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えにし。参





「副長!!こんな所におられたんですか?大変なんです!山崎が何者かにやられて、屯所近くの路地に…副長も早く、




……山崎の所へ」


そう言って土方に刀を向けて来た連中に目を見開いた次の瞬間、そいつらは息をしてなかった。





















ー えにし。参 ー




















「名前…」

「銀時。悪かったね、お守りを任せて。怪我は?」

「あるワケねぇだろ」

「そう。神楽、新八は?」


ないアル!ないです!と声を揃える二人に良かったと微笑むヤツの手には血塗れの刀。周りは死体が十は下らない。そして不思議そうに顔を向ける土方を無表情で一瞥した名前はほんの少し長く瞬きをして周りに目を向けた。ややあって細められた目と近いなと呟く言葉に死神の力全開だなと思いつつ、そういえば格好が死覇装であることに気付いて何となく納得する。直後、刀に付いた血を振り払って鞘に収めながらパトカーの運転席側へ回ろうとする名前を助手席へ押しやった。そんな俺らの行動に慌てて神楽と新八が土方を後部座席に押し込んで乗り込む。


「場所分かってるの」

「じゃなきゃ代わんねぇよ」


律儀にシートベルトをする死神に違和感を覚えるが今はそんなことにツッコミを入れてる程余裕を言える状況でもない。先程の隊士達が言ってた山崎殺害と土方殺害未遂に大分新八達も混乱している。問い詰めようにもあいつらは突然瞬歩で現れた名前によって口も利けない状態だ。つまり死んだワケだが、思った以上におっかない顔をしている名前に気軽に聞ける筈もなく、若干車内が気まずくなりそうで嫌だ。


「…名前。ジミーどうなったアルか。あいつらの言ってたことホントアルか」


神楽ありがとう。と遠慮という言葉を知らない夜兎に感謝したのは俺だけではない。


「生きてるよ」

「「「………え、?」」」


そして危うくハンドル操作を誤るところだった。あまりにもあっさりと言い切る名前に思わず怒鳴る。


「お前な!そういうことはもっとテンション上げて言えよ!!」

「そう?別に普通に霊圧探れば分かるし、第一喜助に助けるように頼んだから死んでないよ。むしろ今のところ一番安全だよ、退」

「霊圧操作出来んのテメーらだけェェエ!!そしていいなジミー!!俺も安全地帯に行きたい!」

「今から死地に全身突っ込むもんね。書いて来た?遺書。復習して来た?尸魂界の世界観」

「いや、ちょっと…あんたが言うと冗談に聞こえないから。止めてもらえます?」


聞けば危ないかもしれないと思った名前が喜助を走らせたらしい。一箇所やや危険な場所を刺されたらしいが、最後、敵も意味深な言葉を残して去ってくれたことで事なきを得たようで。直ぐに治療に入れたことが生存できたことに繋がったと相変わらずの無感情で話す名前。そんなコイツにいい加減精神状態が危ないんじゃないかと目をやった時、不意に無線が入った。


〔こちら三番隊。土方はどうした〕


全力で横を向いた。勿論、安全確認なんてそっちのけだ。最悪、敵の動きを確認出来る無線を壊すんじゃないかと思って名前の手の行方まで見た。だけど、案外冷静に無線機を持ち上げて、口元まで運んでいた。


「邪魔が入った。今、追跡中だ。だが、追いつくのも時間の問題。必ず始末する」

〔そうか〕


と言った奴が聞いてもいないのにつらつらと語ったのは、今回のことの顛末を謳ったもので。土方近藤両者を消すのが最大の目的だと言った瞬間に、名前は無線を置いた。


「……オイ」

「…なに」

「相手は人間だぞ。お前が座ってたって勝てる」

「銀。私がまさか全開で伊東派を始末しようとしてるって思ってる?」

「やらないフリやめろ」

「やるつもりはない」

「やるだろ」

「やらない」

「じゃあ、いい加減そのダダ漏れの霊圧しまえ」

「……言うことが最近段々死神めいてきたけど、大丈夫?」

「お前こそ最近、人間めいた言動が増えたが大丈夫か」


大丈夫よと呟いて自分の掌を見つめる名前に段々と不安が募る。こいつが本当に感情コントロールをしないで全力の戦闘をした場合、俺らは消し飛ぶらしい。以前喜助に、そんな場面に遭遇したら転送装置で離れろとキツく言われてその転送装置とやらを渡された。だけど、俺に関しては別だと言って三十分だけ保つ霊圧緩和機能付きマフラーを渡して来た。前にジミーが着けたヤツの完成版でネックウォーマータイプだから着けやすい。と、お得感を全面に出して説明された。
そしてその時間内に名前を冷静にさせろとも言ってきた。

『…あれ?俺、洞爺湖始解させたのいつだっけ?』
『銀時さん。貴方にしか出来ないことっス』
『…ふざけんな。お前らの方が言う事聞くだろ』
『僕らでは上から言い包める形になってしまう。本当に納得しないと、霊圧ってのは収まらない』

頼み事のレベルが最早真子達と同じ。生身の人間を死神にする冗談みてーな方法を思い出して思わず身震いしたのが記憶に新しい。
何にせよ、こいつが死神になるのを回避するのが先決で。その為に真選組内の状況を少しでも緩和させるべく、俺はパトカーの無線を手に取った。

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