているので、アルバはホッとした。よかったと思って見ていると、不意に、アルバの目と彼女の目が合った。途端、彼女の顔が赤くなる。



「……あ、ご、ごめんなさい、ちがうの。ただ、あの、ちょっとおかしく、じゃなくて、その、おもしろかったから、」


「ああ、うん、大丈夫。馬鹿にしてるんじゃないって分かってるさ」



 あまりにもオロオロする様に笑い出したくなるのを抑えて、アルバはニッと笑った。金髪の女の子は、それを聞いて安心したようだった。身体の力を抜いて、アルバを見上げてくる。



「ありがとう。あなた、とってもいい人ね!」


「え? あー……そう、なのかな?」



 困惑するアルバに「そうよ」と力強く頷いて、女の子はニッコリと微笑んだ。



「私、ハンナ・アボット。ハッフルパフの五年生よ。あなたの名前は?」


「……俺は、アルバ・ゴールド。グリフィンドールの四年生さ」



 先輩だったのか……てっきり同級生か後輩だと思ってた……。少しばかり失礼なことを考えるアルバの前で、ハンナは、うれしそうに彼の名前を口にしたのだった。




 頭上注意
 

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