「ほら、もたもたしてないで、行くよ葵!」
「ぉあー、ちょ、待ってください!」
「早くしなよ、みんなのこと待たせてんだから!」
「待って、私そんなに早く歩けないよ!」
泡沫
お正月って言うのは、どうしてこうもうきうきするのだろうか。
たしかにこたつに入って丸まりながらみかんをふんがっふっふ、ふんがっふっふ、やってりゃそれはそれで楽しいし暖かいけれど、やっぱり健全な若者なのだからお外ではしゃがないと、一年がやってきた気がしなくなる。
今日はなんていうか、どうしてこうも濃いキャラたちが集まったのだろう。
綱吉はお隣さんだし、恭弥ちゃんも幼馴染だから、いるのはわかる。
綱吉のお友達だから、山本やごきゅはいつだって一緒だし、ハルや京子、ビアンキねーさんも、私のお友達だから、わかる。了平お兄さんだって、京子がいるならいておかしくない。
しかし、勢ぞろい、しすぎだ。
ディーノさんとロマーリオ。
髑髏ちゃんも犬ちゃんとか千種ちゃんも、
バジル君までそろって、この勢いだとヴァリアーの方々までいそうなんですけど…!
「…なんでこんなに、皆さん集まってらっしゃるの…!」
「葵姉、仕方がないよ、だってみんなに召集令出したのは、ツナ兄なんだもの。」
「ふ、フゥ太君!」
「あけましておめでとうございます、葵姉!」
にっこりと、ハートマークまでついてしまいそうな勢いで私に微笑んだフゥ太くん。
あれ?
今、さらっととんでもないこと言いませんでした?
「…綱吉が召集し立って?」
「多いほうが楽しいでしょ。」
「…まぁ、なんてゆーか。」
「お前が、だよ。」
「私!?」
なんだかとんでもないところに気を使わせたようだけれども、私としてはとっても嬉しい。
年度の節目にみんなと顔を合わせることができるのは、確かに私は素敵なことだと思うから。
「ハル、おみくじ引いた?」
「まだなんですよー!葵ちゃん、今年はひくんですか?」
「あぁ、言わないで。言わないで、言わなければ誰も知ることのないことなんだからっ!!」
私は苦い思い出に顔を伏せた。
そう。私は、去年。
「…何があったの……?」
「あ、そか、髑髏はしらねーんだよな」
「山本、言わないでー!!」
「去年、最凶引いたんだよ。」
髑髏、犬、千種までもが固まり、なぜかバジル君は目を輝かせた。
「最低恭弥ちゃん、何で言うのー!?」
「最凶…。」
「そんなミラクルなものがこの世にあったんかよ…!」
「葵殿、さすがは葵殿です!
噂には聞いていたんですが、本当にあるんですね、『最凶』!!」
「うう…、みなまで言うな、とくにバジル君…!」
みんながみんな、私のおみくじネタで笑い出してしまい、あぁ、なんでこんなことに…!
「よしこい!さぁこい!かかってこいやー!!」
「うるせぇよ外村!」
「うっさいのはそっちだごきゅ!!」
「あんだとこら!?」
「あ、大吉。」
私とごきゅが言い争っている間に、すんなりと、やたらと嬉しそうな声が冷たく割り込んだ。
「…最低、綱吉…!」
「悔しかったら大吉引いてみろよ。」
「引こうと思って引けたら苦労しないって!!」
「おぉ、大吉!」
「…っディーノさん……!!」
ひこうと思ってひいてしまった人間が、ここにひとり。
「葵、さっさと引いてしまってはどう?
私は吉だったわ。」
「私も、吉だったよ!」
「ハルは中吉でした!」
「わたし、大吉…」
これで、ひいていない人間は私ひとり。
今までの結果として、
綱吉.大吉
恭弥ちゃん.中吉
山本.吉
ごきゅ.凶
了平お兄さん.中吉
ディーノさん.大吉
ロマーリオ.吉
犬ちゃん.大凶
千種.小吉
そして、先程言ったとおり、
ビアンキ姉.吉
京子.吉
ハル.中吉
髑髏ちゃん.大吉
なんで大吉3人もいんですか!
しかも吉多すぎじゃないですか!!
あぁ、私。
頑張れ、私。
負けるな私、世界は私の手に!!
「っでやー!!」
「泣かないで、葵。」
「そうだよ、葵姉!」
「気をしっかり持て外村!!」
「いくら『超☆凶』だったからって。」
「絶対おちょくってるって!!
こんなおみくじがあっていいわけ無い!!
なに?
なに、『超☆凶』って!!
この星印が妙ににむかつく!!
新手のいじめですか!?」
腹を抱え、涙を堪えるものもいれば、わざわざ口元をゆがめるだけの者もいる。
みんなして笑い堪えんな。
もういっそのこと笑ってくださいお願いします。
「ほら、こっちきなよ。」
「…なに、また私をいじめよーって?
綱吉、それは何でもきつすぎるよ。」
「ばかかお前は。
んなくじいつまでも持ってたらろくなこと無いだろ。」
ちょっと歩いて、手近なところにあった木の枝を引き寄せ、私のおみくじを指差す綱吉。
あぁ、結べってことか。
「よいしょ、と。」
私は不器用なりに細い枝におみくじを結びつけ、一応おがんどいた。
意味は無い。
「ちなみに、なんて書いてあった?」
「…『人生に注意せよ。』」
「うっわ、きっつ。」
「うるさいな。綱吉は?」
「『何事もうまくいく。あせらず行動せよ。』」
「嫌味か、私に対しての。」
笑いながら、綱吉はおみくじを結んだ。
それにならって、みんなもぞろぞろとおみくじを結びだす。
「あせらず行動することにする。」
「は?なに?」
「葵、着物、似合ってるよ。かわいい。」
「…は!?なに!?」
「あせらず言ってみただけだよ、うるさいな。」
おみくじなんて関係ないさ。
周りにいる存在が君の全てを変えるんだから。
「みんな、改めまして、明けましておめでとう!!
今年もよろしくお願いします!!」
火照った頬を覆い隠して、私はみんなにそう叫んだ。