×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -



「何やってんだ、てめぇら。早く入りやがれ」


あの直後。
恐らく彼らにとっては突拍子もないことを言った筈なのだが、意外にも土方さんは詳しく話せと言って来た。だがそれは私だけでなく、他のしんせんぐみのメンバー達にも意外なことだったようで。全員が一瞬、惚けた顔をしていた。だけどそんな彼らに土方さんは目もくれずに刀を収めると広間に行くぞと私の腕を引っ張り、最初に来た時と同じ場所で離され彼もやはり同じ場所に座った。
そして、何故か広間の入口に佇む他の人達に痺れを切らした土方さんが放ったのが上の一言だ。


「い、いやだってさ…土方さん、コイツの話信じたの?」


良く言った平助。ご愁傷様平助。そんな声がチラホラと聞こえ、平助と呼ばれた少年が焦って言い訳をしようと口を開きかけると先に土方さんが呆れたように口を開いた。


「いいから座れ。まずはコイツに話をさせる。後は自分らで判断しろ。信じるも信じないもお前らの勝手だ」


そう言われて漸く動いたポニーテール少年達。最後に局長さんと丸い眼鏡を掛けた人が入って来た処で千鶴が扉を閉め、全員が二十分前と同じ場所に着いた。それにしても。今の土方さんの発言にどれ程重要な情報が入っていたのか分かった人はいるのだろうか。


「待たせたな」

「宜しいのですか?」

「ああ」

「では、初めに。私の名前は四楓院名前と申します」


そう頭を下げてから、私は話し始めた。ちなみに全部だ。特殊なバズーカで異世界を渡ったことは勿論、天人や攘夷戦争など国の歴史的背景も本当に全てを。イレギュラーな私の存在と情報に因って彼らの進むべき本来の道が変わるのではないのか、と思うかもしれないがそれはない。世界に対する一人の存在が余りにも小さ過ぎるからだ。過程ぐらいは変わるかもしれないが、結果は必ず理通りに収束する。だから、情報を与えたってなんら問題はない。


「…なので、私のいる世界は文明が此方より遥かに進歩していまして、次元の歪みを作れる程のエネルギーを生じさせることが出来るのです。まぁ、偶然の産物ではありますが。そんな訳で、私は此方の世に来てしまったのです」


何か、御質問は。そう言ってぐるりと全員の顔を見回せば、全員が惚けたような顔をしている。当然の反応なのだが、何処かおかしくて思わず苦笑を漏らしてしまった。


「な、何笑ってんだよ!?」

「申し訳御座いません。ですが、余りに予想通りの反応でして……」

「当たり前だろ!?次元の歪みだかなんだか知らねぇが、今のが本当かなんて、」

「信じられる筈がない、でしょう?」

「あ、ああ…」

「だから最初に申したのですよ。宜しいのですかと。

…土方さん」


惚けている全員を代表して声を上げたポニーテール少年の言葉を遮り、唯一表情を変えなかった土方さんに話を振れば、私の言い方に引っ掛かったのか数人が眉を寄せた。


「…何が言いてぇ」

「いえ、ですから。こういう反応になると分かっていて貴方は私に話せと仰ったんですよね?だって貴方は私が何なのかを知っていたから。いや、知るとまでは行かなくとも推測は出来ていた筈でしょう。限りなく事実に近い、ね。だから貴方は最初、信じるも信じないもと言った」

「な、…」

「間違っている、とは言わせませんよ。こんな突拍子もない話、貴方のような人間が聞いて無表情なんてあり得ませんから」


土方さん以外の人間はもう驚く以外のことが出来ていない。はじめさんや忍擬き青年すら目を見開いて土方さんの方を見ていた。一方の土方さんはそんな全員の視線を知ってか知らずか、私の言葉に驚いたような顔をしたのも一瞬だけで。直ぐに無表情へと戻すと、腕を組んで目を閉じた。


「…一ヶ月程前のことだ。巡察中に浪士を二人捕らえた。池田屋の一件も近かったこともあって、何処の藩かを吐かせる為に尋問したんだが、中々口を割らねぇ。それどころが次第に話が噛み合わなくなり、最終的にはとんでもねぇことを言い出した」

「…私と同じことを、ですね」

「ああ。…"藩とは何か"、確かにそう言いやがった」


それにざわめく外野達。未だに藩が何かさっぱり分からないが、彼らにとっては常識過ぎることなのだろう。まぁでも、今はどうでもいいけど。そしてやはり私の予想通り土方さんは異世界の人間と接触していて。恐らく私の世界の浪士達は混乱していたが故に、自分達のことを正確に伝えることが出来なかったのだろう。で、気になるのがその浪士の末路だが。


「…死んだ」

「貴方の刀の餌食に?」

「違ェ。一晩牢に繋いで置いたらその翌日…」


牢の中は血の海だったらしい。死因は心臓を何かで一突きされた事による失血死。ちなみに浪士はこの二人だけではないようで。屯所にはいないが、他にも街中で少し変わった身なりをしている浪士の目撃証言がチラホラと出ているとの事。


「…それでどうするつもりなのですか、土方君」


コッチで私の世界の浪士を捕まえたらどうすりゃいいんだ?なんて思っていたら今迄ずっと黙っていた丸眼鏡の人が口を開いた。土方さんの隣にいるから地位はきっと高いのだろう。


「……見られちまったからには外に出す訳にはいかねェ」

「でも簡単に殺す訳にもいかない、と言う訳ですか」

「ああ。何か重要な情報を持ってないとは言えねぇからな」


こんな突拍子もない話を信じざるを得ない事実に納得がいかないものの、やはり街をウロつく怪しい浪士達の処理には私が必要だと考えたようだ。丸眼鏡の人も仕方ないですねという顔をして、隣の局長へと話を振った。


「では、宜しいのですか。局長」

「ああ、勿論だとも。それに過程はどうあれ俺達の不手際で怪我を負わせてしまったのならば、せめて完治する迄面倒を見るのが道理というものだろう」


な、トシ。にっこりと笑って話を振る局長さんに土方さんは頭を抱えている。その口からアンタはもうちょっと疑うことを…という言葉が漏れているのが聞こえた。それを見て総司さんがしょうがないですよー近藤さんなんだから、とけらけら笑っている。そんな久しぶりの外野その一からの発言に少し驚いていると、土方さんからオイと呼ばれた。


「なんでしょうか」

「お前は新選組預りとする」


私既に真選組なんだけどね。何、この複雑な感じ。なんて。物凄く険しい顔をしていた土方さんを見ながら考えていた私は非常に呑気な奴だなと我ながら思った。

…でも、まぁ取り敢えず。





















えくせぷと のじゅく。

(野宿は免れた、みたいな)
(なんで英語なのかは)
(気紛れ)

prev | next

8/22


▼list
▽main
▼Top