向かい合わせになって、あたしはちょっとどぎまぎしながらジャバチップフラペチーノのクリームをつついた。
ちょっとフランクにアイスモカを頼んだ彼は、にこりと笑いかけてくる。

座ってから、綱吉さんはあたしの学校生活とか、趣味とか、いろんなことを聞いてきて、こたえるたびに相づちをうつ姿はやたらと大人びて見えた。
たぶん彼は、聞き上手ってやつだ。

逆にあたしが彼の趣味について聞くと、ほほえましいくらいに音楽に没頭しているのがわかって、すこし笑った。
歌についてとか、彼の好きなアーティストとか、すてきなことをたくさん聞いて、それはもうすごく楽しくて。

(はっきりと自覚しちゃうと、ますます恥ずかしくなる。)

感情が、前よりもっと深くなっているのは確かだった。
だって、話せるだけでこんなにも嬉しい。


「インディーズにね、すごく好きなバンドがあってさ。」

「ちょっと聴いてみたいですね、」

「あっ聴く?今音もってるよ。」

「い、いいんですか?」


にこりと笑って、小さなカバンからケータイをだした。
iPodよりケータイにいれるタチだと言っていた彼。
ケータイのほうがいつだって持ち歩けるし、とある機械を使えば万能に働いてくれる。
そのうえSDさえいいものを使えば、音楽を聞くぶんには不自由しない、なんて言っていた。
そのかわり、ケータイはこまめに買い換えるという。
(だからかな、出したケータイはつい最近でたばっかりのものみたい。)

四角い形のジャックを取り付けて、イヤホンをはめる。
じゃっと、イヤホンのコードをのばして、右をあたしに。

(あれ?)


「これかなぁ、イチバン好きなの。」


何気なしに、左のイヤホンを自分の耳にはめて、曲を選ぶ。
つまりは、右側は、あたしがつけるのであって、

(ち、近いっ)

恐る恐る右耳にイヤホンをはめると、下をむく彼の顔が近くて、息苦しくなる。

恋人どうしがするようなコトを、いまあたしが、綱吉さんとしていること自体、頭をぐらぐらと揺さぶった。

(息のしかたが、わから、ない。)

ふわりと、柑橘系のさわやかな、甘い香りがして、ますます戸惑う。

それでも右の耳から流れるメロディーは、優しい。

(まるで、あたしたちのためだけにつくられた、そんなBGMみたいに。)


ちらりと伺うと、こちらに気付いてやわらかく笑う綱吉さん。
それから目をうすく閉じる動作が、あまりにもきれいで、思わずあたしもそれにならった。

(あたしたちだけの空間、みたいで。)


音が優しく心にしみこむ。
相変わらず息がうまくできないけれど、それでも、嬉しかった。







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