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親子の形もそれぞれ。





銀時の餓鬼一人解雇した電話を受け取った翌日。再びエイリアン騒動によって真選組は出動要請を受けていた。だが規模は昨日のと比べ物にならないぐらい大きく、ターミナルの膨大なエネルギーを吸収して巨大化したエイリアンは最早人間の手では負えないレベルに達していた。しかもバズーカを撃っても散り散りになるだけで、暫くするとその破片が再構成されるのだ。つまり核を突かないと意味がない。そんなワケで最初は真選組も一般人や報道陣と一緒にターミナルから逃げていたのだが、流石に街中まで行かせる訳にはいかないとせめて触手を断ち切る為に踏みとどまった次第で。しかし、その厄介なエイリアンもついさっき突如急速にターミナルの方へ引いて行き、そこで刃を振るう三人に向かって行った。どうやら一番自分の生存を脅かすモノは彼らと判断したらしい。
私は砲撃をする人達より少し前にいる副長の後ろに立っている。ちなみに銀時は今から二分前ぐらいに通った。一緒に行こうとしたが銀時の後ろで定春に跨る白にピース付き笑顔で任せろと言われたので、私も笑顔で頼んだと頷いた。まぁ、直後にエイリアンに飲み込まれたが。


「……副長」

「なんだ」

「どうするおつもりですか?いくら国の重要建築物だからと言っていつ迄も警察が指加えて見てる訳にも行きませんよ」


煙草をふかしたまま星海坊主と銀時、白の戦闘をじっと見つめていた副長にそう問えば彼は眉間に皺を寄せた。


「苦しい時の神頼みならぬ銀時頼み、ですか」

「…全然上手くねぇよ」

「でしょうね。冗談でもございませんから」


それに更に眉間に皺を寄せる彼に思わず苦笑する。何笑ってんだと言われたがそこまで銀時を毛嫌いする副長の必死さが面白過ぎるからしょうがない。


「…にしても、初めて実際に見たが…まるで化け物じゃねぇか。星海坊主」

「いやいや、旦那も負けてませんぜ」


諌めてもまだ笑う私に言っても意味がないと悟ったのか、星海坊主に限定して褒め出した副長。しかしそれに覆い被せる様に総悟が銀時を褒めたので思わず吹き出しそうになった時、不意に携帯が鳴った。名前を見ればとても無視出来るような相手ではなく、顰め面をする副長に携帯画面を見せてから少し離れた所で電話に出た。


「…もしもし」

〔名前でございまするか!?〕


でしょうね、私に掛けてるんだから。
特徴的な言葉遣いに少し高めの澄んだ声。一年前の一ヶ月間、正に文字通り寝食を共にして来たこの声は、警察庁長官松平片栗粉の娘、栗子のものだ。普段は何故分かると言う程に仕事の合間に掛かって来るのだが、今日は何故か一番厄介な時に掛けてきた。


「そうですが…どうかなさいましたか?私今、少し手が離せませんで…」

〔パパが分からずや、なのでございまする!!〕

「…あー…えっと。どのように?」

〔今日の誕生日彼氏と二人で祝うと言ったら家から出してくれないのです!!〕

「……」


それで私にどうしろと。
私に説得しろってか?いや、無理だから。あのおっさん、娘の事になると誰の話も聞かなくなるんだよ。ノンストップで喋りまくる栗子の文句を耳に流れ込ませながらそう思っていると、後ろから局長の焦ったような声が聞こえて来た。


「とっつぁん待て!!ターミナルに残っていた民間人な西口から避難させたが、ガキが一人えいりあんに取り込まれている!」


さっき私が電話をとった時に幕府の軍艦だ破壊神だと局長が騒いでいたので長官が来た事は知っていたし、神楽が核に取り込まれていると誰かが騒いでいても白がいるからどうにかなるだろうとは思っていた。しかし。長官が"動く"となると話は別だ。あの人は基本頭の中は娘で一杯で何も考えてないからだ。


「きょ、局長!!沈静化していたエイリアンがまた…」

「だ、ダメだ!!これじゃあキリが……ふ、副長ォ!!」


どうやら核を晒された事で危機感を覚えたエイリアンは再び暴走し出したらしい。しかも暴れ具合がさっきより酷い。砲撃が間に合わず最前線にいた副長にエイリアンの口が向かって行くのを見た他の隊士が叫んだのを見て、私は自分の相棒である【風車】の鯉口を切った。


「……栗子」


そして、瞬歩で副長の前に移動すると迫り来るエイリアンを全て斬り落とし、電話の向こうに向かって呼び掛けた。


〔…それにこの間なんてシャンプーまで…え?何でございまするか?〕

「お父様は私が説得しておきます」

〔ほ、本当でございまするか!?〕

「私は嘘は申しません。ですが、今は少し立て込んでおりまして。コレが終わり次第全力で説得に当たりますので」


ありがとうでございまする!!
そう言って漸く切れた電話をポッケに仕舞い、後ろの副長を振り返った。


「お怪我は」

「ねェ。助かった、悪いな」

「いえ。コレが本職ですから」


そう言ってにっこり笑えば俺も立場ってもんが…とごにょごにょ呟く副長に思わず笑ってしまった。
今は漸く慣れて来たが私がこの護衛という職にに着いた当初、彼の拒絶具合は凄かった。要するに男が女に守られることが不満だったらしく、今みたいに私が立つ度に眉間に皺が寄っていた。まぁ警戒心が減らないだけ良いやと思っていたが、急にある時から前に立っても副長は顰め面をしなくなった。これだけは未だに謎だ。と、そんなことに思いを巡らせていれば、ふと辺りに高音が響いた。その音は何かエネルギーが高密度に集約した時のモノに似ていて、何気なく上の方を見た私は柄にもなく呆然としてしまった。


「…え、…」

「オイ…あれは、マズイんじゃ…」


「とっつぁん!!射撃を止めろォォオ!もう撃つ必要はねぇ!!」

〔泊める?ふざけるな。栗子はまだ十七だぞ。彼氏と二人で誕生日を祝いたいとかぬかしてやがったが、アレ外泊する気だよ。絶対許さねェ。全力で邪魔してやる。ケーキの上で全力でランバダを踊ってやる〕


どうりでいつもより我慢がきかなかったわけだ。この間にも家を出て行ってしまうんじゃないかと気が気でないのだろう。反抗期と言いながらも父親の言う事をキチンと守り未だ家にいる栗子はなんだかんだ言って偉いと思う。それを心配する長官は単なる親バカだ。だけど。

その親子喧嘩に国民を巻き込むなよ。

娘のことしか考えてねーのかよ!と近藤に全力でツッコまれている松平に、こう思ったのは私だけではないと思う。


















ー 親子の形もそれぞれ ー

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