「俺、お前のために慣らしてきたんだぜ、ここ」
「ちょっと色織、酔ってんの?」

 んだよ、お前も立派に勃ってんじゃねえか、と声に乗せた愉悦を隠すことは出来なかった。俺が見てきた中で一番立派な、それ。

「ん……ッは、ぁ……やっべェ、」

 片手で純平のちんこを支えて、矛先を尻の穴に当ててゆっくりと腰を下ろしていく。明らかに許容量を超えた質量が愛おしい。苦しげに少しだけ眉間に皺を寄せた純平の表情が堪らなくそそった。
 ぞりぞりと亀頭が内壁を擦りあげて、声が出るのを抑えられない。ぐぷ、と1番太いところがはまって小さく息をつく。

「あ、あ……ッ、ふ、」

 気持ちよすぎる。内壁を余すことなく擦られて、女の快楽に背筋をぞくぞくとした何かが駆け上がった。
 やっとの思いで一番奥まで飲み込んで、純平の唇に軽くキスを落とす。お前は動いちゃダメ、と小さく笑って、小刻みに前後に腰を揺らした。

「色織、」
「どおよ、……おまえの、今のオンナ≠謔閨Aイイっしょ?」

 入らないなんて泣かないし、むしろお前とひとつになりたくてお尻ぐずぐずにしてくるような健気なとこ、可愛いと思うけどなあ。
 ねえ、色織、と切羽詰まったような声。揺らしていた腰を力強く掴まれて、思わず不機嫌な声が漏れる。黙ってろって言っただろ、と低い声で文句を言った。眉を顰めて、更に言葉を重ねようとした瞬間、ぐいと手を引かれて無理矢理唇を重ねられる。余裕のない、貪るような口付け。俺をいつも翻弄するようなねっとりとした濃厚なキスではない。

「……ッ、おい、」
「ごめん、でも、……我慢できない」

 唇が離されたかと思えば、ぐるり、と純平の下に組み敷かれて、獰猛な肉食獣のような顔をした純平と視線がかち合った。

「ひ、ッ、ん、ん……ぁッ、ばか、ッ、はげし……ッ!」
「……こうされるつもりで来たんじゃないの?」
「そ、だけど、ッいきなりぃ、あ、んぅっ、」

 ずちゅん、と遠慮なく浅いところから深いところまでを犯されて、声を抑えることなんてできるはずもなくて。純平のほぼ吐息に近い笑い声に鼓膜を犯される。両手首を力強くシーツに縫い付けられて、暴力的なほどの快感を叩き込まれる。

「まッ、あ、だめ、っだめだってぇ、ッ、」
「ココさあ、色織のいいトコ、だよね」

 さっきもここに自分で当ててる時、すごいエロい顔してたでしょ、と遠慮なしに性感帯を暴かれて甘ったるい声が唇からどろどろとこぼれ落ちる。自分の意思とは関係なく与えられる快楽はこいつに支配されているようでどこまでも甘美だった。

「こんなにどろどろにして、そこまでして俺と一つになりたかった?」
「あ、たりまえ……だろ、ばか、あ、ッく、そ……、」

 使うだけ使って、ポイ捨てなんて通用すると思うな。少しだけ力の緩んだ純平の手を払って、頬をそっと撫でる。元々、俺のことを無理やり好きにさせたのはお前のくせに。
 薄暗くて、埃臭い空き教室。縛られて、自分ですら触ったことの無い場所まで身体中に快楽を教えこまれ、男から女に作り替えられていくような感覚はきっと忘れはしないだろう。

「ここだって、びんびんにしちゃってさ」
「ぁ、ッ!」

 きゅっと指先で乳首を摘まれて、女にするみたいに無い胸を揉まれる。自分でオナニーする時の何倍も、どこを触られたって気持ちがいい。そのまま胸を弄っていた手が腹筋をなぞってそのまま下までなで下ろし、俺の我慢汁をぬちゃぬちゃと手に絡ませる純平に文句を言いたくても、一定のテンポで亀頭を弄られては我慢できなかった。

「んう、ッも、どっちもは、むりぃ、」
「なんで?」

 そんなに気持ちよさそうな顔してるのに、とすこしだけ意地悪く笑った純平の手のひらが腰の動きは止めないまま、俺のちんこを扱き始めて今度こそ何も言えなくなる。

「ァ、っだめ、ッイく、っイくぅ……ッ!」

 元々自分で慣らしていたせいもあるのか、散々性感を高められていた身体が前と後ろの刺激に耐えられるはずなど到底なく、呆気なく白濁を腹の上に吐き出した。それを指先で掬った純平の指に口の中を犯されて、軽く嘔吐きそうになりながら舌を絡ませる。苦い。

「ひ、ッ!? ァ、あ、あっ、じゅんッ……、」

 奥にこつんと亀頭が当たる感覚。内蔵すらも犯されるようなそれに、生理的な涙が滲んで純平の顔が上手く見えなくなる。イったばかりの身体は痛みよりも快楽を拾ってきた。
 此処を犯されるのは初めてではない。けれど、何度経験しても慣れないものだった。自分では知らない場所を遠慮なしに暴かれ、意志とは関係なく蹂躙される。

「他の男にも、ここ、犯された?」
「ん、んッあ、あ、……ッおまえ、だけだって、」

 気持ちよさに言葉を紡げないでいれば、奥まで貫かれたまま腰をとめた純平に催促されるように見つめられた。俺が好きなのも、こんな奥まで犯されたことがあるのも、純平だけだ。──そもそも、俺はこいつ以外に男と関係を持ったことなんてない。

「ふうん、そう」
「ひ……ッあ、あ……〜〜〜〜〜ッ!?」

 素っ気ない口ぶりとは裏腹に、ふっと口元を緩めたその顔に見とれていると、不意に亀頭が当たっていたそこより奥まで侵入してこようとする感覚に頭が真っ白になって、わけも分からず純平の背中に縋り付く。気持ちがよくて、こわい。そんなところは知らない。俺が思っていたよりもどんどん奥へと進もうとする純平の方を押そうとしたが、力が抜けて強請るような格好になる。

「ん……、色織ってば、さっきのとこが奥だと思ってたみたいだけど、あそこS字結腸の入口だよ」

 わからない。ごりゅごりゅと明らかに入ってきては行けない場所へと割って入ろうとする純平を止める術などもちろん無く、ぎゅっと目を瞑った。

「あ、ッく、は……ぁっ、やば、いッ……」
「きもちい?」
「う、ッん……あ、」

 ぐぷん、と亀頭がハマった感覚がした。必死に息を吸おうとする唇を塞がれて、上手く息が出来なくなる。熱くぬめった舌に咥内を犯されて、上顎の粘膜を舌先を擽られただけで気持ちよくて脳みそがどろどろに蕩けていく。

「あ、ッむりっ、や、ぁッうごいたら……ッ!」

 ぴったりとハマっていたそこから無理矢理抜こうとする動きに、咄嗟に純平の腕を掴む。先程までは盛る俺を窘めるような顔をしていたくせに、いまでは猛禽類のような、獲物を食む瞳でこちらを射ている。

「……しきおり、」

 入口まで引き抜かれ、また深くまで突かれた瞬間、熱っぽい吐息が皮膚をじんわりと溶かすような錯覚に陥る。
 もう、まともに考える余裕などなかった。一気に押し寄せる快楽の波に絶頂まで流される。一度高められた身体は1回目の絶頂よりも簡単にそこへと行き着いてしまう。まともな言葉を話す余裕が無くなって、身体が俺の意思とは関係なく痙攣した。全ての音がどこか遠くに聞こえて、ふわふわとした感覚がする。

「ひ、……っあ゙……ッ」
「……俺もきもちいよ」

 息の仕方がわからなくなって、それでも純平の声だけがいやに鮮明に耳に響く。少しだけ掠れた声が色っぽくて、脳みそすら溶かされてしまうような、そんな気がした。それでも、俺で純平が気持ちよくなっていることが嬉しくて仕方がなくて、だらしなく嬌声を吐き出す唇の端が少しだけ上がる。
 体の奥を明け渡して、無防備に晒すのは嫌いではない。勿論相手はこの男に限った話ではあるが、自分の身体が自分のものでないようなそんな感覚は嫌いではなかった。



 





崩壊



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(戸惑えば戸惑うほど、それは愛しているということなの。)
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