聖者の行進2


「・・・君、ヴァチカンの関係者でしょ」
 背の高いコムイと鮮やかな緋色の髪をした少年は悪目立ちをしていた。周囲の配慮のない視線を感じると、あまりの居心地の悪さにコムイはあわてて少年の手を引いた。
 きょろきょろと人気のない場所を探しながらコムイが尋ねた。
「そーさー。て、あ、英語話せる・・・そういや最初に声かけたとき反応してたじゃん。てか話せて当たり前か」
 どこか機嫌よさ気に少年は英語で答えた。コムイが英語を知っていることを最初から知っている、と言いたげな。
 背丈がコムイの胸元ぐらいまでしかない少年はくすくすと笑いながらコムイの後を早足でついてきていた。
「そんな御偉い君が、何の様だい?」
「暇かって軟派したのに、そんなそっけない答えなんか?」
「・・・君ねェ」
 行き先も決めていなかったもので足は勝手に自宅に戻っていた。不審者を易々と自宅に招いてしまうことに抵抗があるが、此処までくると引き下がれない。
 彼を無理やり部屋に押し込むと自分も身をかがめて続いて扉を閉める。
「・・・へー、趣味の良い部屋さ」
 一人暮らしの男の部屋だ。雑多としていて当然だが、コムイの家はそうじゃなかった。ほとんどといって家具がない。そしてあるのは、黄ばんだ紙の屑や古書の類だった。少年は気づけば勝手に物色を始めていた。
「君の感覚を疑うよ。てか、触らないでもらえる?」
「いいじゃん、少しぐらいさー」
 これとか良い趣味してる、と少年は勝手に本を持ちだしてページを捲った。
「これは、舎密(化学)・・・ぁ、あれもか」
 コムイはそれらがかなり古い言語で書かれているのを思い出すと、難なくタイトルを並べてゆく少年にますます眉間の皺が増えてゆく。
 ヴァチカンの関係者であることは一目瞭然だ。それなりの知識を持っているのだろう。
 彼らは姿を隠したりしない。組織の行動は公にしないくせに、その存在を隠すことを厭う。追っているものがものだけにローズクロスは手放せない、らしかった。偉ぶってクロスを掲げているだけでじゃないのだ。
 少年の笑顔は軽くて、気さくだ。しかしどこまでも不振気にコムイは問う。
「・・・それでっ、ヴァチカンの、聖職者が何のようだい?!」
 いくつも下であろう少年の飄々とした雰囲気と対照的にコムイは声を低めて凄んで見せた。
 翻弄されているのが気に食わないわけではない。ただ、彼の本意が汲み取れないのがコムイのイライラを増築させる。感情的になってしまう。
「・・・んまぁ、とりあえずお茶、飲まない?」
 少年はペースを変えることなく、にぱっと笑ってみせた。
「アンタ、事情をしってるんでしょ?」















人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -