「ごめ、らさ……ッう、く……ッ、ゆるして、ッ、」
「そんなに泣かないの、ね?」

 笑いが止まらない。俺の前でなにもかもを漏らさせられ、泣いて許しを乞う碧だなんて。散々叩いたせいで真っ赤になった尻臀を撫でて、しゃくりあげて涙を零す碧を見つめる。抵抗する気力も無くしたのか、力の抜けた身体に指先を走らせる。
 別に、碧は謝る必要なんてない。客観的に見て悪いのは10で俺だ。俺に捨てられて、それで新しい恋人ができて。それを俺が咎めるいわれなど無いし、それを碧もぴいぴい小鳥みたいに騒いでいた。俺にこうしてお仕置き≠ウれるまでは。だって仕方がない、碧が俺の所有物でないなんて、耐えられない。

「も、ッ……おれ、っあき、と……っわかれる、から……!」
「うん」

 絞り出された言葉は、俺を満足させるには足りなかった。だから、大きく音を立てて尻臀を打ってやる。不意打ちのそれに、食いしばったせいで血が這う唇から漏れる悲鳴が耳に心地良かったのでもう一つおまけに叩いてやった。

「い、ッ……、」
「痛い?」

 碧の言葉を遮って聞くと、小さな頷きが返ってきた。当たり前だけれど。蚯蚓脹れを指先で辿る。これは鞭で打った傷だ。自分で尻を突き出したまま50回叩くまでちゃんと我慢できたら許してやると言って、腰を引いたら罰として鞭で5回。最後の方なんか、鞭で打たれたあとに俺の手で叩かれるために尻を突き出す時に泣きながら足を震わせて尻を突き出してくるのが堪らなく可愛らしくて、慣らさずに突っ込みたくなるほどだった。

「それで、なんだって?」
「……わか、れて……、れんの、ものに……っ、なる、」

 屈服宣言だ、と唇が愉悦を象る。絶対だよ、と囁く。浮気なんてするなら、もっとひどいことしちゃうから、とも。こくこく。怯えたように何度も頷く碧の顔は、正直俺が見た中で一番ぞくぞくした。
 それじゃあ、と先程まで回していたビデオカメラの録画を止める。ここでお仕置きは終わり、と笑いかけて。安堵したような碧のカオよりも、俺は、

「恋人になった俺とのセックスはまだだから、付き合ってもらうけど」

 ──絶望した表情の方が、好きだ。
 いいよね、と同意を求めながら身体をひっくりかえす俺を断れるはずもない碧が、逃げ場もないのに俺から逃げようとする。がちゃがちゃと喧しく金属音が鳴って、拘束されていない足がシーツを蹴る。けれど、先程までのお仕置きが効いたらしい碧の動きはどうも力ない。

「ほら、足開いて、碧」
「……え、」

 改めてベッドに乗り上げ、碧に笑いかける。無理矢理開かせてやっても良いけれど、自分で秘所を晒させるというのもまたいいだろう。初めは顔を背けてきゅっと足を閉じていた碧だったが、もう一度──あくまでも優しい声で、名前を呼んでやればおそるおそる、といったように足を開く。

「処女でもないのに、もっと開いて欲しいんだけど」
「……ッ、ごめ、ん、」

 まあ碧にしては上出来か、と指にローションを塗して足の隙間に手を滑り込ませる。明らかに不満げな眼差しを無視してぬめる指先で秘孔を探り当て、ゆっくりと指を入れていく。小さく漏れる碧の吐息が空気を震わせた。

「ここ、他の男に触らせたんでしょ? ……碧には俺だけでいいのに」
「……ッ、おれ、わるくない、っのに……、」

 ぐちぐちとわざと音を立てて掻き回しながら碧を誑かした後輩だという男に嫉妬心を燃やしていると、碧が小さい声で反抗の言葉を紡いだので唐突に指を増やしてやった。あれだけ泣いておきながらまだそんな口を叩けるほどの余裕があるだなんて。きつい中で指を遊ばせて、内壁を擦りあげながら漸く泣き止んだ筈の碧の瞳から零れ始めた涙を親指で拭ってやる。人一倍プライドの高い男だから、悔しくて泣いてしまうのも無理はない。ただ、そういう所が俺を喜ばせるのだということはいい加減学んだ方がいいと思うけれども。

「あ、……ッ、や、だ、やだ……あっ!」
「やっぱり俺じゃなくて、カレシがいいわけ」

 その男より、俺の方が碧のこと知ってると思うけど、と前立腺を擦りあげる。俺の言葉に怯えたような色を瞳に滲ませた碧が嫌じゃない、蓮がいいなどと可愛らしいことを言うので、そんなに俺は怖い顔をしていただろうかと可笑しくなった。

「冗談だって、今の碧の彼氏は俺でしょ?」

 ぬぷ、と指を増やす。少し痛いくらいがちょうどいいかと思ったが、存外碧は快楽を感じているようで最近の情事の痕を残されているようで腹が立った。
 
「ぁ、ッだ、だめ……ッそこ、は、」
「碧は入口のトコも弱いもんね」

 爪先が空を蹴った。駄目じゃないくせにと笑って同じところを指で弄り続けてやるとがちゃがちゃと拘束具の音が鳴るのに気分を良くして執拗にそこに指を当てる。

「や、ァっだめ、ッい、くっ、いく、ッ……!」
「……あらら、いつの間にそんなに淫乱になっちゃったの?」
「ひ、……、あ、……は、ちが、ちがう、ッちがうの、」

 つま先がぎゅうと丸まって、声にならない声を上げた碧の中がひくひくと収縮するのがわかった。これも前の男のせいか、とわざと冷たい声を降らせて、いったばっかりだからやめてと懇願する碧を無視して指を動かして中を蹂躙する。前まではこんなに早くに絶頂を迎えることなんて無かったはずだけれど。違うとうわ言のように繰り返す碧に腹が立って強めに尻臀を叩いた。

「ひ、ぃ゛ッ!?  ……おれ、ッゆび、だけでいったの、はじめて、ッはじめてだから、」

 悲鳴をあげた碧にもう一度手を振りかぶったところで、弁解の言葉が飛ぶ。ふうん、と興味なさげに呟いて振りかぶった手で尻を打ち据えた。どうだか、と吐き捨てるように言葉を付け加える。

「尻叩かれてもちんこ勃起させてるくせに、そんなカマトトぶらなくてもいいけど?」
「ほん゛ッ、とにぃ……ッれん、だけっ、あ、あ、ァ……っ!」

 媚びるような碧に、どうせ何言ったってされることに変わりはないんだし、と前立腺を指先でごりごりと潰すようにしながら笑いかけた。ここも勿論弱いらしい。金玉を擽ると、ぐっとそこが持ち上がるのが可愛い。まあ、犬や猫みたいに可愛く鳴いて媚び売ってればすこしは優しくするかもしれないけど、という言葉は飲み込んで。
 ぬめるそこから指を引き抜いて、勿体ぶってベルトのバックルを外した。ああ、この顔。どろっどろのメス顔も興奮するけれど、こういう無理矢理犯してるのがわかるような恐怖に侵された表情の方がもっと興奮する。

「あ、ッあ、あ、ッ……く、いき、できな、ッ……、」
「下手くそ」

 熱り立つそれをぬるぬると尻の谷間に擦り付け、唐突に奥へと腰を進めると、ひゅっと喉を鳴らした碧が不規則な呼吸を繰り返す。鼻で笑って頬を軽く叩いた。
 一番奥まで腰を進めて、亀頭で結腸をこじ開けるように腰を揺すると濁った声を上げた碧の瞳がぐらりと揺らぐ。玉が尻臀に当たって、熱を持ったそこにぐつぐつと精液を沸滾らされるようなそんな錯覚さえしてきた。

「あ゛……ッ、う、ぐ……、ま、って、まだ、」
「んー、……ほんっと頭悪いね」

 そういう所が好きなんだけどさ、と勢いよく引き抜いてもう一度腰を進めた。俺の事を煽ってる、というか、男を煽っているのがわからないのはこいつがメスだからなのか。奥をつかれて、押し出されるように精液がとろとろと漏れでる。トコロテンか、と空気を貪ろうと口を開けた碧の咥内を指先でかき回した。
 嘔吐く度に喉の奥が蠢くのが分かって、この中に無理やり突っ込んでやったらどんなに気持ちいいだろうと想像してしまう。鼻から精液が逆流するまで犯してやったらどんな顔をするんだろうか。喉まんこってまさにこういうことだろう。まあ、イラマチオだって別にこれからいくらでもできることなのだけれど。指を引き抜き、唐突にピストンを始める。

「ぇ゛っ、やァっはや、はやいぃ……ッらめ、ゆ、ゆっくりッ、れん、っれん、」

 絶頂を迎えて蠢く中は、ちんこに絡みついて離さないとでも言うように腰を引いても犯そうとしてくる。もう抵抗する気力もないだろうと手を縛める枷を外してやると、案の定シーツの上に投げ出された手の先がびくびくと快楽に震えていた。

「今さあ、ちゃんと俺のことだけ考えてる?」

 なあんて、死ぬほど女々しい台詞だ。思わず笑ってしまいそうになった。愛が重い女ってこういう気持ちなんだろうか。好きな男が誰かに触られることなど論外、誰かをその瞳に移すのすら腹が立つだなんて。
 奥に進める度に奥に亀頭が嵌って、そこから抜く時の感覚が癖になりそうになる。ついでに言うとその時の碧の顔も。普段のアイドル顔負けの美貌がだらしなく惚けているのが俺のせいだと思うだけで、下半身がぐつぐつと滾る。

「ごめ、ッごめ……ぇっ、あ、ぁ゛ッ〜〜〜〜!?」
「喋れないくらいイイの、俺が」
「は、ぁ゛ッあ゛、あ、んぅッ!」

 謝罪を紡ぎかけたその唇が快楽に戦慄いて、まともな言葉を発さなくなった。謝って欲しいんじゃなくて、質問してるんだけど、と言う言葉はきっともう届いてないことだろう。ぐるりと栗色の瞳が上を向いて、どろりと快楽に濁った。






愛は暴力



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(戸惑えば戸惑うほど、それは愛しているということなの。)
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