毎年笹の葉を見ると少し心がざわつく。
またこの季節がやってきて、風はぬるくて、雨はアツくて。
頬に髪があたってくすぐったい。
指先ではらう仕種は、たぶんもうアナタに似ている。
「今年も雨になりそうだねぇ。」
「ね。七夕っていっつも雨。晴れるのなんかほんのたまにしかないじゃない。つまんないなぁ。」
「何が?」
「天の川が見えないじゃないの。」
「あぁ、なるほどね。」
小さく笑う姿はきれいで、ちょっとした憤慨も甘くとかされてく気がしちゃう。
こんなにもおぼれてしまっていたかしら。
七夕にしか会えない彼らには怒られてしまうだろうけれど、あんまりこうして会うことができない日常には、満足できなくて。
ボスと部下だなんて、仕事の上では甘い空気になんて絶対なれないじゃないの。
だからたまに、こうしてふたりきりになれたなら、あたしの気分はとろりととけきってしまいそうになるの。
「葵。」
ふっとほほえまれて、ひきよせてキス。
ダメ、やっぱりあたし、ちっそくしてしまうわ。
天の川が見れないのは、あそこにおぼれるように情熱的な関係をあたしたちに見せたくないからかな、とか、そんなことを考えて。
あぁ、ぶくぶくと、
あたし、幸せよ。
090707