膝立ちの体勢で足の間に入られ、壁と仁木島の間に挟まれて逃がすことの出来ない快楽に脳みそがぐつぐつと煮え立つような錯覚すら覚えた。

「んッ、ん、ぅ〜〜〜ッ!」

 口に入れられ、首の後ろで結ばれたタオルを噛んで与えられる快楽に耐える。仁木島の熱い息遣いが俺の肌を這って、唯でさえ火照らされた身体がさらに熱を持った。

「圭、──かわいい」
「ふ、うっ、ッんぅ、っ、」

 酒臭い息に眉を顰めた。確かに俺は仁木島のことが好きだし、身体を重ねることも、嫌いではない。けれど、こんなのはあんまりだ。帰ってきた途端に無理矢理組み敷かれ、訳もわからず犯されて、じわりと目尻に涙が滲む。
 俺に囁く仁木島の声色はいつも通りに砂糖菓子のように甘やかで、甘美な響きを持っていた。好き、可愛い、と紡がれる言葉も、普段と変わらない。なのに涙が止まらなくて、それを気にもかけない仁木島に腹が立つ。

「……ここ、気持ちいいところだもんね」
「ん、っうぅ、く、ん、ッふ、ぅ……ッ!」

 それどころか、腰の角度を変えて俺のいい所を突かれて、訳が分からなくて壁に爪を立てる。その手を咎めるようにとられて後ろ手に纏められて掴まれ、支えるもののない身体がべたりと壁にくっついて、ひんやりとした感覚に目を細めた。

「ねえ、圭……ふふ、すき、すきだよ、ほんとうにかわいい」
「は、ぅっ……ふ、ぁ、あ、あ、にき、しまぁッ……、とま、れってぇ、」

 結び目が緩んだのか、タオルが下に落ちる。きもちいい、に犯された頭で必死に仁木島の名前を呼ぶ。こんなのは嫌だと言いたいのに、言葉の合間に溢れ出る声はどうしようもなく厭らしくて、男を誘うようなものだった。俺の事を可愛いだとか好きだとか、欠片も話の噛み合わない仁木島と、絶え間なく与えられる快楽に頭がパニックを起こして、ぼろぼろと涙がこぼれ落ちる。

「う、ぅ……ッ、やだ、ぁッやだって、いってるのにぃ……ッ、」
「かわいいねえ、泣いちゃった?」

 俺の言葉を無視して、仁木島が熱っぽい吐息が耳にかかった。腰の動きを止めた仁木島の指先が俺の身体を這って、鼠径部から首筋まで、慈しむような指先に整えようとした息がさらに乱れていく。

「さわ、るなぁッ、やだ、やだぁ、あ、……ッ、ひ、ぅ、う、」
「なにが、嫌?」

 内股から鼠径部にかけて、優しく擽られた。びくびくと身体が跳ねるのを壁におさえつけられて、「きもちいいんだ、ここ?」、と何度もその動きを繰り返される。その度にナカがひくついて、仁木島のものを締め付けてしまう。

「ねえ、何が嫌なの」
「こんな、のッ、むりやり、だろ、ばかぁ、」
「そう? 圭、こんなに気持ちよくなってるのに、これって無理矢理?」

 酔っ払っている割に、自分の聞いたことへの返答がないことに焦れた仁木島の言葉に、漸くの思いで返事を返した。俺の言葉にこともなげにくすりと笑った仁木島の手が擽るのをやめて、ぬちゅりと亀頭を握ってきて、息が詰まる。

「ッ、は、ぁ、……う、ッ……きもちよく、ないっ、きもちよくない、ッ!」
「うそつき」
「ぁ、あ、ァ〜〜〜ッ!?」

 意地を張って気持ちよくないからこれは無理矢理なのだと言い張る俺に、ひどく楽しそうな声色をした仁木島。ごちゅん、と前触れもなく腰を奥に進められて結腸を貫かれた瞬間、声の出し方を忘れて射精を伴わない絶頂に押し上げられる。

「きもちいいって言うまで、ここ、許してあげない」
「ひ、ッう、ぐ……ッん゛、あ゛、ぁッ、」

 壁から離され、ベッドに尻だけを突き出すような格好にされる。そのまま、容赦のない抽挿に濁った声が空気を震わせた。きもちいい、きもちいい、きもちいいきもちいい。気持ち良くないのだと言い聞かせていた思考など快楽の波に流されて、ひたすらにきもちいいのだと身体が脳に伝えてくる。結腸責めは俺が一度こわいと泣いてからされることはなかったのに、お構い無しにごりゅごりゅと奥を蹂躙される。

「これでも気持ちよくないかあ、」
「ちぁ゛、うっ、ぁ、あ゛、」

 白々しい口調。違う、気持ちいい、と伝えたいのに上手く言葉が紡げなくて、じゃあここも虐めてあげるね、と語尾にハートマークが付いてしまいそうなほど甘い声が鼓膜を震わせる。仁木島の手のひらに亀頭が包まれて、撫でられる。生理的なものか、恐怖か、溢れる涙がシーツを濡らした。必死にシーツを手繰って握りしめる。いやだ。怖い、気持ちいい。

「けーい、精液漏れちゃってるよ? きもちよくないなら我慢しなきゃ」

 悪いおちんちんだね、と扱く手は止まらない。とろとろと射精と言えないような射精に、それでも尿道すら犯されてしまうようでいやだと泣く。羞恥心などとうになくて、今すぐに止めてほしかった。仁木島ではない誰かに犯されているようで、涙が止まらなくて、しゃくり上げるせいで上手く呼吸ができない。くるしい。そのまま、頭がぼうっとしてくる。

「ふ、ッぅ゛……ッ、ぃ、つきぃッ、」
「僕、こうやってひどくしたかったんだよね、……ずっと」

 熱に浮かされたような声が、やけに鮮明に鼓膜を震わせる。言葉の意味を理解する前に目の前が暗くなって、なにも考えられなくなった。
 
 






Cry for me



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