Clap
感謝を込めて。


「もう……ッ、ゆる、ひてぇ……、ッやら、あッらめ、」
「……そんなこと聞きたいわけじゃないの、俺」

 もう嫌、出して、むり、だめ、と可愛くない拒絶の言葉ばかりを吐き出す素直ではない口に黒い棒状の口枷を咥えさせてバンドの金具を後ろで固定する。いやいやと首を振る動きは力ない。

「ん、むぅ……ッん、ふ、」

 苦しそうに漏れる鼻息と縋るように向けられる視線がどうしようもなく興奮する。首に嵌めた黒いレザーの首輪についたリングを軽く指で引き上げると、上手く呼吸が出来なくなり眉間に皺を寄せる表情がなんともいやらしい。後ろから与えられる快楽と窒息、ふたつの刺激にぼんやりと焦点の揺らぐ瞳を覗き込み、中に入れたディルドをぐいと膝で更に押し込んでやる。

「ふ、ッんん、ぉ……っ、む、ぅん、」

 不明瞭な篭った喘ぎ声。不規則に上下する胸を見つめる。ここに監禁して一週間、絢瀬には色々と教えこんだつもりではいたが足りなかったらしい。元はと言えば、絢瀬が浮気癖を直さないのが良くなかったのだ。俺の独占欲の強さなど初めて無理矢理犯したときからわかっていただろうに、変なところで頭が悪いのだから余計に好きになってしまう。

「俺が絢瀬のことをどれだけ好きなのか、わかってない」

 ちゅう、とリップ音を立てて反らされた喉を吸う。噛み付くように何度もそこへ唇を振らせて、食い破られることの怯えか不規則な呼吸を示す喉を下から上まで舌先で舐め上げた。
 喧しいモーター音を立てるディルドをずるりと力を込めて引き抜く。その刺激ですら絢瀬を絶頂に押し上げるのには十分だったらしい。ぴん、と伸びたつま先をちらりと見やり、淫乱な身体になったものだと汗に濡れた腹筋をなぞった。
 黒光りするそれがうねうねと矛先をあちらこちらへ向けるのをどこか冷めた気持ちで見つめて底についたつまみを回してスイッチを切りベッドの隅に放り投げると、未だ息を荒らげる絢瀬の股の間に割り入る。

「ッ、ふ……、ぅ、っん、」

 ぐずぐずに蕩けた秘孔へと指を滑らせて、入口でぬぽぬぽと浅く出し入れを繰り返す。戒められた不自由な身体が俺の指から逃げようと暴れるのが気に入らなくて、空いている手でぐっと顎を掴んで目を合わせた。

「俺より玩具の方がいいって?」
「ん、ッんむ、ぉ、っぁ……、は、」

 知り尽くした中を指で探り、前立腺を指で強く擦りあげた。首を横に振ったのは快楽への恐怖か、それとも俺の言葉への否定か。絢瀬と目を合わせたまま中を探る指を増やしていく。怯えた目がそれでも快楽に濡れているのを見ると、この男を俺好みの身体に作り替えたのは自分なのだと優越感を覚えた。
 熱くぬめる内壁を指で味わうだけでなく、早くちんこで犯して泣かせたい。そうして、そのまま絢瀬の頭が馬鹿になってしまえばいい。そうなれば俺以外の男も女も目に入ることは無いだろうに、と現実離れしたことを考える。

「……涎、すごいね? えっちい顔」

 ちゃんと素直に俺の事好きって言えるなら、外してあげてもいいけど。緩慢に頷く絢瀬の顔があまりに淫猥で俺の性欲へと訴えてきたので、首の後ろで止められた金具を指先で外してやった。
 こうしてみると、中々に倒錯的な姿だ。黒い革の手枷で両腕はベッドのヘッドボードに、足は太股と足首を纏めた上でさらに足首同士をバーに繋いで閉じられないようにM字開脚を強いている。首に嵌めたレザーの首輪はここに監禁したその日につけたもので、そこからぶら下がる小さなリングは部屋の鎖と繋いでおくためのものだ。最も、部屋の中ですら自由を許したことは無いが。

「は、ッ……は、ぁ……ッ、つむぎぃ……ッ、も、おれっ、」
「……んー? 限界? 俺とえっち、してないのに?」

 絢瀬の言葉を遮って問うた。意地の悪い聞き方だとは俺もわかっている。限界では無いはずがないのだ。元々体力はあるということは考慮したって、1週間も監禁されて起きている間は薬に漬けられているか俺に犯されているかなのだから。
 言葉を詰まらせた絢瀬の尻臀をぺちぺちといきり立った怒張で叩いてやると、それだけで快楽を身体に叩き込まれた絢瀬が怯え混じりの、しかしどこか期待したような視線をこちらに寄越してくる。
 足を閉じられないようにしていた足首同士を繋げるバーを外して絢瀬の腰を抱え直して矛先を合わせた。

「ひ、ッ……、」
「なんて言うんだっけ、俺に?」
「……っ、おれ、の……ッ、けつまんこに、ちんこいれて……、ばかになるまで、おかしてくらさ、いぃ、!?」
「……ッはは、……最高なんだけど」
「ッ、ぁ……あッ」

 ぬるぬると入口で遊ばせていたちんこを、一気に奥まで侵入させていく。淫らな誘い言葉は俺が教えたそれよりもずっといやらしくて、あまりの可愛らしさに我慢ができなかった。息が上手くできないのか、浅く息を繰り返す絢瀬は深い絶頂に浸っているようで焦点のずれた瞳でぼんやりと宙を見つめている。がくがくと不規則に痙攣する身体も制御できないようで、そこまで俺のことを感じていることが愛おしい。

「すき、ッすきぃ、あ、ッあ、あ、ん、ぅっ、」
「……俺も好きだよ」

 うわ言のように繰り返される告白。快楽で無理やり捻じ曲げた絢瀬の思考回路は、自分を堕ちてはいけないところまで突き落とす人間を好きで好きでたまらない人間だと認識しているらしい。
 中を突く角度を変えて、より奥まで腰を進めていく。途端に声色が俺に縋るような甘えた声から本当に限界だと伝えるような、なんともいえない声に変わる。たまらない。俺が教えこんだ、俺のちんこしか知らない場所。

「おく、ッう、おくぅ、あ゛、らめ、ッ!」
「……だめ=H」

 普段はよく回る絢瀬の脳も今ばかりは快楽でぐちゃぐちゃにされているのか、無意識で出たであろうその言葉をわざと耳元で低く囁いてやる。先程まで嵌めていた口枷のせいで垂れた涎を指先でなぞりながら、耳朶に吸い付くようにキスをした。

「あ゛、ぅ……ッ、ひ、ッ、」
「おれのちんこと絢瀬のS字結腸、ちゅうしちゃってる」

 わかる?、と吐息混じりに問いかけたが、絢瀬は過ぎた快楽を受け止めるだけで精一杯のようだった。中を突くスピードを下げていき、奥まで挿れた状態で腰を止めて、絢瀬が落ち着くまで待つ。

「ぁ……、ッ、は……あ、」
「……絢瀬はさあ、こんなに酷くされても俺が好き?」

 必死に息を整える絢瀬にその言葉は届かない。どうだっていいけれど。だって絢瀬はこれから先ずっと、もしも俺が絢瀬を解放したとしても、ここで与えられた快楽を忘れることは無いのだ。男に無理やりレイプされて監禁されて快楽漬けにされた事実は消えない。俺が刻み付けた刻印はずうっとそのまま、──考えるだけで、ゾクゾクする。

「おれ、ッ……は、どんなことされても、おまえがす、き……ッ!?」

 やけにはっきりとした絢瀬の眼差しがこちらを向いて、とんでもない一言を吐くものだから、衝動に任せて噛み付くように唇に口付ける。途端にどろりと蕩ける蜂蜜色の瞳は普段の鋭い形を潜めてしまって、だらしなく媚びた色を含んでいた。

「ん、ん……ッ」

 覚束無い舌遣いながら必死に舌を絡めてくるのが、ここで俺に快楽漬けにされるまでは女好きでプレイボーイだったこの男の片鱗を崩したような気がして気分がいい。生娘みたいに俺の舌遣いに合わせる不器用な動きを翻弄するように舌先をちゅう、と吸い上げて口を離した。



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