誇り高き至高の月 | ナノ

バルバッド編-13


目が開けられない強い光が、辺りに満ちた。
思わず耐えきれなくなって目を閉じてしまったが、覚悟した衝撃はいつまでたっても感じることはなく。
不思議に思い、目を開けると目の前には大きな青い巨体。


「大丈夫かい?おねいさん」

「これはジン…?キミは……」

どうやら助けようとして、逆に助けられてしまったようだ。
青い髪の少年が心配そうに手をさしのべてくれる。
そっとその手を取り立ち上がると、呆気にとられたジュダルの顔が目に入った。
そしてジュダルは納得したように頷き、不敵な笑みを浮かべる。

「へぇ…チビ、面白いもん持ってんじゃん。巨大なジンの体…そんなもん、俺たちマギにしか出せねえもんなぁ」

ピリピリと、肌を突き刺すような殺気。
これはまずい。
視界の隅で、ルシアとロゼが戦闘態勢に入るのが見える。
しかし周りにはまだ逃げていない沢山の人。

「ジュダル殿、杖を納めて下さい!」

「何だよレン、邪魔するなよな」

「しかし…!」

「これはマギ同士の戦いだぜ?こんな楽しみ、そうそう有るもんか!」

「マギ…同士……?」

マギのことは私もよく知っていた。
創世の魔法使い、愛しきソロモンの移し身とも呼ばれる魔法使い階級の頂点に君臨する存在の者。
歴史の節目に現れ、王となる者を選び導く役目を持つ魔法使い。
しかしマギはそれぞれの時代に三人しか現れないはずだ。
そして既に、その三人のマギは現れているわけで。
さすらいのマギ、ユナン。
生ける伝説、レーム帝国のシェヘラザード。
そして、煌帝国の神官ジュダル。
ジュダルの話が本当ならば、この少年は”四人目のマギ”となるわけで。
だがマギは一つの時代に三人だけ。
四人目だなんてありえない、いや、ありえるはずがない。

「な、レンも気になるだろ?こう見えても俺、結構お前のこと気に入ってるんだぜ?だから邪魔しないでくれよ」

「でも、此処で戦えば周りに大きな被害が出るわ!」

「んなもん、知るかよ」

アブマドといいジュダルといい、何でこんなに人の話を聞かないのか。
マギ同士が戦えば、周りに大きな被害が出るのは確実で。
再び青い髪の少年に視線を戻したジュダルを横目に、そっと忍ばせた短剣を強く握る。
なんとしてでも被害を最小限にとどめなければ。

「いいぜチビ…認めてやるよ、お前のこと。でも、俺の魔法だってあんなもんじゃないんだぜ?」

ジュダルが、杖を頭上にかかげた。
と同時に辺りに濃い霧が立ちこめる。
そしてその霧たちは、ジュダルの持つ杖の先へと集まっていく。

「バルバットは霧の町。水なんて空気中からいくらでもルフに集めさせられる…」

集まった霧は、水の塊へと姿を変えて。
大きく渦巻く水を操りながら、ジュダルは楽しそうに笑った。

「そして…さらに命令すると………俺の1番得意な氷魔法だ!」

水の塊が凍り付き巨大な氷塊へと姿を変える。
氷塊を携えたままふわりと宙に浮かんだジュダルに、民衆がどよめく。
あれは浮遊魔法だ。
高度な魔法を複数同時に操るだなんて…

「はははははっ、驚くのはまだ早いぜ!俺の得意技はこれからさ!」

巨大な氷塊が砕け、複数の鋭利な氷槍に変わった。
ジュダルが杖を振りかざす。

「くらえ!!降り注ぐ氷槍(サルグ・アルサーロス)!!!」

魔法により浮遊していた氷柱は支えを失い、逃げ惑う民衆の頭上へと降り注いだ。


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