Etanity




 何の予定もない午後。
 ラビの真っ赤な髪は無造作なまま。いつもセットしているのに、なんだか気分がのらなくて。
 部屋のカーテンは閉めたまま。部屋のランプもつけないまま。
 そんな日もある。
 なんもしたくない日。
 ちょっとけだるい日。
 おきあがることさえ面倒で。
 いろいろ思いつくんだけど、いろいろ考えすぎてまったくまとまらなかったりして。
 そういう日は、誰にも会わない方がいいって決まってた。
「はらへった…」
 自然に言葉だけはでてしまう。
 こういう瞬間に静寂を実感する。
 静かで無垢な部屋。
 全部ぜんぶ面倒だから、真っ白でいい。
「…なんか、持ってこようか?」
 ティキが、ラビの髪を撫でながら。
「…んー」
 ラビの生返事。
 ティキの膝に、額から突っ伏す。
 一人じゃなくても、大丈夫になったのは、いつからだろう。
 一人の方楽だったのに。
 ティキが、あまりにも空気みたいに自然だから。
 むしろ、気持ちがいいぐらい。
 十分に、お互いのポイントを押さえているから、何をしても心地よくなってしまった。
 ながいながい、年月をかけて。
 ラビは、首を横に振る。NOのサイン。わざと。
 ティキが、ちょっと笑った気がする。空気からそういう雰囲気が伝わってくる。
 気兼ねない、関係から。
 伝わってくる。
 愛されているのだという、確信が。
 ゆきのように、思いが降り積もっていく。
 ベールのように、全てを包んでくれる。
 ラビは、顔をあげた。ティキの眼鏡が、カーテンの隙間から差し込むわずかな光に鈍く光っていて、瞳が見えない。
 存外にそれを掴みはずそうとすると、ティキは声もなく笑ったけど、好きにさせてくれる。
 顎を持ち上げて、眼もとに唇を寄せた。
 気持ちの伝え方がわからない。
 あぁ思ってこう思ってそう思ってどう思って。
 どれもこれも、正しい言葉じゃない気がする。
 ティキみたいに、音のない思いをどう伝えていいのかわからないけど。
 思っている。何も考えたくない日であろうと。
 もどかしくて仕方がないけれど、それだけは考えていて安心する。
 何もなくなったとき、自分はこの男を選ぶのだという、この無意識な思い。
 何も予定のない午後。陽は落ち始めている。
 考えていても、結局まとまらない日。
 そういうのが好きなわけじゃないけれど、永遠みたいな気がして。
 思いには、重みも形もないから、どう残っていくのかわからないけど。
 さらさらと、時間の落ちる音だけがする。







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