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ごくりと、つばを飲んだ。

こんこんと打ち鳴らしたドアの向こうには、きっとまだ健やかにお休みになっているボスがいらっしゃるはずで、そして、
(そして彼は、寝起きが悪いと評判だ。)


雲雀恭弥という上司とすれ違い、恐縮しつつとっとと去ろうとしたところで、声をかけられたのが始まりだった。
あれよあれよとよくわからないうちにボスを起こすという重大な任務を言い付かってしまい、パニックになる頭を抱えて、どきどきとうるさい心臓を服の上から押さえて、よろけながらとうとうたどり着いてしまった、ボスの自室があるフロア。
ちょっと歩いたら、すぐそこには自室へのシックな扉が、あたしを待ち構えているはずだ。

(山本隊長、自分はどうすればいいでありますかっ。)

ボスには1回しか直接お会いしたことがなくて、しかもその1回ってのは、あたしがボンゴレファミリーに入るとき、そのときだけだ。
かなり努力をしたせいか、1年の訓練の末に、守護者の一人である山本武さんの隊に所属することが叶い、今に至るわけだ。
山本隊長はボスの部下であるとともに、古くからの友人であると聞かされていたため、ボスの話を耳にしたことは、何度もあった。
それでも本気で直接、ガチで会うのは初めてだし、どう接していいかわからないし、しかもよりによって寝起きだし。

(隊長が恋しいっ)

ボスにはかなりの憧れを、しかもあたしボスのこと好きなんじゃないのかってくらいの強い憧れを、持っていることは、本当だ。
それでもほんとによりによって、セカンドコンタクトが寝起き。優しくて、格好良くて、きらきらしているボスであることには変わりないけれど、とてつもなく不安なのもたしかだ。
ここまでくるとちょっと、いつも朗らかな笑顔でそばにいてくださる山本隊長がめちゃくちゃ恋しくなってくる。

(だって、雲の上の存在なんだよ、ボスは!)



ぐるぐると考えているうちに、例の扉の前まで、来てしまったようで、涙が出そうになった。

(…深呼吸!!)

そうして、あたしはボスの自室のドアをノックしたのだ。





〜20100710





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