始まりは

「サッカーやろうぜ!!楽しいぞ!」
「いや、あたしソフト部」
ニッコニコと前の席の円堂はこちらに顔を向けて来た。彼のお決まりような台詞を言った。
「サッカー部足りないのはわかるけどさ〜ごめんねー、ソフトボール一本なんだわー」
「そうだよなぁ…ま!やりたくなったらいつでも声かけてくれ!」
「部活頑張れよ〜」
「おう!!」
そんな太陽の様に笑う円堂が本当にすごいなぁと感心していた。
さて、あたしも頑張るかっ!と気合を入れてエナメルバックを肩に担ぎ上げ部室へと向かった。練習着に着替え愛用のグローブをはめる。今日もサッカー部は円堂だけの活動だろうか、名ばかりのサッカー部に心配を寄せて練習へと打ち込んだ。

「はい!じゃあ後輩は名前の後にづついてランニング行ってきて!スタメンはそのままノックで守備練習!」
準備運動と軽いキャッチボールを終えた後キャプテンに指示を受け後輩を連れてのランニングを始めた。
「んじゃあ河川敷まで行って帰ってくるコースだからそこまで遠くはないけど少しでも体調悪くなったら言ってね」
そう伝えると生き生きと返事を返す後輩たち。可愛いもんだ。

「ん、円堂と秋ちゃんだ。はは、やっぱり他の子いないか」
ランニング中折り返し地点の河川敷で円堂達が小学生相手にサッカーをしているのが見えた。

男の子が蹴ったボールは柄の悪そうな2人組の目の前を掠めすかさず円堂は謝りに駆けつけたが小柄な方が円堂をの腹に蹴りを入れ
長身の方はボールに座った。
「!円堂!!」
「あ!先輩!?」
居ても立っても居られず後輩の声に先に戻っているよう伝え駆け出した。
尚も円堂に手を出そうとする小柄な方の手を左手で掴み止めた。いきなりの横から出てきたあたしに相手はびっくりしているようだ。
「なんだてめえ!」
「通りすがりのソフトボール部です。円堂大丈夫?」
うずくまってる円堂の背中を摩る。
長身の男の方は円堂を、雷門サッカー部を侮辱し挙句にはボールに唾を吐き円堂は目を見開いた。
そして見本を見せてやるとのたまった後蹴られたボールは休憩を取っていた女の子に向かって飛んでいき
「危ない!!」

当たる寸前に男子が飛び出してきた。
足で受け止めてそのまま蹴り返し長身の男の方へとそのボールを叩き込んだ。
そのまま男は気絶。小柄な方が睨みつけるが彼の鋭い目にビビり上がり
「お、覚えてろぉぉ!」
と悪役のお決まりのような台詞を吐いて小柄な方が長身を担いで逃げていった。
一連の出来事をポカンと眺めていると

「待ってくれ!お前のキックすげえな!」
円堂が立ち上がり興奮気味に話しをかけたが
そのまま円堂を無視して行ってしまった。

「凄かったな!!!今のやつ!!!」
両肩を掴まれガクガクとゆさぶられ若干脳がシェイクされたがあたし自身も部活途中なのを思い出した。
「部活戻らないと!!!」
「名前ちゃん大丈夫?」
「うん!すぐ戻らなきゃ!2人とも気をつけてね!」
「名前!ありがとうな!」
「どういたしましてーーー!」


「ぁぁぁああ!!!」
円堂の馬鹿でかい声に釣られて前を見ると昨日の河川敷で出くわした彼がいた。

黒板には"豪炎寺修也"と書かれていた。

その日はなにやら円堂は転校生の豪炎寺にアプローチをかけていたが半田が教室に入ってくるなり「廃部になんてさせない!!」と教室を出ていった。



「名前!!頼む!サッカー部に入ってくれ!!」
「え、どうしたどうした。いつも以上に熱いな」
次の日登校してくるやいなや円堂は頭を下げてきた。
その手には"帝国学園きたるサッカー部員大募集!"という看板が握られていた。
「練習試合が入ったんだけどさ!」
「よ、よかったね?」
だがその顔からは嬉しそうながらも焦りが生まれている。
「人数足りない上に負けると廃部になっちまうんだ…!」
「えぇ!?なんでまたそんなことに!?」
話をよく聞くとなんでも生徒会長の雷門夏美が部員が集まらなければ廃部。試合に負ければ廃部と無理難題を押し付けてきたのだという。

何故これほどまでサッカーが大好きな円堂を取り囲む状況は悪手なのだろうか、そんな困っている円堂を放って置けずつい口から言葉が漏れ出た。
「…助っ人でよければ入るよ」
「ほ、本当か!?」
その言葉を発した瞬間円堂の顔は満開になる。この笑顔にはどうも叶わない。我ながら絆されてるなぁと感じ承諾した。
だが、あたしはまだ知らなかったのだ。相手がどれ程のものなのかと。

その日はとりあえず
ソフト部の顧問とキャプテンに理由を告げて1週間部活を休む了承をもらった。特に大事な試合もないからあっさりと承諾をもらった。

「ここかな…?」
鉄塔広場で練習してるから来れたらきてくれ!と言われていたので来てみると
「どぉわぁあ!!?」
「え、円堂ぉぉぉ!?」
タイヤを背負った円堂がタイヤに当たって吹っ飛んできた。え、ナニコレ。もう一回言わせてナニコレ。
「だ、大丈夫!?」
「っ、へへ、」
円堂に駆け寄ると後ろから他に声をかける人物がいた。
「無茶苦茶な練習するんだな」
振り向けばそこには陸上部の風丸がいた。

そのあと円堂のお爺ちゃんのノートを見せてもらったり円堂の帝国戦にむけての熱い気持ちに風丸も動かされたのか助っ人として入ってくれることになった。

「助っ人同士がんばろう」
「あぁ!…ところで俺ら助っ人がやる気なんだが部員のお前らはどうなんだ?」
風丸が草むらに話しかけるとサッカー部メンバーがこちらを覗き見していた。

皆が円堂の元に照れ臭く集まってくると。やはり円堂の情熱に動かされたのかその瞳はやる気に満ち溢れていた。

「よし!やるぞー!!」

「「「「「おう!!」」」」」



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