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旦那達万事屋の面々は随分前から名前の正体を知っていて、喜助さん達とも非常に仲が良い。旦那は真子さんとかとよく街中の甘味屋で一緒にいるのも見かける。夜はそれにローズさんやラヴさんも含めて呑みに行ってるのもよく見る。チャイナは白とひよ里と、メガネはそれのお守り的な感じで。リサはちょくちょく屯所に来る。何をしに来るかは俺とリサの大人の秘密だ。


「…銀時さん、いい加減なんとかならないんスか?そのお化け嫌い」

「無理だ」

「開き直っちゃいましたよ、この人…」


喜助さんに呆れられるとなると相当だと思う。けど、それだけの関係の深さを感じる。…って、俺は何考えてんだ。


「さて話を戻しますが、沖田さんと銀時さんが言って下さったように魂魄の反応がなくなっちゃったんスよ。ぷっつりと。ですが、その現象に全く覚えがないと言う訳でもないんです」

「え、じゃあ良く起こることなんですか?」

「あ、イエ、そういう意味ではないんス。紛らわしい言い方でスイマセン」


押入れから土方を引っ張り出し終わって自分の席に戻った涼が意外そうな声を上げた。ちなみにコイツも霊圧とやらが異常に高い所為か案外死神集団と仲が良い。真子さんとかが良くちょっかい出して遊んでるのを見るが、俺には何してんだかさっぱり分からねぇ。なんもないところを見て最高に驚いている涼がただ頭がおかしいヤツに見えるだけだ。


「僕ら死神は現世と尸魂界を行き来するのに断界と言うある特殊な通路を通ります。そこは普通なら交わることのない世界同士を結ぶ通路で、そこを通る間はどちらの世界にもその人の存在を表すモノは映されないんス」


言及されるかされないかのスレスレの言い回しにもどかしさから思わず眉根が寄ってしまった。しかしこの人が見逃す筈もなく、間髪入れずツッコまれた。


「何が言いたいんだこの人は、って顔してるっスね。沖田さん」

「焦らされるのは慣れてないもんでねィ」

「アハハ…じゃあ時間もそんなにないですし、サクッと言っちゃいましょうか」


だったら最初から言えよ、とは顔に出してない。実際、彼が何を言いたいかがイマイチ良く掴めていないからだ。魂魄は消滅ではなく、反応が消えた。本来繋がり得ない現世尸魂界同士は断界で繋がってる。そこでの存在はキャッチすることが出来ない…ホント、何が言いたいんだこの人は。そう思っていたのだが不意に旦那が声を上げた。


「オイ、ちょっと待て。お前今通行過程が分からねぇっつったよな?」

「ハイ、申し上げましたね」

「だけど最初に魂魄追跡を尸魂界の直前までやってるとも言った」


やはり付き合いが長い所為か、旦那は喜助さんの伏線に気付きやすい。そう言えばそんなことを言ってたなと思いながら、満足そうに笑っている喜助さんを見る。


「銀時さんのおっしゃる通りさっき断界は存在を映さないと申し上げました。が、あくまでそれは一般論。僕なら追跡出来るんスよ。まぁそれは断界に限りますがね。つまり正確に言えば、」

「尸魂界への道、断界を監視していた」

「御名答っス、土方さん」


だけど、だ。実際現世で消えた魂魄は断界を通ってなかった。本当に消えていたのだ。名前の霊圧と同様に。


「いやぁ〜参りましたよ、正直。こんな事例、僕らの中じゃ誰も見たことも聞いた事もなかったですからね。そこで、役に立ったのが涼さんと退さんの"まんま"の情報だったんスよ」

「異次元或いは異世界に飛べる、って奴ですか?」

「そうっス。でもその飛べるって表現は少し違いました」

「…どういう意味だ」

「"移る"んスよ」


何が違うってんだよ。旦那が鼻をほじりながら吐き捨てる。


「移る…つまり、大袈裟に言えば今まで居た場所から違う場所に居座り変わるってことっス」

「…は?じゃあ、その異世界に渡った攘夷浪士共は、」

「そうっスよ。もう二度と、」


此方には戻れない。
その言葉が嫌に宙に浮いた。だって、彼の言うことが本当ならば名前は、


「名前はどうなるんだよ!?」

「そ、そうですよ!!そんな呑気に話してる場合じゃ…」

「まあまあ、落ち着いて下さい。夜一さんが最初にちゃんと言ってたじゃないっスか」


…『儂等がなんの情報も掴まずにおぬしらを呼ぶと思うたか?』


言ってた、確かに。団子喰いながら。


「ここで先程までの話に戻りますが、世界と世界の狭間には必ず何かしらの通路があるんス。現世と尸魂界を結ぶ断界のように。だけど、それは必ず一方向なんスよ」

「…で、おめーら死神はどう違うんだ」

「流石に察しが良くなって来ましたねぇ、土方さん。そうっス、アタシらは両方向への移動が可能なんです」


尸魂界の死神は現世に来る時地獄蝶なるものを連れ歩くそうだ。それが正式に行き来出来ることの証明であり、死神自身の身を守ることにもなるらしい。身の安全ってなんだ。蝶が守ってくれるってのか。


「まぁ、今はそういう細かい説明は割愛します。で、話を元に戻しますが、名前さんの行った世界に渡ることは可能なんスよ。ただ、その世界が何処かが分からない。なので、山崎さんをちょっとお借りしたんス」


最初に言ってた道案内とは名前を異世界に飛ばした攘夷浪士共のアジトへの道案内だったらしい。そこで異世界への手がかりを見つけているらしいが、そもそも其処にはなんもなかった筈だ。そう言えばアタシらには見えるんスよ、と言って笑った。


「涼さんは一緒に行かなかったんスね」

「は、はい。名前さんが消えてからは、そこは山崎さんに、僕は別の方を調べてました」


貴方が行けば、とそれに対して喜助さんが言いかけた時。


「喜助ェエ!!」

「い、痛い痛い!!痛いってばひよ里ちゃん!!俺の腕もげるから!!」

「ウルサイやっちゃなぁ。そんなんでもげるワケないやろ」

「だからって腕だけ掴んで瞬歩する!?」

「ヤイヤイ言いなや。結果命あって着いてんねんからええやろ。死なんで残ね…良かったな」

「なんか本音が聞こえますけどォ!?」


そんな喧騒をしながら部屋へと入って来たのは若干涙目のザキとひよ里。彼女の手になんか筒らしきものが握られてるのを見ると本当に手がかりがあったらしい。


「お帰んなさい、ひよ里さん、山崎さん。ありました?」

「分かりにくいトコロになァ。苦労したで」

「ありがとっス」


その筒らしきものを突き出す態度は傲慢に見えないこともないが、喜助さんが受け取って懐に閉まった後、彼の隣にきちんと座る辺り副官として仕えていたのは確かなんだなと思う。喜助さんのひよ里に対する信頼も対したもんだと思うが。


「さて、これから僕は道を開く作業に入りますが、何かご質問はありますか?」

「…異世界には、」

「土方、さっき喜助が言っとったやろ。アンタら人間には無理や」

「………」

「今回はウチらに任しとき。ちゃんと名前は戻したる」


何故ひよ里がさっき迄の会話を把握してんのかはスルーしよう。どうせいつものことだろう。
だけど、彼女を始めとする元死神達の目は確かなモノで。頼むと言った土方と一緒に頭を下げた自分も、案外こいつらもの付き合いが長いんだなと思った。





























信頼。

(……オイ、喜助)
(なんスか)
(何嘘ついてんだよ)
(…流石っスねぇ。何処で気付きました?)
(確信持ったのは情報操作の下りだが、お前と夜一とひよ里しかいない時点でバレバレなんだよ。もうあいつらとっくに入ってんだろ、"向こうに")
(流石っス)
(褒めてる場合か。多串くんに言えない理由あんだろ。連絡取れねぇのか)
(ええ…入った瞬間から一切連絡が途絶えてしまって)
(霊圧探知も、)
(お手上げっス。ですが、先程ひよ里さんが採ってきてくれましたから)
(…出来んのか)
(なんとか出来るでしょう……いえ、何としてもやります)

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