聖なる日には…《銀土》


 
 クリスマスイブ。この日俺は誰にも会うでもなく、一人寂しく過ごしていた。土方はと言うと、ご苦労なことに恋人の俺をほったらかしにして仕事に行ってやがる。だからそんな寂しさを紛らわすため、なけなしの金でパチンコにでも行こうかと準備をする。





【聖なる日には…】





そして玄関を開け、一歩前へと踏み出した、その時。踏み出した足の爪先に当たった箱。
 プレゼントなのか?
 白い箱に赤いリボンがしてある。


「っんだぁこれ」


 ひょいと持ち上げてみると思ったよりも軽い。だが、









 怪しい。










 こんなとこに普通置かねぇだろ。
 その怪しげな箱を持ったまま中へと引き返す。机の上に置き、しばしの観察。だがそれで状況が変わるわけでもなく、ただ時間が過ぎていくだけ。


「仕方ねぇ。開けてみっか」


 ガリガリと天パの頭を掻き、リボンを外し箱を開けてみる。中に入っていたもの、それは―――


「瓶?…と、手紙か…?」


 手紙を手に取り開いてみる。そこには達筆な文字で書かれた文章。





 “銀時へ―――
 久方ぶりだ、銀時。元気にしてるか?俺はエリーといつも一緒だから全然寂しくなんかない!毎日が楽しすぎる位だ!さて、この箱のことなんだが、何かわかるか?ん?わからんだろう。教えて欲しいか?それは無理な願いだ。なんせ、俺もわからんからだ!”


「…は?んっだぁこいつはよぉ!!ちょーウゼェェ!髪もウゼェが全てがウザいなおい!!」


 頭に青筋を浮かべ叫ぶ。そして続きを読んでいく。


 “これは辰馬から預かったものでな、金時に渡してくれと言われ玄関に置いた。俺はお前と違い優しいからな。まぁ、辰馬のことだ。他の星の珍しい飲み物かもしれん。心して飲めよ。じゃあな。あでゅー☆”


「あでゅー☆じゃねぇぇえぇ!!今度会う時お前のウゼェかみ引きちぎってやるからなぁぁ!」


 ビリビリと手紙を破り箱に投げつける。だが怒りがあっても瓶の中身は気になるんだよなぁ…。恐る恐る瓶を手にとってみる。見た目は栄養ドリンクとなんらかわらない。ただ問題なのは“中身”だ。
 俺だって伊達に二十何年生きて来たんじゃねぇ。この飲み物のだいたいの予想はつく。


「媚薬…だよな…?」


 目の高さに瓶を持ってきて、横に振ってみる。正直実物を見るのは初めてだ。




 だからこれはほんの出来心。興味本意だ。










 だから





 そんな出来心や興味本意にまかせて…










 飲んでみた。





 蓋を開けると甘い匂いが鼻につく。
 まぁ、甘党な俺には何の問題もねぇんだけど。
 ゴクッと一口飲んでみる。味も匂いと同じで甘い。そして驚いたのが…この媚薬、スッゲェ美味い。残りは一気に飲みほす。が、体は何にも起こらない。

 そんな早く効き目あるわけねーし。でも…


「媚薬じゃなかったんじゃねぇか?」


 俺の思い過ごし…か?





 ピンポーン





 万事屋に鳴り響いたインターホンの音。そしてガンガンと戸を叩く人影。


「おい万事屋っ居んだろ」

 土方!!?なんで…今日は仕事じゃねぇのかよ。





 ドク…ン…





 …?…何だ?
 

「居留守なんか使うんじゃねーよ。早く開けろ」

「あーもー。今行くから待ちなさいって!んな急かすなよなー」


 確かに今土方の声に体が反応した。だがそれも一瞬のこと。気のせいだろうとあまり気にせずに玄関へ向かおうと椅子から立ち上がる。


「早くしろよ」


 ポツリと戸の外で土方が呟く。





 ドクンッ…ドク、ン…ドクンッ





「!?…っは、…はぁっはっ…!!」


 土方の声を聞いた瞬間、体が急に熱くなり、息も上がってきた。気のせいなんかじゃない。しかも意識が朦朧としてくる。


 何つーか…俺、今相当ヤベェ。





 なんたって





 土方を










 犯してぇ…





 なんて思ってやがる。


「おいっテメェ今日は帰れ!だった今用事ができた!!」


 荒くなった息を必死に抑え、本当は帰したくなんかねぇと頭ん中じゃ思っている。今すぐにでも家ん中に連れ込んで犯しちまいたい。
 いや、駄目だ!犯すって…。



「はぁ?ざけたこと抜かしてんじゃねーぞテメェ」


 だよな…。簡単には帰ってくれるはず何かねぇよな。だんだんと熱さを増す俺の体。


「はっ…は、ぁ…は!」


 しかも帰れと言いながらも言うことを聞かない体が、勝手に玄関を開けようと戸に手をかける。


 ヤベェ…やめろ、駄目だ、会っちまったら…抑えがきかなくなる。


 俺の体は考えていることとは反対に、勢いよく戸を開けた。その瞬間、プチリ、と俺の中で理性がぶっ飛んだ。グイッと目の前に現れた土方の腕をつかみ、押し倒すように中に引き込む。案の定土方は体勢を崩し床に倒れ込んだ。


「いっ…てぇな!何しやが…!!?」


 文句を言う土方にはお構い無しで跨がり、うるせぇ、と呟くと文句を言う口に俺の口を重ねた。くちゅ、と舌を無理矢理割り入れねじ込むと、俺の唾液が下になっている土方に流れこむ。
 むせれなくて苦しいのか、土方は眉を寄せる。含みきれなかった俺の唾液と土方の唾液とが混ざりあい土方の口端から流れる。喉を上下させる土方を見れば、ぞくりと背中に何かが走る。
 そして沸き上がる犯したいという気持ち。唇を放した頃には俺も土方も息は上がり、目の前の土方は少し頬を紅く染めていた。


「いきなりなんだ…っておまっ何やって…」

 驚くのも無理はない。俺は土方に跨がったままベルトを外し自身を取り出したんだから。土方は状況がわからないらしく、だが自分の身が危険ってことはわかるようで、俺から離れようともがく。
 けどもう遅いんだよ。


「どけっ…ぐっ!!?んっんン!!」


 土方の後ろ髪を掴んで上半身を無理矢理起き上がらせ、何か言おうとして開いた口の中に自身を捩じ込んだ。


「がっ…んっ!」


 咳き込むことも出来ず、土方はただ顔を歪めることしか出来ない。そんな土方にはお構い無しに俺は掴んでいた後ろ髪を前後に揺さぶる。
 ぐちゅっじゅぷっと音をたて、土方の頭は無理矢理揺らされ、口からは俺の先走りと土方の唾液とが溢れだしてだらだらと流れていた。


「はっやっべぇ…気持ちー…」


 ガンガンと腰に打ち付けられ、目は虚ろになり少し涙が浮かんでいるようにもみえた。だがそんな土方を見て俺は余計に、もっと虐めてぇ。鳴かせてみてぇ。なんて思うようになった。


「…なぁ…」


 動かすのを止め、土方を見下ろし語りかける。口にモノつっこまれたままの土方はなんだよ、とでも言うように俺を上目遣いに見る。
 ……だから今の俺にそんな顏はヤベェって。まぁ、こんななってんのも土方にこんなことさせてる俺が悪いんだけどよ…。
 キッと睨んだ土方と目を合わせたら、笑うつもりもないのに少し口端をあげ、笑いが漏れた。


「タチってどんな気分だよ…。…なぁ、土方?そんなに、気持ち良いのか…?」


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