僕の住まいに、侵入者はもってのほかだ。


なのに、この人だけはここに入れざるを得ないのは、たぶんしょうがない事なんだろうと思う。




「あはー!恭ちゃんいいから、そんなのあとで良いからこっちきて手伝いな!」


「奇声、発しないでくれない、頭痛いから。」


「なにぃー?
二日酔いか、いっちょまえに?」


「委員会の仕事、たまってて、疲れてるんだ。
だいたいなんで貴女が日本に居るの、仕事は?」


「夏季休暇中よん、恭弥ちゃんと違ってお仕事ためないから。」


「…貴女じゃなかったら、咬み殺してるところだ。」


「やれるもんならやってみな、ぼうや。」




目の前でジェンガを積み上げる彼女、カプチーノの色が夕日に輝く。
なんとも挑戦的にこちらを見る。

体を起こして、ソファーにぼすんと座り、長い足を組む。



「アンタはあたしにはまだ勝てない。」




ゆったりと笑っていうものだから、もうどうにかなるものでもない。



「…うるさいよ。」




昔、綱吉と一緒に居て、偶然彼女に会った。
綱吉と彼女の仲は知ってるけど、なんだかな。
調子、狂うんだ。

彼女の強さなんて、痛いくらいにわかってる。
叶うはずが、ない。

綱吉と同じだよ、絶対的な存在。

彼女に逆らったら、たぶん生きては帰ってこれない。


僕というものでさえ、こんな事を思うんだから、彼女は本物だ。






「葵、貴女、帰らなくていいの。
そろそろ綱吉のお母様の手料理が出来上がる時間だと思うよ。」


「その綱吉のお母様に言われてここまで歩いてきたんだっつーの、今日はアンタもうちで夕飯食べてきな。」


「は?なにそれ、どういうこと。」


「お母様がさぁ、恭弥くんも誘いたいわねぇ、ってさ。
あたしはわざわざ迎えに来てやったんだよ、感謝しな。
ほら、アンタの見事な無免許運転であたしを送れ。
そして夕飯食べてけ。」


「…頭、痛いなぁ、もう。」






(どうせなら泊まってけば?あたしはビアンキと一緒に寝てるからアンタは綱吉と一緒に寝るといいよ。)


(綱吉とかの迷惑、考えないよね。)


(大丈夫、お母様さえOKしてくだされば綱吉はあたしが何とかするし、委員会の仕事だって、あたしと綱吉が手伝うわよ。)


(…悪く、ないね。

とばすよ。絶対僕につかまんないでよ。)


(恥ずかしいのか、少年!)


(殺す。)




FIN.

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