リクエスト.パパな綱吉くんと娘.仲良し家族にご注意!*








(パパ、あたしのパパ。)

ママのことが大好きで、とってもやさしいパパ。
あんな人があたしのパパじゃなかったら、たぶんあたしはものすごい反抗期を迎えてるんだろう。
そのくらいサイコーにすてきなパパ。
あたしに恋人ができるなら、きっとパパみたいな人を選ぶんだろうなって思う。


「…どうした?」

「…なんでもなーい」


にっこり笑って、ナニソレっていう。
そんなパパの年に見合わないスマイルをみて、はー今日もいい日だなーなんて思ったり。
お父さんっ子っていうか、もうファザコンの粋に達するんじゃないか。
あたしは、パパが大好きだったりするもので。
たまにむかつくし、怒るとすっごくこわいんだけどね。




愛すべきパパ








なんでいきなりこんな風にパパを紹介したかっていうと、今日があたしのクラスの授業参観の日で、それにパパが出席するからである。

はじめに言っておくと、あたしのパパとママはどちらも学校の先生をしている。
ママは大学の教授で、パパは私立高校の講師だ。
両親が先生だなんていうと、あたしは世間様から頭の良いおうちの子とかって思われちゃうんだけど、申し訳ないことに勉強はあんまり得意じゃなくて、かわりに絵とか小説とか写真とか、そういったものが得意な私である。
だから、正直パパとかママに、授業参観に来てほしくなかったりするわけで。

そんなこというとママは怒るんだけど、パパはちょっと違った。
「俺も中学生の頃とか、ぜんぜん勉強できなかったからなぁ。似ちゃったんだな。」
なんていってはげましてくれるものだから、あたしってばいつも調子に乗ってしまうのだ。
あたしの性格とかはけっこうパパに似ていて、ママもそれを承知であたしのことをパパに任せている。
だからこんなにもパパっ子になってしまったんだろう。


「パパ、あたしたぶん指されても答えらんないよ」

「あーいいのいいの。元気に学校行ってればいいんだって」

「パパ…。パパってちょっと変わってる…」

「そんなことないよ」


今日の授業参観も、ママは学会でこれないっていうものだがら結局パパにお願いしたのであって、あたしはそれがなんだかうれしかったのであって。
来てほしくない、なんていっても、結局は来てほしいのだ。
本当はママにも来てほしいんだけど、ママが勉強で忙しいのはあたしとパパの誇りだったりするもんだから、せめたりしない。

ああ、やっぱりあたし、こんな両親じゃなかったら普通に反抗期だったのかも。
特にパパがママのこと大好きじゃなかったら、あたしもきっとママを嫌いになってたかもしれないから、うん。パパが居てよかったなって思う。
あたしがちっちゃいころからおちゃめでやさしくて、かっこよくて自慢のパパだったもんだから、中学生になった今でも、その感覚が抜けない。


「今日の授業参観もさ、またメアド聞かれるかもね」

「ばか言うなよ、いくつだと思ってんの」

「ぱっとみかなり若パパじゃん。こんな大きい子供いるように見えないよ」

「はいはい童顔ですよ。そんな俺の娘だからお前もまだ小学生にしかみられないもんな」

「背が大きければ顔の幼さは問題になんない!」

「背の大きい小学生」

「30代の高校生!」

「こ、高校生かよ」

「こないだお酒売ってもらえなかったんでしょ。ママから聞いちゃったもーん」

「かわいげないぞーまったく。あ、時間ぎりぎり。そろそろ行かないとまずいんじゃないの」

「わっ!やば!じゃあパパ、あたし先に行くね!」

「俺もなるべく早く行くから。あー、車とか気をつけろな!」

「パパもね!あとママにメール!忘れたらママ怒るよ!今日はありがとーよろしく!いってきまー!」

「はいはいいってらっしゃーい」



のんびりパパと話してたりしたら遅刻ぎりぎりの時間になっちゃった、なんてこともよくある。
今日みたいに授業参観とかの行事がある日はさすがに遅刻したくないな、なんて思ってても、パパと話してるとなんか気が抜けるっていうか。うっかりしてしまう。

(てゆーか、今日もママふくれちゃうんだろうなぁ)

パパはいま30代も後半なわけだけど、正直そんな歳には見えなくて、たまに高校生にも間違えられるくらいの童顔だ。かなり驚き。
だから勤めてる高校でも女子高生に人気みたいな話だし、こういったまわりの父兄さんたちと並ぶ機会があると、なかなかに話題になってしまう。
去年の授業参観で、ませた同級生がパパを「お兄さん」と勘違いして、メアドを聞こうとしたという経歴があって、さすがに仰天したものだった。
そしたらそれがなぜかママにばれて、ママったらやきもちやいちゃって。
あれにはちょっと笑っちゃったけれど。


なんだかんだと授業には間に合って、お昼前の2時間目まで眠たい授業を耐え抜いて。
あたしの学校の授業参観ってのは、午前中の最後の授業で行われて、その前に清掃をして、授業参観をこなし、生徒は先に帰宅するってのが通常だ。
父兄はその後懇談会とかいうのをやったりするもんだから、親と一緒に帰る子はその間中どこかで待ってたりするし、友達と帰る子はそのまままっすぐ、たまに寄り道して帰るのが普通だった。
あたしはまぁ、パパと帰ろうかな、とか思ったりするんだけど、パパってば色々引き止められて、いっつも最後の最後まで懇談会にいるものだから。
いつしかあたしもその待ち時間にうんざりして、先に帰るようになっちゃったり。パパには悪いんだけど。
だって、正直、女の教師がパパを懇談会にひきとめてるシーンを見たくないんだもの。

とかって考えると、パパのことを睨みたくなっちゃうから、ここらへんでやめとく。
パパが誠実な人だってわかってるから、考えるだけ無駄だもの。
というより今、あたしが一番悩んでるのはお腹へってしかたないってことだ。
授業参観が終わっちゃえば、その後のフリーな時間で友達とパンとか買って食べることは可能。
でも、あたしったら今朝はのんびりしすぎて朝食をぬいちゃったから、もう実は限界なのだ。
なにが困るって、授業参観の間におなかでも鳴っちゃったら嫌すぎるっていうのがあって、なんていうか。
購買いく時間ある?
だめだカンペキに授業間に合わない。
2時間目がおわったら清掃だし、そしたらすぐ授業参観がはじまっちゃう。
はーもー祈るしかないかも。

そんなこんなで授業参観ははじまっちゃったりして、パパも普通に遅刻せずやってきた。
パパはやっぱりお兄さんにしかみえないらしくって、いままでパパをみたことがない同級生たちはちらちらとパパをみてた。
誇らしいけど、憎らしい。
それ、パパ。あたしのパパなんだけど。
授業参観って出会いの場でもなんでもないんだけど。
ひとのパパをみてそわそわしないでほしい。

そんなあたしの複雑な気持ちとは裏腹に、パパはにこやかだ。
加えて先生もにこやか。
こーゆー日って先生はいじわるで、道徳の授業なのに生徒に本をマル読みさせる。
しかも教材がちょっとむつかしい。国語の授業じゃないのに。
最低、つっかえたらはずかしすぎる。

「はい、沢田さん」なんて言うものだからあたしも逆らわずに、まあつっかえながら読んで、がんばったあたし!
誇らしげに振り返りたいんだけど、授業参観中にパパを振り返ったら、にやにやしちゃってファザコンがばれるから、絶対振り返らない。
ふぅて息をついて座ると、小さくお腹がなった。

(…!)


あれ、ちょっとまてよいまお腹なったのか。
え、いま、音小さかった?聞こえてない?大丈夫?
ちょ、はずかしすぎる。もうやだ。

とかって考えたけれど、まわりはみんな普通にしてて、あ、聞こえてないかな、よかった。
…聞こえてないフリとかされてたら嫌すぎるけど。


ばかみたいにひとりであたふたして、もうパパの顔色をうかがいたくてしかたなかった。
なにが嫌って、あたしが恥ずかしいのも嫌だけど、パパが恥ずかしいのがすごく嫌。

舌打ちしたい気持ちで50分、なんとか授業が終わるのを待つ。
こう、そわそわしてひとつのことを気にすると、時間がたつのがすごく遅く感じて泣きたくなった。



「はい、授業おわりますー。これから懇談会を行うので、ご父兄のみなさまはぜひご参加ください。クラスのみんなは教室に残らないで、なるべく早く帰るように!」


待ち焦がれた台詞を先生が言って、あーもー早く帰ろう。
パパに一声って思ったけど、もしパパが恥ずかしい気持ちになってたらすごく申し訳なくって、そう考えたら会いたくなくなってしまった。


「あ、まてまて葵!」

「ぅっ、…ぱ、パパ」

「すぐ終わらすから車乗って待ってて」

「え?」

「はいカギ。エンジンかけて冷房つけてていいから」


ぽかんとしていると、パパはさっさと教室に入っていってしまって、ひらめいた紺のスーツが、なぜだかすごくかっこよくみえた。
まわりの友達にあれ沢田のお父さん!?とかなんとか言われてはっとして、テキトーにパパを紹介してそそくさと鞄を引っつかんで駐車場にむかう。
いつもパパが使う車のカギ、茶とベージュのストライプのキーケースが、ちょっとあったかくって、不思議なかんじがした。










「葵あけてー」


車でぼーっと音楽を聴いていたら、あけといた窓の外から声が聞こえる。
すぐ終わらすって言ってたけれど、確かにまだ30分程しかかかっていなかった。
びっくりして車のドアのカギをあけてあげると、はーあっちー、なんて言いながら乗り込んでくる。


「冷房つけててよかったのに」

「…エンジンかけるのこわかったから」

「あー。なるほどね。」

「はやかったね」

「用事あるって言ってきちゃった。はは。」

「用事?」

「葵、なに食いたい?」

「えっ」

「腹減ってるだろ?」

「…パパ、…もしかして、聞こえた?」

「は?なに?」

「…なんでもないです」

「そう?いやなんか、葵家出た後に、朝ごはん全然食べていかなかったなーって思ってさ。お前これからちゃんと朝ごはん食べないともたないからな」

「…パパ…!」

「え?」

「…へへ。ファミレス行こうよ、パパコーヒーのみたいでしょ?」

「おっ。よくわかったなー。あ、葵」

「はい?」

「音読上手だったよ」

「…!あっ、たりまえでしょーっ!!」

「ははっ」







こんな風に毎日が穏やかに過ぎていくわけだけど、その中で何度も愛情を感じて育ってきた。
こーいった特別な行事がなくったって、いつも何気なくあたしのこと考えてくれてるのが伝わってきて、嬉しくなる。
家族ってすてきだなって、ほんとに思う。




「…これだからあたしのファザコン、なおんないんだよねぇ」

「なに?」

「なんでもないっす!」





100721


黒船柘榴さまからリクエスト
「パパな綱吉と娘な主人公の物語」
ありがとうございます*
あえての「パパ」よび。

ちなみにママはこのサイトのどこかにいたり





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