憶測


「ずっと気になってたんだけどさ。シルビアってカインの恋人なのか?」
「はあ?」

ヴァンの思わぬ一言に、その場の全員が振り返った。当のシルビアだけが訝しげに眉を寄せたまま、固まっている。
彼女の様子をまじまじと見つめるヴァンは、やがて痺れを切らして「おーい、シルビア?」と顔を覗きこんだ。

「……何を言ってるのかさっぱりわかんないんだけど」
「だからさ、元の世界で恋人同士とかだったのかって」
「だからなんでそうなるのよ!」
「だって、よく一緒にいるだろ」

さもありなんと答えるヴァンに、シルビアは深いため息をついた。口の達者な彼女が、珍しく反論にこまっている。
能天気な少年と頭を抱える少女に、周りの者は苦笑を堪えきれないでいた。

「なんで一緒にいたら恋人になるのよ。それがヴァンの世界ではふつうなわけ?」
「そういうわけじゃないけどさ。周りから見たらすごい仲良く見えるし……みんなだってそう思うだろ?」

突然話を振られて、「みんな」は困った顔を見せた。シルビアが機嫌の悪そうな視線を向ける。

「そうだね。仲良くて、いいな、とは思うな」

はじめに答えたのはユウナである。にっこりと柔らかな笑顔を向けるので、内心の戸惑いは伝わらず、平和である。

「きっと元の世界でも仲良しだったのね」

ティファが続けて言う。 言葉を選んだな、と横にいるライトニングは思ったが、口には出さなかった。

「な」
「何が『な』なのよ。ほんと意味わかんない!」
「でも否定はしないんだろ」
「違う!これで満足!?」

むきになるのがますます怪しい。ヴァンを含む全員がそう感じたものの、心に留める。要するに、そういった話題が子ども心に照れくさいだけなのである。
しかしながら、彼女の年相応の反応は戦士たちの心を和ませた。
シルビアはため息をひとつつくと、いつもの澄ました顔で言うのだった。

「……あのね、言っとくけど、カインは淑やかで慈悲深い白魔導士さまがお好みなの。あたしなんて、お呼びじゃないんだから」





「……って言ってたんだけど、本当?」

ヴァンの言葉に、カインは頭を抱えた。そして、自分がその場にいなかったことに、心の底から安堵するのだった。




20160930
vaan視点めちゃむずだったので、彼だけ特別扱い。
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