「眼鏡いれといてやるよ。」
そう言って、彼は亀のぬいぐるみを手にとった。背中があいている。そこに眼鏡をさしこみ、また窓際においた。
「…綱吉くん、それなに?」
「あぁ、これケータイいれ。」
「ケータイ?」
「こーやって背中にさして、メール待ってんだ。」
「誰からの?」
「お前に決まってんだろうが」
「あ、あぁ。あはは。」
笑うと、彼はすこし口をまげて、亀を手にとった。
「…それ、どうしたの?」
「買ったに決まってるだろ。」
「え、綱吉くんが?」
「俺が。」
「自分で?」
「自分で。」
「かわいっ「うるさい!」
顔を少し赤くして、彼は亀を力強くまた置いた。
(かわいいっ!)
だって、亀だ。
ぬいぐるみの、ふわふわの亀。
かわいらしい顔をしている、亀。
これを、綱吉くんが自ら買っただなんて!
「…またきゅんってなった…!」
にっこり笑って胸をおさえると、不機嫌なプリティーフェイスが見えた。
いつもはクールな彼の、面影がない。
彼はいつも、私のツボをつくんです。
すきだなぁ、
ずっと、
ずっと。
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