tete-a-tete
「あれ、ラビ、背伸びましたね?」
食道のカウンター前はごったかえしていた。
「ふほ?」
先に本日の夕食をトレイもらって、一口つまみ食いしながらアレンを待っていたラビは目をぱちくりさせる。
「今改めて横に並んでみて、肩の位置が高くなっているなって思って」
行儀悪いですよ、ラビ。と自分のトレイいっぱいに料理を抱えたアレンは、ラビの横をすり抜けて、首だけ振り返った。
ごくん、とラビが口に入ってたオカズを飲み込む。
「ラビって、18歳でしたっけ?成長期ですね」
毎年毎年、少しずつ伸びていく身長。そういえば最近髪も伸びた。こんなに伸ばしっぱなしにしたのは、何年ぶりだろう。
変化していく自分。
いつも過去ばかりみている自分は、今という瞬間にいつも少し戸惑う。
ホントは。ちょっとだけだけど。
時間は重みだ。変化はいつも、空っぽの体なんかより心に嵩張っていく。
「19歳になったんさー。もうオトナさ」
無邪気に笑うのがうまくなっていく。変わらないものなんてないと知りながら。
「…まじででかくなったね、お前」
「テメェなんてあっという間に超えちまうさ」
腕組したラビの碧眼がキラリと悪戯に光った。
「いやだな、お前に越されたら今度は俺が抱かれる側になるわけ?」
「そうかもなー。今までのお礼参りガテラにちょちょいと手ごめにしてやるさ!」
「お礼ならありがたく頂きたいんですけど、まだ抱いていたいから遠慮するよ」
「もーーー、そういうお礼じゃないさ。ホントッ、学ねぇな」
がっくりうなだれるラビに、ティキははて?と首を傾げながらも、おもむろにラビの手首をつかんだ。
ラビの方がびくっと震える。触れられた位置から、電流が流れたみたいになる。
「ティ、キ」
ティキの整った指が、ラビの手首を緩やかに握る。
「お前、ガリガリだね。前より痩せたんじゃない」
「そ、んなことないさ」
「ばぁか。わかるんだよ、そーいうのって」
毎回ありがたくむしゃぶりつくさせて頂いてますから、とティキはラビの指をぱくっと食べて、艶っぽい視線を向けてくる。
その熱がダイレクトにいつも胸に押し寄せる。心臓が熱風にさらされたように熱くなる。
ちゅっ、と音を立てて離れていくと、今度は肩を抱き寄せられた。
「十代の成長は恐るべしだな。オレなんかここ最近、なんもかわっちゃいねぇのに」
今まで自分の口あたりが丁度ティキの肩口に当たるぐらいだったのに、今はもう顎に近い。
ティキは変わらないのに。自分だけが、緩やかなスピードで進んでいくみたいで。
「キスはしやすくなったかな?」
腕の中に黙り濃くラビの顎を指先で上げたかと思うと、顔が近づく。リップ音を立てて唇が離れていく。
「…ラビ、泣くなよ?」
ティキとラビの時間の流れ方の違い。
変化があると、いつもそんなことが頭をよぎる。
自分は過去にしか興味がないのに。今という瞬間を記録していだけなのに。
自分のスピードのはずなのに、心が揺さぶられる。
「あんまり泣きそうな顔してると、むちゃくちゃにしちゃうよ?」
ティキがラビを抱きかかえた。嵩ばった心が溶けていくのがわかった。しこりみたいに重たいものが、今目の前にいる現実で少し和らぐ。しがみついていると。
それが一過性のものをわかっていながら。
「ま、無理に大人ぶって笑っていられるより、マシになったけどね」
良かったね、心身共に大人になって。ティキが笑う。
昔なら、簡単に泣きそうになることもなかった。うまくオブラートに包んで、自分の感情は捨ててしまっていたから。逃げていたから。
ラビが潤んだ表情で笑った。
「抱かれてやってもいいけど、どうするさ?」
時間は重みだ。感情に飲まれやすい。いつかこの重みのせいで、身動きがとれなくなっても。
熱が生まれるたびに、本当に変化していたのはナニ。
簡単に素直になれやしないけど。
いつも不確定な変化に、飲みこまれないように。
「可愛いなぁ、もう、興奮してきた」
ばかっ、ラビがティキの背中にまわした腕に力を込める。ごつごつろとした男同士の肌だけど、擦れるとぬくもりが伝わってくる。
これはまだ、愛しさだから、何でも大丈夫。
せわしなく、ベットに傾れ込む。唾液の混じる、キスを繰り返して。
「ラビ、エッチになったよね。キスがエロい」
ティキがTシャツを脱がして、細い腰を掴んだ。
乱暴にベルトのバックルを取りはずす。
「ティキが、変態だから…さ…ンッ」
「そう、オレ、変態だから」
ラビの弱いところを吸って、得意げに笑った。
変わらないものなんてないと知りながら、終わらないことを奇跡みたいに一瞬だけ願った。
『変わらないものしか信じてなかった自分だったのに』
〆
アトガキ
総選挙本を読んでかいたもの。てか、今かいたもの、推敲もせずそのままアップ。笑
本で培った萌えをいろいろ詰め込んでみました。
たまにはらぶらぶなティキラビもいいもんですね(ぇ)
ごめんなさい・・・ただのラビの自慢話を書こうと思ったんですが、やっぱりネガティブな方へいってしまう…なぜだ…
まともに文章かくのも、4年ぶりとかで、リハビリ期間なんで、結構悩みながら描いたものであります。
タイトルの意味は、「二人だけの内密な会話」って意味です。
大好きな100のお題からいただいております。ほんと、このお題大好きなんです><。チキラビのためにあるとしか思えない。もえ。
ではでは失礼しましたっ。