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約束。壱





我らが局長の近藤さん。その人に縁談が舞い込んだ。なんでも猩猩星の第三王女らしく、所謂逆玉状態。名前はバブルス。女の子らしくないなと首を傾げてみたが、写真を副長から見せられて驚いた。

『……あれ、おかしいな。疲れてんのかな、私』

『いや、四楓院。お前は悪くねぇ。見たまんまで正解だ』

ゴリラだった。一体どうやって着せたのか、ピンクの着物を着たゴリラだった。でも流石に王女とだけあって、何処か気品があったような気がしたのは気のせいじゃないと思う。
そして何より問題なのはこれを近藤さんが飲みそうだ、という事だ。理由は簡単。妙に振られ続けているから。副長曰く女ならなんでも良いと思い始めているらしい。しかし仮にも幕臣の一つの組織の長がそこら辺の良く分からない人と結婚するのは如何なものか。と言う事で何処から聞き付けてきたのか、長官が持って来たのがこの縁談だった。
いや、ふざけろ。
おかしいだろ。確かに周りからはゴリラと言われ続けているが、それはあくまでも愛嬌というか御ふざけだ。実際にゴリラではないし、よもや女房までゴリラを望んでる筈もない。一体何て聞いたのか分からないが、女ならなんでもいいの範囲が広過ぎやしないか。これは最早女ではない。雌だ。

『分かった。見合い行ってくる』

『…い、イヤイヤイヤ!!近藤さん!?良く見ろ!!それゴリラ!!あんたは偽ゴリラ!!』

『ああ、中々可愛い人じゃないか』

『………』

長い付き合いでもこんな近藤さんを見たことはなかったのだろう。口をあんぐりと開けて茫然としてしまった副長にいざとなれば私が始末しますと言えば、頼むと言って来たので相当ショックだったとみえる。その後、近藤さんを抜いた秘密会議の末、あまり使いたくない手段を取らざるを得ないと結論が出た。


「土方さん、ご指名は?」

「…妙、いるか」


苦しい時の妙頼み、である。























ー 約束。壱 ー


















すまいる、と大きく掲げられた看板の下を通り中に入ると一瞬の間の後に物凄い歓声が上がった。度々屯所に届く多くのファンレターなるものに若干悩まされている副長とそれで芋を焼く総悟、ちゃんと全部に目を通して返事を書く涼、それに手紙は読まず送り主の名前だけをメモして彼女らに髪留めなどの小物を送る終などを見てきたが、実際の状況を見て驚いた。どうやらこいつらの顔がイケメンなのは本当らしい。


「あら、久しぶりね。名前ちゃん」

「…あ、うん。久しぶり」


副長のアイドルっぷりにちょっと引きながら支配人に頼んだウイスキーのグラスに手を伸ばしていると、火サスやらマヨタンやら一通り漫才を終えた妙から笑顔を向けられた。彼女とは恐らく紅桜の一件以来会っていない。しかもあの時はかなり切迫詰まっていて、看護の指示を口早にしただけで会話とはとても言えなかった。つまり落ち着いて会話出来たのはかなり久しぶりだ。そして、私はこの時妙に大いに感謝した。あの時彼女に銀時の治療の指示はしたが、コレに私が関わってることは真選組に秘密だとは言わなかった。だから下手をすれば次に会った時に何か問い詰められるかもしれないと思っていたが、流石商売柄と言うのか。最初に向けた笑顔で彼女が心にしまっておいてくれていることが分かった。
だからだ。
だから、余計今回の妙頼みに非常に気が進まなくなってきた。


「お妙さァァアん!!どうか、局長の女房に…俺達の姐さんになってくだせェエ!!」

「…なんですか、コレは。腰の低い恐喝?」


笑顔で言い切る姐さん素敵っス。
もう正常な女センサーが働かなくなった近藤さんを引き戻せるのは妙しかいない。と考えた真選組は妙に望みをかけ、それを近藤さんに提案した。そんな確率ゼロに等しいが、万に一つ上手く行けば彼を止められるかもしれない。だが、世の中そんな上手く行くワケがない。現に土下座をしていた隊士達は私達の目的が分かった妙に次々と投げ飛ばされている。勘違いされてストーカーに拍車がかかること山の如しだろーが!と叫んでいるのが聞こえたが、全くもってその通り。貴女は正しいよ、姐さん。
だけど、そんな中。不意に明らかに違う風が室内に流れた。


「ぅわ、あッ!!……、名前さん!?」

「はいはい、私ですよ。怪我は」

「な、ないです。助かりました!」

「ん。良かったね」

「…いきなりどうした、四楓院」

「何か、いますよ」


一般人とは異なる者が。
望みはないと見切った副長が局長に電話を、私はそれを聞きながら妙にあちこちに投げ飛ばされる隊士を眺めていたのだが、唐突に立ち上がって飛んできた隊士を受け止めたのが不思議だったらしい。立ち上がりながら尋ねられたのでそう答えると、ちょうど妙のいる場所が騒つき始め、それを見た副長がそちらに足を向けた。


「オイ、やめろ。これ以上店騒がすな。引き上げるぞ。それから、ガキんちょ。お前も来い。未成年だろ。こんな店に来ていいと思ってんのか」


ガキんちょ。
コレはどうやらこの子には禁句だったらしい。急に"ガキんちょ"の空気に殺気が混じったのが分かった。


「オイ、貴様。今、何て言った?」


そして次の瞬間には、"彼女"の姿が消えていた。

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