「妖精に育てられた娘の話を知っている?」


母親が、自分の家の裏庭にはえていたラプンツェルをひどく食べたがったせいで、父親は裏庭に妖精が見張っているにもかかわらず、ラプンツェルをとってきて食べさせるんだ。
母親はその後、もっともっとラプンツェルを食べたがるけど、父親はソレを妖精に見つかってしまって、ある約束をさせる。
その約束って言うのは、身ごもった母親にラプンツェルを食べさせるのは認めるけど、生まれた子供を妖精に引き渡すって言うもので、父親は怖かったから、素直に「うん」って頷いちゃうの。

しばらくして子供は生まれて、妖精は母親から子供を頂いて、美しい子供に育てるんだ。
その名前は「ラプンツェル」。
彼女はしばらくして女性になるけど、そうしたら妖精は彼女を階段も、はしごもなにもない高い塔のてっぺんに閉じ込める。
彼女はもちろん、生まれてこのかた髪を切った事がなくって、妖精は彼女の元に用事があるときは、こう言うんだ。

「ラプンツェル、ラプンツェル!
お前の髪を垂らしておくれ」

ラプンツェルの髪をはしごに登っていくわけ。
そこで、偶然なんだか知らないけど、その場面をばっちり王子様が目撃するんだ。
王子様は、ラプンツェルの歌声に惹かれて、ずっと前からラプンツェルの近くに行く方法を見張ってたんだけどね。

ある日王子はその方法でラプンツェルの元にいって、まぁラプンツェルも初めての若い男の人だから、戸惑いながらも「まぁ素敵!」ってなっちゃうわけだよ。
何日も妖精にばれずに二人は快楽のときを過ごすけど、ある日ラプンツェルは「服のサイズが小さくなったみたいだわ。」なんて言って王子の事がばれちゃうわけ。
まぁ要するに、メイク・ラブの繰り返しでまぁいやだわ!ってことなんだけど、妖精にとっては、そうならないために塔に閉じ込めたわけだから大怒り。

ラプンツェルは、「空想」とかの象徴、うんと、「知識」の象徴であるながーい髪の毛を切られて、外に放り出されちゃうわけだ。
王子様はいつもみたく遊びにいって、妖精に「てめぇのラプンツェルはもういねぇさ!」っていわれて、悲しみのあまり空中へダイブ!

王子は死ねなかったんだけど、両方の目がとれちゃってさ、それらがないまま何年もたって、ある日王子は荒野を歩くんだけど、途中で貧しいながら双子の赤んぼう…、つまりはラプンツェルと王子のお子と暮らすラプンツェルに再会するの。
愛する人との再会に嬉しすぎてラプンツェルは大泣き、王子様も大泣き。
そのラプンツェルの奇跡の涙が王子の両目に入って、なぜだか王子の両目は元通り。
二人とその子供達は、元気で幸せに暮らしましたとさ。


「っていうはなしなんだけど。」



以前彼女は病気にかかっており、中学2年生までの学習を全て独学で学び、今年の2月に退院して、初めての学校生活をこの並盛中学校2-Aで送っている。

彼女と初めて会ったときから思っていたことといえば、「なんて綺麗な黒髪なんだろう。」

顔立ちすらも端整で、ひどく驚愕した事を覚えている。
同じクラスになって、初めて席がえをしたとき、隣の席になって、何故だかいたく気にいられた。

それで、何故だか彼女は俺の家に来て、今まさにこんな話を聞かせてみたんだけど、そのときの彼女の反応ったらないね。

「…いきなりどうしたの?頭でもうった?」

「ひどいなー、俺はただ、」

ラプンツェルが、あまりにも君と似ていると思っただけで。


「誰の子供も身ごもってないよね?」

そういうと、馬鹿じゃない?なんて返されたけれど、俺にとっては真剣な問題だ。

「葵って、ほんとに綺麗な髪だよねー。」

もちろん、顔も綺麗なんだけど。

「葵の涙は、俺のこころを洗い流してくれるの?」

ねぇ、俺がもし、
もし、君の所にいつだって通うって、
君の全てに惹かれてるって、
いったらどうするの?


ベッドに寝転がりながら、うっすらと瞳をあけていたから君の顔は見えなかったけど、きっと赤く染まっているってことが分かった。

「葵がもし今度入院したら、俺が絶対に毎日会いに行くよ」

髪をはしごにしたりはしないけどね。
そっと彼女の黒糸みたいな髪に触れた。

「髪の毛がのびるってのは、物事に対する認識が高くなることをあらわすんだって。
髪の毛を切るってのは、これ以上余計な知識が付かなくするためらしいんだけどさ、」


葵はあまり髪を切らないでね。

これから俺が葵に教えていくことをちぎられたんじゃ、たまらないから!


ひとすくいの黒糸
(そっとキスした髪。そっとキスした唇。世界の中で彼女が初めて知った男が、俺。)








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