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三部承太郎恋人とDIOの子供を承太郎が育てる話。







私の本当のお母さんは、私を産んですぐに死んでしまった。私の本当のお父さんの後を追うように死んだ。と、承太郎さんは10歳の誕生日の夜無邪気に笑う私をこっそりと仕事部屋に呼んでそういった。

「だから私は、お前の本当のパパじゃないんだ。徐倫のママもお前のママじゃない。この家に、お前の家族はいないんだ」

父親のことを承太郎さん。と呼ぶようになったのはそれからだった様に思う。
わぁわぁと声を上げて泣く私を見下ろす承太郎さんはいくら待っても私を抱き上げて慰めてくれやしなかった。けれど、それでも承太郎さんは私を手放さなかった。
承太郎さんは私の本当の母親を愛していて、その思いはアッサリと私の本当の父親によって奪い去られた。
彼は私の半分を愛して、もう半分を強く強く憎んでいた。
泣きながらどこか納得していた。徐倫に許されて私には許されなかった事。お友達のお誕生会に行く事。お泊まりキャンプに行く事。スカートを履く事。男の子のお友達と遊ぶ事。それら全てが許されなかったのは、私が承太郎さんの子供ではないからだと解って、なぜか納得していた。
17になり、もう泣いていた子供ではなくなった私にも巣立ちの時が近づいている。
けれど、私は学校に行っていない。
ずっと昔、まだ承太郎さんが私の父親だった頃は彼も、私の将来の夢を聞いて穏やかに笑っていた。スチュアーデスになって世界中を飛び回るんだとか、ケーキ屋さんになるんだとか、そういう子供らしい夢を微笑んで聞いていた彼はもういない。
忘れもしない13歳の朝。
目が覚めて、自分の髪が根元から毛先まで綺麗な金色になっていた時に感じたのは恐怖と少しの不思議な高揚感だった。
その色は恐ろしく、なぜか懐かしかったのだ。


「わぁ!!凄い!キレーな金色!不思議だわ!」
「徐倫……!」


ぼぅっとそれに見とれる私を、年下の妹は見逃してはくれなかった。
無邪気に笑った彼女は私の髪を羨ましそうに……そしてその劇的な変化に興奮気味に部屋を飛び出していった。


「待って……!徐倫…!」
「パパ!凄いのよ!お姉ちゃんの髪がね!凄く綺麗なの!キラキラしてて、お姫様みたい!」


遠ざかりながらも甲高い興奮した妹の声が廊下に響く。
そのあまりにも無邪気な声を他所に、こちらへ近づいてくる足音は間違いなくあの人のもので、その足取りからわかる彼の感情を読み取ってとっさにベットのそばの窓を開けた。
パジャマのまま素足を窓の縁にかける。
ここは二階だが、窓へかかるように伸びた大きな木の枝がかろうじて自分に今から降りかかる災難から逃げる選択肢を与えてくれるような気がした。
背後で荒々しくドアが開く音がした。その音に反射的に片手が枝をこちらへ引き寄せようと伸ばされる。上半身が窓から外へと大きく傾く。転落の恐怖よりも自分の心を支配していたのは、背後から感じられるビリビリとした承太郎さんの気配だった。


「あっ……!」


後頭部がぐっと強い力で後ろへ引かれ体が倒れる。床に体をしこたま打ちつけながら倒れこんだ。それでも痛みが消えないのは、乱暴に自分の髪を鷲掴みにした承太郎さんがそれをよく見ようと、片手で私の頭を床に押し付け、片手で金髪をつかんでよく見ようと引っ張り続けるからだ。
身動きの取れないまま引き倒され、痛みに涙がにじんでくる。
視界の端に滲みながら映った承太郎さんの顔には、おおよそ表情というものがすっぽりと抜け落ちていた。


「…………私がいつ髪を染めるのを許した?」
「ぃっ……たい…!痛いです!」
「自分でやったのか?どういうつもりだ?思うように遊べないから反抗のつもりか?……………それとも、私への当てつけか?」
「ちがい…ます…!起きたら…!本当に勝手にこうなっていたんです…!」


ずっと低くなった声のトーンに泣きながら答える。押し黙った彼は、そのまま掴んでいた髪を話して立ち上がる。
大きな影が落ちて、薄く目を開ける。
あの綺麗な金髪の一房は、強く握られたせいで毛玉のようにクシャリと絡まってしまっていた。
私達の異常を察した徐倫がリビングで泣いている声がする。
その日すぐ、承太郎さんは私の髪を真っ黒に染めた。
それから私をトロリとした優しい目で見つめて、愛おしそうに目を細める。
こうして落とされる口付けに、私は1人震え続ける。


その日から17になった今まで、承太郎さんは私を家から出さなくなった。
承太郎さんが奥さんと別れて、私達は今2人で暮らしている。
毎晩承太郎さんは私の髪を梳いて、わずかに残る金髪を乱暴に引き抜くのだ。
そうして零される今は亡き母親への愛の言葉は、私にはただただ呪いの言葉に聞こえる。
きっと私は承太郎さんがいなくなるその日まで、この小さな家を出ることはない。


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