「…眠い…」
暖かな日差し。
窓ガラスのつややかな表面に通り、少し固くなった光。
ゆるやかに唇をとじ、かすかに寄せる目の前の人。
綺麗な顔立ちのその人は、ふわりと唇を包み、音を立てて離れる。
「昨日一生懸命仕事してたもんね。」
「んー……。」
間近で目を細められる。
少しどころか、いつまでだって、心臓は大きく波を打つ。
「…昨日、仕事先の御令嬢に気にいられたんだって?」
「………ワオ。目が覚めちゃった。」
「恭弥さんの真似なんてしなくていいのよー。」
目の前で、少しばかり困ったように眉をゆがめる人。
あひるのように小さく突き出されたうすい唇が愛おしい。
あなたのことがすきよ。
だから私はあなたを困らせたくなる。
面と向かって好きだなんて決して言わないし、言えないけれど、私は何だっていいから、あなただけが好きよ。
好き好き大好き愛してる。
なんて、ね。
間近に対象がいて、微笑みあいながら柔らかに何回もの口付けを交わしているのに、頭の中でもずっとあなたの事を考えています。
「葵。」
「なに?」
「好き。」
「………」
「愛してる。」
「ずっと」
「これからも」
「葵だけが、」
「好き。」
あぁ、私ってなんて幸福なのでしょう!
彼が気持ちを口に出してくれる人でよかったわ!
肝心な事は言わないけれど
それでも彼からのやわらかな気持ちはいつだって
私の目に、耳に、髪に、手に、唇、に、
全部に染み尽きてしまって、とれる事なんて、一生考えられない!
THANKS!
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