「…ねぇ、あれさ、何だと思う。」

「…さぁ……」

「あれって新しい鬼ごっこか?
ヒバリに相手頼むなんてやるなぁ葵!」

「あいつがファミリーにいたらいいだろうな。」

「…リボーン、おまえなぁ…。」




風に舞う砂埃は、春のやわらかい風に紛れ頬を打ちつける。
砂利を踏む音が響き、金属音が聞こえるのは気のせいだったらいいなと思う。



「…今日という、今日は!
生徒会の言うこと、聞いてもらいますからね、風紀委員長!!」


「いい度胸じゃない、君ごときが僕に勝てるとでも思ってるの?」




睨み合う鷹とヒョウ。

彼女のスカートが翻ったけど、中は見てないことにしておく。
(いちご柄とかすっげーかわいいなこのやろう。)


VS!
(生徒会長と風紀委員長は仲が悪いって事ね。)






「ったく、ばかだよなぁお前。ほら腕。」


「…負けるとは思ってなかったわ。」


「馬鹿じゃないの?
かすり傷で済んだところに敬意を称したいところだけど褒められたもんではないな。」



生徒会室は校舎の奥まったところにある。
応接室は結構わかりやすい場所にあるが、生徒会室は日に当たっていないような、本当に陰気なところにあるもんだからなんともいえない。

生徒会長である彼女は、最近やたらと雲雀恭弥につっかかってる。

押し付けられてなった生徒会長とは言えども、彼女は生徒会の仕事は結構きっちりやっていると思う。
だからこそ、やたらと強く、学校を牛耳っている風紀委員が気に入らないとか言ってたけど。


「…恭弥にたてつこうってのがそもそも無謀だよねぇ。」


「もう!なんでみんな風紀委員長のこと持ち上げるの!
綱吉だってやけに風紀委員長の肩持つし!」


「だってほら、実質恭弥のおかげで学校に不良はいなくなったし、ちゃんと仕事してるし、並中が現状維持できてんのは恭弥の力が大きいと思うんだけど。」


「………生徒会はね、綱吉。」



悲しそうに、まつげを伏せて、彼女は言った。

窓の外には小鳥が羽ばたき、風は春のそれで、つい最近入学してきた新入生の楽しそうな声が聞こえてくる。

彼女は窓の外で遊びまわる彼らを見て、そう、こういったのだ。



「…生徒会は、身近な存在でありたいの。
風紀委員は遠い存在じゃない?
生徒にとっては恐怖の対象でしょう。
生徒会はそんなんじゃなくって、もっと身近な。
…なんて、あたしが言えた事じゃないんだけどさ。」





微笑む姿が、なんだか綺麗で、

あぁ、この子は優しい子なんだな、と、

素直にそう思えた。







「…ま、葵は頑張ってるとは、思うけどね。」




そういって頭に手を置くだけの動作が、なんだかゆったりとした時の流れに妙にあっていて、心が安らいだ気がした。






「ってことだからさ、恭弥もちょっとは仕事回してやってよ。」


「…面倒だな。」


「いいじゃんか、仕事減るんだよ?」


「生徒会室に行くのが面倒だって言ったんだよ、君はそんなこともわからないの。」




そういって笑う風紀委員長は、たぶん俺の気持ちに気付いてるんじゃないのかな。

くそ、これだから策士は。



「…サンキュー、恭弥。」


「別に?さっさとその書類もって生徒会室でも行けば?」



くつくつと笑いながら、彼はトンファーを手にとって応接室のドアへと歩く。

去り際に、彼が言った「彼女と少しでも長く一緒に居たいんだろう?」という言葉がやけに耳についた。


「…ったく、なんだかなぁ。」







「…でさ。お前ほんと何してんの。」


「え?わかんない?生徒会室への道案内ポスター書いてるんだけど。」


「…へったくそ。ある意味芸術的。」


「馬鹿にしたでしょう今ー!なんだよなんだよ綱吉なんか!」


「俺なんか?なにお前、生徒会の仕事長引いても一緒に帰ってやんないよ?」


「…お、幼馴染のよしみで、そこをひとつ、なんとか…!」



手をすり合わせる葵の鼻先に数枚の書類を突き出すと、彼女は目を丸くして「なにこれ?」と声を荒げる。


「みてわかんないの。仕事だよ、仕事。」


「…うわぁ、これ、生徒会で頼んでたのに風紀委員に回されちゃった仕事!!
なんで綱吉、風紀委員長と話してきたとか言わないよねまさか!?」


「そうじゃなかったらどうやってこれ手にいれんだよ、馬鹿。」



がらりと扉が開いて、真ん丸く目を見開いた彼女に抱きつかれた瞬間を彼らに見られるとは思わなかったけれど、まぁ役得ってことだろう。



「…十代目、そいつ、今、はなしますんで、頭下げていただいてもいいっすか。」


「獄寺くん、ここ校舎内だよ。」



ありがとうと何度も叫ぶ彼女の顔を見て、いきりたつ獄寺と笑う山本。

こいつらだって、君の仕事をちゃんと手伝ってくれるから。

だから君は、そんなに気をはって風紀委員長と対決する必要ないし、へたくそな絵を描く必要もない。

もっと頼ってくれていいんだよ、なんて、


彼女には口が裂けてもいえないんだろうな。







「綱吉、ありがとう、ほんとに大好き!!」





そういって笑うけど、まさか今、俺、顔赤くなってないよな。



THANKS!

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