「はぁぁ…」


炎天下、強い日差しが肌をじりじりと責める。
(いたい…)


「はぁぁあ…」


2度目、大きくため息をつくと、髑髏がまた?と呟いた。


「…髑髏…」

「なぁに?」

「…なにしてるんだろうねぇ…」

「…あたしも、知らない。」

「…うん。」



あの七夕の日から数日がたつ。
数日たつというのに、あれから、あたしは綱吉さんに一度も会っていない。

ずっと会っていたのに、ぱったりと。

(なんで?)

(七夕の日は、すてきだった。)

(あれから、綱吉さんの笑顔を見てない。)


しきりに、あたしの思考をうめつくすのは彼の安否だ。
今まさに強く彼を想っているけれど、今日だから特別想っているわけでは、決して、ない。

アドレスとか、聞いておけば良かった。
いつも必ず時計台前にいて、すてきな歌声であたしを魅了していた彼の姿が、ないのは、こんなにも、(つらい。)

何をしているんだろう。
何かあったのかな。
あたしにはそれを知る方法という権利が、ない。




それでも野球応援というのは、この時期になると高校生の楽しみのひとつになる。
泣きそうになりながら必死で応援をして、ひとつ勝ったときの喜びは、はかりしれない。

そして今日、地元の運動公園で開かれる第一戦。
あたしたちは、焼ける肌を気にしつつも、戦いの場所へむかった。


「って、え?」

「おっ。おお、来たな!」

「やっ山本さ、」


どうして、と言おうとした瞬間、応援ベンチに入ってきたオンナノコタチは奇声をあげた。
(あぁ、そういえばこの人もトンデモない人だった。)



山本さんは前年度野球部キャプテンだったようだ。
あれ、あたし去年も必死こいて野球応援したのにキャプテンが誰だか知らなかった。ちょっと最低かもしれない。

あれよあれよとエール交換がはじまり、山本さんを取り囲んでいたヒトタチも、先生方に怒られてしぶしぶ自分たちの場所へ並ぶ。
それを笑顔で見送って、山本さんは、あたしの見る限りでは、すっと座り込んだ。

(祈ってる、のかな。)

あたしのベンチから彼は斜め前。
エール交換が終わって、山本さんがすくりと立ち上がって、振り向いた。

にこ―っと笑って、後ろのほうに向かって手を振るのがみえた。
そして、きょろきょろした瞳があたしのいるあたりでとまって、後ろをしきりに指し示す。

(まさか、)


まさか、とは、思った。
あたしに対してやったのではないかもしれないし、指をさしている対象なんて、わからなかった、けれど。

小さく祈るつもりで、指を軽く交差させて、すっと振り返った先に、


(わ、ぁ、)



ぽぅ、と、色濃くひかる、ススキの、髪。

ドラムの前に構えて、スティックを交差させる。
日の光がきらきらと彼を照らした。
(夜の街での彼は見慣れている。)
(だからか、太陽の下で笑う彼が、トンデモなく、まぶしい。)






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