いままでちゃんと話した事とかなくって、でもメールはいっぱいしてたかもしれない。
そんな彼のこと、あたし、いままでそんなに気にとめてなかった。
高校2年生の夏、すらりと背の高い彼は、中学校の時は低かったんだって。
ダメツナなんて呼ばれてたんだって。
高校にはいってからそんな呼び名は聞いたことなかったけど、中学校の時は、きっと彼は壮絶な人生を送ってたんだろうなぁ。
彼は言ってたなぁ。
中学校の時、2年半も付き合ってた彼女がいるんだって。
可愛くって、やさしくって、でもなんでわかれたんだろうなぁ。
理由は知らないけど、あたし、その時はそんなこと、考えもしなかった。
「俺、外村さんのこと好きなんで、付き合ってください。」
そんな言葉はきっと、一生聞く事がないと思ってたよ。
あたし、すきとか、付き合うとかって、わかんなくて、
憧れとすきの違いとか、ときめくとすきの違いとか、わかんなくって、
「ごめ、ごめんなさい、あたし、君のことすきだけど、」
わかんなくて、
わかんなくて。
そんなふうに思ったのは初めてだった。
いままで、自分からすきだと思った人はみんな憧れに分類して、好きなんかじゃないって、いっつも言い聞かせてたよ。
だから、すきだと言われて、そこから何もかもわからなくなる事なんて、なかったんだよ。
なんでことわっちゃったんだろう。
でも、きっとことわらなかったら、
なんでことわらなかったんだろう。
そう、思うんだと、あたしは知ってる。
いいひとなの。
あたしがごめんなさいって言ったら、
「いいよ、これからも、今までどおり」
そう言って、ごめんねと言った。
あたしが泣きながらごめんねと繰り返すと、柔らかい声で、泣かせてごめん、って。
とても優しい人で、だからあたし、混乱した。
学校に行って、彼の顔を見て、泣きたくなって。
ぐるぐる考えたら熱が出て、風邪なんか引いたわ。
彼はまた心配してくれて、ゆっくり休んで、なんてメールを送ってくれて、
だからあたし、また泣いたわ。
彼の友達はとても彼思いで、あたしをみると
「付き合えばいいのによぉ」
と吐き捨てるように言った。
もう一人の友達が「やめろよ」っていったけど、その言葉がぐるぐる頭を回って、わからなくなった。
あたしがずっと考えていたこと。
メールが来ればどこか嬉しくて、
メールが来なければ、ケータイをなんども確認した。
あたしは友達の言葉で傷ついたかもしれない。
でも、やさしい彼は今までどおり笑っているけど、それでももしかしたら、ほんとうは傷ついているかもしれない。
きっと傷ついてる。
だって、あたしの横を通るとき、さみしそうに笑った。
うしなってから気づくものって、たくさんある。
あたしは、彼をうしなって、それから、
「ほんとうは、大好きなんだよ、つなよしくん、」
こぼれた涙は元に戻らない。
だからこれから、あたしは彼を想って生きる。
この気持ちを伝えたいとおもえる時まで、
まっていてくれるかしら。
すてきな日だった。
(その時にあなたに大切なヒトがいたら)
(あたしはそっと、笑うわ。)
070730