か ん べ ん し て 。



「っなんで、あいつのいる学校に、通わなきゃ、いけないのぉーっ!!」





彩華深凛-saika*shinrin-





「いやっ!私、あの一家、嫌いなのよ!!
なのに、なんでアイツのおじいさんがやってる学校に行かなきゃならないの!?信じらんない、お父さん、最低!!」

「おっ、落ち着きなさい、葵!
いくら可愛い愛娘でも、父さんの親友のお父様を侮辱するのは許さんよ!」

「そうよ、葵ちゃん!奈々ちゃんはとってもいい子だし、家光君だってちょっといい加減だけどいい人なんだから!」

「ボソッと言ったのはなんだぁーっ!!」

違う。違うのよ、ママン、パパン。
一家が嫌いなんていったけど、そうじゃないわ。

私が言ってるのは、

おじいさんでも、(むしろ好き。)

奈々さんでも、(こちらもむしろ好き。)

家光さんでも、(確かにいい加減だけどいい人。)

誰でもなくって、


「息子に問題があるんだって…っ!!」


はろー、はろー、こちら葵。
聞こえる、小葵?
いつも私の身体を正常に機能させてくれてありがとう。
でもね、でもね。
今日はちょっと、働きが足りないみたいよ?

だって、私の身体はがっちがちに固まっているものね。


「しょうがないだろう、だって、父さんの会社、今度からそっちの方面に移動するんだから、オフィス。」

「だからって、

だからって、私まで転校しなきゃならないの!?」


絶望だわ。

よりによって、私の大嫌いなヤツの通、あの学校に、もう一度入学しなくちゃ行けないだなんて。




私の名前は外村葵。
黒曜中学校2年生。
黒曜中は私立なのであるが、この学校の兄弟校に並盛中学校がある。
私は小学校のとき、付属小の並盛小学校にいた。
お父さんの仕事の都合で、中学校に入学するとき兄弟校である隣町の黒曜中学校に、形だけ内部入学をした。
今だからはっきりと言うが、

転校が決まった日ほど、嬉しかったときはない。
並盛中には、私の大嫌いな人種の男子がいる。
彼の祖父は財団法人沢田学園の園長であり、お父様はお父様で、今は黒曜中の校長先生だ。
お母様は並盛中の校長先生。
さすがに家族ぐるみで素晴らしい実績を残しており、もちろん、その息子、孫の、ヤツも、素晴らしい能力を持つ奴なのだと、
私は、思い込んでいた。

実際、ヤツは、
勉強ダメ。
スポーツダメ。
芸術ダメ。
身長小さい。
顔普通。
まぁ、性格は、人一倍優しかったりしたが、

「どんだけダメな奴なのよ…っ!」

毎日毎日、毎日、まいにち。
私とは幼馴染の山本武と一緒につるんで、(ちなみに幼稚園の時はクラスが全くちがくて、奴のことは知らなかった。)小3の時に入学してきた、外部入学の獄寺隼人にはなんだかしらないけど敬われて。
なんだか調子に乗ってる、感じがするのよね。

口下手で、何にも任せらんなくって、
あいつがいるだけで、私の不快指数は急上昇した。
「イライラすんのよ、アンタがそばにいると。」
過去に私、わいつにそう言ったことがある。
ヤツはなんだか知らないけど、私に近付かなくなって。
アイツが私を避けるたびに、私はとてつもなくイラついた。
子供心に、私は、アイツが、大嫌いだった。



なのに、いまさらになって、私に、あの嫌な思いをさせようと言うの!?



あぁ、もう。

信じらんないわ。

大嫌いよ、


沢田綱吉なんか。










「うわぁん、むっくーっ、柿ピーーっ!!」

「え、オレは!?」

駄犬は無視っと。




「それは酷いですねぇ。」

「それ以外になんか言うことない!?」

「遊び相手がいなくなるっ!」

「…離れたら、寂しい、とか。」

「そうそれっ!ナイスよ柿ピー!!」

「とことん無視れすか…。」


洗いざらい話すと、骸と千種、…まぁ、ついでに犬は、(ついでっ!?)しみじみと同情してくれた。
ちなみにこの三人は、黒曜中でお友達になった人たち。
ちょっと発言が変態ちっくな人も中には若干一名ほどいるけれど、みんないい人です。

「ってわけで、私、明日から並盛にいくのよ…。」

「明日、ですか。」

うん。と頷くと、骸は眉を寄せた。

「寂しく、なりますねぇ…。」

…しみじみと呟かないでくれる?
せっかく行く決心ついてきたところだったのに。

「ねぇ、またいつでも会えるわ。というより、絶対、また遊びましょう?
だから、そんなに落ち込まないで、ね?」

「…また、貴女はそんなかわいらしいことを言って…。
僕が我慢できなくなったらどう、「ところで葵、沢田綱吉には気をつけて。」

「……千種。」

骸の言葉をさえぎった千種。
後ろで骸がなにやら禍々しいオーラを放出しているが、気にしないことが一番だろう。

「…ヤツが、どうしたって?」

「葵の話にでてくる沢田綱吉と、僕の知っている沢田綱吉はどうも相違点が多い。
直接収集した情報じゃないから、なんとも言えないけど。」

「違う…?あのダメツナがそう簡単に変われるわけないわ、きっと誤報なんじゃない?
大丈夫よ、千種!そんな心配そうな顔しないで!」

「心配って言うよりなんかむすっとして見えるんれすけどぉー?」

「犬は黙ってなさい。」

「きゃうん!」


楽しい一日。
私の、黒曜ライフの最終日だった。
でも、大丈夫よ!
三人とも、別れ際に、口そろえて「頑張れ」っていってくれたもの!

それに高校に入ったら、三人は並盛高に入るって前から言っていたし!(実は、黒曜の高校って並盛のほうの高校よりもレベルが低いのよね。兄弟校とは思えないくらいに。三人とも頭はいいから、レベル高い高校に入ろうねって、一年生の時から言っていたの。)

「とは言っても、きっついなぁー。」

大好きな親友達とわかれて

大嫌いな奴の元へと転校するだなんて。


「…武と隼人いるからいいや、もう。」

京子ちゃんもいるしね!


「やるっきゃないわー!!」



この日で、黒曜戸はしばらくお別れ!

明日からは、並盛ライフだ!!




このとき、私はわからなかった。

まさか、その並盛ライフが、とてつもなく、

インパクトの強いものになる、なんてこと。













歩き出した

私達はまだ

立ち止まったり出来ない

また会うまでの

約束。





「ってことでぇ、これが並盛の制服ってワケね。」

「そうそう!葵ちゃん、黒曜の制服も似合ってたけど、並盛もとってもよく似合うわぁ!」

「家光が写真よこせって言ってたからな、撮るぞー、はい、チーズ!」

とっさに取り出されたデジカメに向かって瞬時ににっこりと微笑みをつくってしまうのは人間のサガなのだろうか。

「奈々ちゃんには話しておいたわよ!今日はまず、まっすぐに校長室にいらっしゃいね!って言ってたわ。」

「相も変わらず手が早いのね、お母さん…。」

自分で撮った写真に惚れ惚れするお父さんを肘で部屋の隅へと追いやって、私は早々と、新しい鞄を肩にかけ、並盛の指定ローファーに足を通し、玄関の扉をあけた。

「じゃあ、行ってくるね、お母さん、お父さん!」

「奈々ちゃんによろしくねー!」

「綱吉君と仲良くなぁー!」

…あぁ、最後のお父さんの言葉がなければ最高だったのに。

骸と千種、犬にそれぞれメールを送り、私は足早に昨日確かめた通学路を通る。
昨晩はあまり眠れない、かと思いきや、爆睡。
おかげさまでお肌の調子がよろしゅうござんすよ。(誰。)
不安って言うより、なんかもうむしろうんざりなのよね。
あぁ、また始まったわ私のやるせない一日、はいはい。

学校から家(向かいにお父さんの会社。)はそんなに遠くはなくて、結構早く着いた。
まずは、校長先生…。
奈々さんの所に行かなくては。





こんこん。

早朝の部活動で賑わっているのであろうグラウンドから、かすかに声が聞こえるだけで、校内にはまだほとんど人がいなかった。
静まり返った廊下に、軽快な音が数回響く。

「だぁれ?」

「校長先生、外村葵です。」

言うや否や、すぐさま開いたのは校長室の扉。

「あらぁ、葵ちゃん、まってたのよぉー!」

か…、

可愛い…っ!


あ、相変わらずお若いのですね、奈々さん。
花が咲いたように笑う、とは、まさにこのことじゃないかと思う。
この可愛くて綺麗でとっても優しい奈々さんの息子が、アイツなのか。
いっそうもう、不思議なくらい。


「元気だった、葵ちゃん?」

「あ、はい、とっても!
また奈々さんとこうして会えるとは思いませんでした…っ!」

奈々さんの淹れてくれた紅茶にそっと口をつけ、おいしい、と呟いた。

「ありがとうね、葵ちゃん!
あぁ、そうだわ、この学校のことなんだけどね、黒曜と全然変わりないのよぉ!
ただ、一つだけ違うことがあるとするならば、ロッカーとかの鍵かしらね!」

奈々さんはそう言って、かわいらしい鍵を取り出した。

「スペアキーも含めて2個渡す決まりになってるのよね、はい、これ。」

そっと手渡されたのは、昔使われていたような、板状の鍵。
上から差し込むと、鍵がかかるそうだ。
ただの板かと思ったら、そうではなさそう。
チップがはめ込んであり、いわば、金属の板状のカードキーだ。
黒曜は、それこそカードキーだった。

「なんでこういう形をしてるんですか?」

「うふふ、それはね、私が鎌倉に行った時、とある文芸館で使った鍵に一目ぼれしちゃって。
可愛くって、それをカードキーみたいに使えたらどんなに素敵なのかしらって事になって、つっくんと一緒に考えて作ったのよv」

つ っ く ん ?

「…、そう、なんですか…。」

私は、キーに書かれた番号を見つめた。

0527

…。どこまで、アイツは、私を不幸にすれば気が済むのかしら。

どん底の気分のまま、私は奈々さんに色々と説明をしてもらい、クラスまで案内してもらった。

「葵ちゃんはねぇ、2−Aなのよv
まず、京子さんと、山本君と、獄寺君と…」

おお、なんて懐かしいメンバー!素晴らしいわ、同じクラスなのね!

「あと、つっくんよv」

「―――――っ!!」



ママン。

パパン。



私、おうちに帰りたい。




骸。

千種。

犬。



黒曜、戻っても、いいかなぁ…?



人知れず、目元に、一滴のしょっぱい水が…。







私、くじけそうです。







頑張るのよぉvと、奈々さんは私を置いて、笑顔で去っていった。

もうすぐ部活が終わる時間らしく、生徒がぞろぞろと教室へ流れ込んで行くのがわかる。
そんな中。

「お、葵じゃねーか?」

ん?この声、なんとなく聞き覚えがある。
くるりと振り返った先、そこには。

「リボーン!わぁ、久しぶり、元気だった!?」

すらりと背の高い黒髪の少年。
その正体は、幼馴染にして、悪友である、リボーンであった。

「そっかぁ、リボーンも、もう中学生なんだよねぇ!ってことは、スカルはまだ小学生かぁ。
あれ、コロネロは?」

「アイツは部活で、×ゲーム中だ。バスケットボールの片付け。」

たしか、リボーンとコロネロは小学校の時からバスケットボールをやっていた。
今でも続けてるんだね。えらい、えらい!

「ねぇ、私、今日から並中生なのよ!
だから、今度バスケの試合、応援しに行くね!!」

「…。まぁ、お前が転校してくるっていう話は家光から聞いてたが…。
試合を、応援、ねぇ…。」

「…だめかい?」

「…いや、いーぞ。今日も放課後練習あるから、来てみろ。」

やったぁ、ありがとうリボーン!
そう言ってリボーンの手をがっつり握り締めると、リボーンは微笑った。
おお、リボーンが笑ってる。随分と性格が丸くなったのね。いい事だわ。

私は、知らなかった。

私が影でこっそり喜んでいる間に、

リボーンが、体育館のほうを見て、眉をぐっと寄せ、唇をへの字に曲げていたなんて。





















「…なんだ、まだ来てないのか…。」

教室に入って、ツナが最初に零した言葉が、これだった。






「誰がまだ来てねーって?]

野球部終わりに体育館連中と合流し、その中にいるツナを呼び止めて、教室まで一緒に入ってきた。
ツナはしばらくきょろきょろと辺りをうかがって、息を大きくはいた。
そして呟いたのが、先程の言葉だ。

「んー、お楽しみだよ、お楽しみ。]

「10代目、朝から機嫌よかったっスよね。」

「んん。まぁね。」

にっこりと微笑むツナ。

朝早くから教室にいた女子は、きっと、おそらく、いや絶対。「早く来ててよかった…っ!」なんて思っているのだろうな。
男の俺だって、この笑顔には思わずぐらりと来るものがある。

ツナは中学校一年生の途中まで、ダメツナをやっていた。
ン?なんで「やっていた」って言うのかって?
そりゃあまぁ、文字通りなんだよな。ツナは、演じるのが、だますのが、大好きだった。
偽りの仮面をかぶって、面白半分に自分と正反対の人格を作り上げた。
まぁ、それも途中から、全校生徒の前で3年生、風紀委員長・雲雀恭弥と、1年生、クールスナイパー・リボーンとの3人でバトルおっぱじめちまった時から、演じるのがめんどくなったとか言ってやめちまったけど。
(バトルの原因はたしか、ツナが一生懸命作ったトランプタワー6段を誰が壊したとか、壊さないとか。だった気がする。ちなみにツナがダメツナを止めたのは、いつでもあいつらと戦りあえるようにするためってのもあったような気がすんな。)

ダメツナを止めたツナは、前のツナと、本当に同じ人間なのかと思わせるくらいに、…あー、俺が言ったら笑われるかも知れねぇけど、何でも出来て、格好良くて、中性的で、なんといっても、セクシーになった。と。


さしずめ、前のツナは「キュート」で、今のツナは「セクシー」って感じ?
それをハルに言ったら、アイツ、いきなり歌いだした。
マジおもしれーヤツだよな、アイツ!
「迷うなぁー!セクシィなの?キュゥトなの?どっちが好きなの??」
あ、思い出したら笑えてきた。


「…何笑ってんの、山本?頭でも打ってきた?バットで?そりゃ大変だ。今すぐ帰んなきゃ。」

「は?あ、や、ちげーちげー、何でもねぇって!」

あぶねぇ。ひとり笑いしちまった。

…まぁ、そんなこんなで、今に至るわけよ。understand?


ツナのいう「お楽しみ」ってのは、待ってればわかんだろ。
じゃあ、俺はそれまで寝てっかな。












私は担任なのであろう先生に捕まり、今、職員室にいます。
先生は、私に教材などをくださったのです。
貰ったはいいが、重いです、先生。

頑張りなさい。

…はい。




案内され、私は先程までいた2−Aの教室前まで来た。
今は、全クラスで実施しているらしい読書の時間中のようであって、静まり返る廊下。
なんだか、しーんとしていると、逆に緊張してくる。先生が私に「大丈夫?」と声をかけ、私は素直に頷いた。


からりと開け放たれる教室の扉。きっちりと整列している机。

先生が何かを話して、私のほうをゆっくりと振り返り、ちょいちょいと手招きをした。

し、深呼吸、深呼吸。

ゆっくりと教室へ足を踏み入れると、まず目に入ったのは、笹川京子ちゃんの驚いた顔。
そして、山本武の笑ったまま固まる顔。
獄寺隼人の、微妙なしかめっ面。

そして。

(ん…?)


私が目をやった先。そこには。


すらりと背を伸ばす、淡い茶色。

深い、色合いの、瞳。

緩やかに笑みを作る表情。


…あれ?

ヤツが、いない。

変わりに、ちょっとだけ、似ているような気がしないでもない男の子ならいるけど。



ふと、千種の言った忠告が、脳裏に鮮やかによみがえった。






(まぁ、あれが、ヤツなわけないよね。)

だって、あいつはあんなに格好良くないもの。

そう思った時、先生はいきなり自己紹介して?なんていってきた。


「あ、はい。

えぇと、親の都合で黒曜中から転校して来ました、外村葵です。
小学校の時は並小だったんで、知ってる人も中にはいるかもしれません。
宜しくお願いします。」


「えぇ、誕生日とかは!?」

「彼氏はー!?」

「好きなものとか、嫌いなものとか、教えてよぉっ!」


なんてノリのいいクラスなのかしら…。


「えぇー、誕生日は、そのうち。
彼氏!?滅相もナイ、いるわけありませんよー!
好きなものは、リンゴとか、犬とか…?
嫌いなものは…、

うん。沢田綱吉。」


言った瞬間、教室内の空気が、なにやら不穏になり始めた。


え?なんかまずいこと言った?

そう思って、辺りを見回してみる。

目に入ったのは、先ほど目に止まった、格好いい男の子。

なにやら。


目が、す、据わって、おります。


こ、怖い!骸ちゃんレベルだわ!!





席に着き、SHRが終わると、後ろのほうから紙を投げられた。
え?何コレ、苛めですか?

予想はなんとなく当たってしまったようだ。
紙に書いてあったのは。

「綱吉君のこと悪く言うんじゃねぇよ!!」

とか、何とか。



……

………


え゙。











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