「や、ッんとに、げんか……ッい、なの、っあ、ァ……ん、っ!」

 がくがくと伊織が身体を震わせ、力の入っていない手で俺に抑止を呼びかける。あー、ほんっと可愛い、堪んない。腰の動きは止めずに、「……ごめんね、俺イくまで付き合って?」と言うと、その言葉すら聞こえないのか、苦しそうにはくはくと空気を求めるように口を開き、ふるふると首を振るたびにぱさぱさと傷んだ髪がシーツに落ちて音を立てた。そして、その傷んだ茶色の髪と同じ色のまつ毛が震えるのを見て、普段の伊織の面影は無いな、と思わず笑みを浮かべる。ぼこりと膨らんだ腹を指先で撫でて、それにも反応して快楽に打ち震える伊織に、更に笑みを深めた。

「や、ッら、ァっらめ、ぇ、あ、あっん、ぅ、ふ、」

 ほら、この。舌足らずな喘ぎ声、エロ同人かって感じで大好きなの。伊織は偶にふざけてらめえ、って喘ぐこともあるけど、それとこれが違うのは明白だ。汗に濡れた肢体が、ベッドサイドで仄かに燻るオレンジ色の光に照らされて艶めかしく揺れる。目の端から流れる涙は生理的なものなのか、ぼろぼろと零れて枕を濡らしていく。まあ今となっては枕に染み込んだそれが汗なのか涙なのかはたまた他の体液なのかは分からないけれど。

「伊織のナカってほんときもちいよね、」
「ッ……あ、ぁ! む、りぃっそこ、ッや、やなの、」

 あっつい。ぬるぬるとローションと腸液にまみれ、ずっと俺に犯され続けた中はそれでも緩むことなくきゅうきゅうと締め付けて、具合よくうねる。ほんと、俺専用の肉便器、っていうと聞こえ悪いかな。まあオナホって言おうと変わんないじゃんそんなに。要は俺の穴ってこと。いつ突っ込んだって処女みたいにキツくて、これ女なら絶対名器だろうなって思う。ごりごりと前立腺を潰すようにピストンを繰り返しながら、内股に正の字書いて肉便器とか落書きしたら怒るかななんてクソほど下らないことを考えた。

「ねえ、中で、出していい?」
「いい、ッいい、からァ、っ」

 この後ちゃんと俺がお風呂場で掻き出してあげるからね、と耳元で囁き、腰の動きを早めた。まあ中で出していいかなんて今更だけど。俺と10cm以上は身長違うのに、チンコ突っ込むだけでこんなになるって屈服させてる感強くて余計興奮する。伊織が俺の下で泣いてるってやばいよね、普通に。あ、イキそう。奥まで精液流し込んでやろう、と射精しながらもゆっくりと種付けするように奥に奥に腰を進めていく。にんしんしちゃう、とかいう呟きが俺を煽るってわかってないたのかな。いや、これ以上は伊織が持たないって流石にわかるし、このあと風呂でいちゃいちゃしたいからしないけど勃起しそう。ずるり、と伊織のナカから抜くと、ぱくぱくとケツが物欲しそうに動く。やめてほしいよね、こういうの。微かに垂れる精液がいやらしい。真っ赤な腸壁は目に毒だな、と何の気なしに指先でくすぐると、声にならない声を上げて伊織が体を跳ねさせた。ぐちょぐちょで指が吸い込まれそうだ。

「は、ッは、ぁ……っう、ん、……ふ、」

 荒い呼吸を繰り返しながら、空気を貪る伊織。名前を呼んでも反応は薄く、聞こえているのかいないのかも不明瞭だ。ベッドに体を預け、胸を上下させているだけでエロいってどういうことなんだと思いながらももう1度名前を呼ぶと、目線だけをこちらに向ける。心做しか非難がましい。呼吸をすることに精一杯で話すこともままならないようで、なにか言いたげに口を動かしているが全くもってわからない。ただただエロいってことしか。

「ちづ、る……ッ、まえ、やりすぎ、」

 途切れ途切れに怒られる。ヤリすぎって言ったって、それ伊織のせいじゃん、と心の中で呟いた。可愛すぎんのが悪い。まあ理不尽すぎるけど仕方ないよね。ケツの穴の入口で遊ばせていた指を中までずぶりと差し入れる。

「ッ、あ、ァ……っ! や、ッめ、ばか、あ、」

 微かに体が跳ね、腰を捩らせようとする伊織の腰を押さえつけて、指を抜いてから俺のチンコを入口に擦り付ける。いやごめん、なんか伊織みてたらまた勃起してきた。我慢出来なくはないけど、据え膳食わぬは男の恥っていうしあるモンは食っとくべきじゃない?

「ん、ッや、いれるな、ッん、ァ……っ!」

 ごめんね、一応謝ってからゆっくりと埋めていく。マジで気持ちいいんだけど、伊織の中。さっきは伊織限界だからやめよ、とか思ってたけどもう無理。明日絶対怒られるとは思うけど仕方ない。俺と伊織、3:7くらいの割合で伊織が悪いと思うよ。何回も言うけどエロすぎんの。

「は、ッう、ん……ッ、まて、っまだ、うごく、な……」

 苦しげに息をしながら、俺の胸を突っぱねようと胸に手を伸ばしてくるけれども力は無く。ごめんけど、俺伊織みたいにおっぱいじゃ感じないよ、ってその手をベッドに縫い付ける。「動いていー?」足を今までよりも開かせて、さらに奥へと進んでいく。伊織の体の柔らかさはネコ科並だから多少思い切り開かせても平気でしょ。毎日柔軟してるだけあるよね。セックスのためにしてんの、ってふざけ半分でこないだ聞いたら殴られたなあ。明らか加減してるのが分かるそれで、あっオレのことスキでしょやっぱり、とか付け加えてちょっと本気で殴られた記憶。

「だめ、っていっても、」
「うん、動くよ」

 ぐちゅん、と限界まで引き抜いて、奥まで一気に押し込む。少し掠れた高い声が色っぽい。そのままもう1度奥まで進んだ状態で腰を止め、「でもさあ、俺、無理矢理すんのも好きだけど」とそこで言葉を区切り、必死に空気を貪る伊織の顔を見つめる。

「伊織の好きなようにすんのも、好きだよ」

 だからさ、どうして欲しいか言って? やめてほしいならやめるし、伊織がしたいようにするよ、と小さく笑うと、微かに眉間に皺を寄せた色織が、火照った顔をさらに赤くしたところで俺は察した。伊織もなんだかんだきもちくなりたいんでしょって。まあ解っても俺からはなんもしないけど。

「……千鶴、」
「なあに、」

 うごけ、と小さい声で命令されて、口元が緩みそうになるのを抑えて、ゆっくりゆっくり腰を動かす。切なげに眉を寄せて、小さく口を開けて。感じてる顔が綺麗な女っていいよね。伊織は男だけど。口の端から垂れる涎が反射してそれすらも興奮材料にしかならない。

「ッん……ぅ、もっと、はやく……っ、」
「いいよ」

 ぬちゅぬちゅと少しだけスピードを早めて、それでも伊織のいい所は時折掠める程度で終わらせる。こういうのも、自分から言わせたい。なんて伊織にいったら変態とかどうとか言われるんだろうけれど、俺は伊織に言われるならえっち、って言われた方が好き。わかるかなあ、セックスしようよりえっちしよ、のほうがエロいし、オナニーよりも一人えっち、のほうがなんとなくエロい、みたいなやつ。共感者絶対いると思うんだけど。

「は、ァ……っ、ちづる、ッ千鶴、……、ん、ッん、」

 俺の名前、呼んで。普段じゃなかなか言われないお願い。そんなことでいいの、と笑いながら、少し意識して低くした声で、伊織、と呼ぶ。我ながら余裕のない声だ。そう、俺セックスん時余裕ぶってるけど全然そんなんじゃないんだよね。だって気持ちよすぎるもん。もう一度、伊織、と呼べば、きゅんきゅんの伊織の中が蠢くのを感じる。ああ、そういうこと。俺に名前呼ばれたらきもちいから呼んでって言ってんのね。そういうとこも可愛すぎる。

「伊織、……ねえ、もっときもちくなりたいでしょ?」
「あ、ッん、うん、ッなりたい、から、いいとこ、ごりごりして、」

 半分、いやそれ以上に理性を捨ててしまっているのか。AVじみた台詞は普通の女に言われたらうわ萎えるどうしよって思うけど、これが恋人であるとなれば別の話だ。しかも伊織となれば。基本的に俺は伊織のことであればなんでも興奮できる。漏らしてようとゲロ吐いてようと全然オッケー、伊織のおかげで新境地も開拓できそうだ。まあ伊織からすればそんなん迷惑でしかないだろうけど、なんだかんだいって伊織も流されるし問題ないよね。

「や、ッんぅ、あ、っね、おれのこと、っ、すき、っていって、」
「……毎日言ってるのに。好きだよ、伊織」

 耳元に口を寄せる。伊織さあ、名前呼んだり、好き、とか言ったりすると中きゅんきゅんするのほんとに可愛いよね。ふは、と小さく空気を吐き出した伊織が、おれも、と蕩けきった甘ったるい声で返してくる。バカップルみたいな会話。あながち間違ってもないけれども。

「……は、ッあ、ぁ、ん、ッじゅん、ぺ、」

 ぎしぎしとベッドが軋む音に合わせて上がる嬌声が愛おしくて、ぐずぐずにとろけた瞳から流れる涙を指で掬う。伊織の口から零れる俺の名前は、狂おしいほどに甘美で耳に心地好い。
 透明に近い精液がごぷりと溢れたのを目に捕らえて、軽く笑ってしまう。ほんとは女の子の子宮に注ぎ込まれて子供になるはずだったのに、俺にケツの穴犯されて無駄打ち、なあんて。生産性のない行為だろうが、俺にはその事実が何よりも愉快なのだ。俺だけのものであるような気がして。

「な、あ……ッ、きもち、い?」

 不意にこぼされた問い。必死に絞り出すように、快楽の合間に紡がれたそれは狂おしいほど健気で、思わず笑ってしまいそうになる。

「……伊織ン中、死ぬほどきもちいよ」

 ふにゃり、蕩けるような微笑み。だらしなくて、性的なその顔。思わず噛み付くようなキスを落として、ぐちゅりと腰を深くまで打ち付けた。





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