首筋に照り付けるのは紛れもなく太陽の光

これが冬ならば、「あぁ、日が出ているな」くらいなのだが、どうにも。

今は夏。

太陽は私の真上に来ていて、なんとも言えない熱さに見舞われる。

あぁ、暑い。

アイス、食べたい。

口の中ですっと溶けてなくなるの。

できることなら例のソーダ味のヤツがいいな。

今すぐにでも最寄の駄菓子屋によって、ソレを購入したいのに。


「なぁんで今日に限って委員会なんてあるのーっ!!!」


あ、ダメ。

叫んだら余計に暑くなってきた。





今日は図書委員があり、早々と帰ろうとした私、外村葵は、担任の先生に首根っこ掴まれて図書室へと放り込まれた。
必死の抵抗なんてヤツには蚊のようなもので、へらっとした顔で私の睨みを払ってのけた。

「あぁ…。
今日こそ山本君の練習姿が見れると思ったのに…。」

別に、彼のことが好きなわけではないのだが、やはり中学2年生青春真っ盛りの純情乙女にとっては、

「憧れはねっ必要なのよ…っ!!」

クラスも違くてたまにしか顔を合わせることのできない彼。
野球も上手だし、顔もいいし、優しいし、勉強はできないくらいがちょうどいい。
私よりできたら困るもの。

そこまで考えていると、ガラリと扉が開いた。
その先には、憧れの…。

「あ、外村さん…。」

そこには学年で最もドンくさく、顔も普通、運動神経ダメダメ、勉強なんて論外、恋の対称になんて絶対になり得ない、

「沢田君か…。」

ちょっとがっかりしてしまった。

そうだ。彼も今日は図書委員のお残りの日であって、分担場所も同じ。
でも、めずらしいなぁ。
最近はよく他の人に頼んで帰ってしまっていたのに。

「沢田君か…、って…。」

困ったように笑う彼。
そういえば、ここ何ヶ月で、彼は随分と大人びたな。
そんなことを思いながら、自分の発言の浅ましさにようやく気がつく。

「あ、ご、めん。」

いいよ、と、彼は微笑む。

「なんで今日はお手伝いさんじゃないの?」

「うん?あ、えーと…。
あ、雨が降り始めちゃって…。」

え。

思ったときにはもう遅い。
外にはスコールのように降りしきる雨。
窓に張ってある透明のガラス板に、容赦なくたたきつけられるソレは、どう考えても今しがた降り始めたのであろうもの。

「傘、持ってきてないよ…!」

叫んだってもう遅い。
雨はしばらくやむことはないだろうし、委員会の仕事もまだ結構残っている。
終わるころには、止んでいますように。
そう祈りながら、大きくため息をついて、カウンターの椅子に座りなおした。

「って、沢田君タオル持ってるの?結構びしょぬれなんだけど…。」

雨に降られたのか、彼はよく見ると結構ぬれていて、髪はしっとりと垂れ下がっているし、頬にも水滴が滴り落ちている。

「ん、大丈夫。」

控えめに彼は言い、いくつか並べられた机のうちカウンターからそう遠くない机を選び、椅子を引いた。

近くに窓があるが、そこから外を見つめると、不思議な現象を目にした。

しゅうと湯気をたてるアスファルトの道路。
雨粒を弾きながら、じっとりとその表面をぬらしてゆく。
霞がかった外の外気が、神秘的でなんとも美しかった。

どんどん外気の熱を吸収していっているらしいその豪雨。
あぁ、このぶんだと野球部はもう練習を終わりにしているかもしれない。

はぁ、と大きくため息をつく。
カウンターに目を戻し、残りの仕事である、貸出票の整理を終わらせるために、コンピューターのディスプレイに目を凝らした。






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