「ねぇドクロ、骸くんは元気かな!」

「…あ、……うん…」

「そっか!」


あたたかい日差しのもと、イタリアの午後に紅茶。
ボスは今執務中、守護者もほとんどが執務中。

可愛らしい顔で紅茶の注がれたあたたかいカップに口をつける彼女は、忙しい中あたしが無理矢理ひっぱって連れてきた人物。
ちょっと悪いことしたかな、なんて思ってみても、ついさっき焼き上げたばかりのスコーンを口に運ぶ彼女の顔は結構幸せそうだ。

彼女の中に眠っている彼は、まだあの暗くて寒い場所に安置されているのだろうか。
そう、まるで放り出された死体のように。


あたしの考えが顔に出たのだろうか、目の前の彼女は少しばかり不安そうな顔であたしの目を覗く。
大丈夫よ、と言わんばかりににっこりと微笑むと、彼女は更に悲しい顔をした。

すでに仕事を終わらせ、ぶらぶらとたぶん街に買出しに行っている千種と犬。
彼らは彼女をそれなりに大切に思っているようだけど、あたしは違う。

大切とか、そういった次元じゃなくって、

あたしは彼女のためなら命を投げ出すこともできる。



「…葵…ごめん、ね…。」

「…あ、はは、やだなぁ、何謝ってるのドクロ!なんにも悪いことしてないでしょー?」

「…ごめん……」



上手く笑えたかはわからない。

小柄な体にとてつもなく大きな物を背負っている。
あたしはそんな彼女が大好きで、守らなくてはならない存在で。

彼女が謝るたびに、心のどこかに、重くのしかかるものがあった。

(なんで彼じゃないんだろう、なんて、)


泣きそうな彼女をテーブル越しに軽く抱きしめて、大丈夫、と、そう呟いた。




(彼女を守るのは、彼を守る事にもつながる。)






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