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楽しい一時はあっと言う間に過ぎて行く、斬奈の趣味とは掛け離れた姫ベッドに潜り込み、瀬楽はそう感じた。真白も入れた3人で入ってもベッドには十分なスペースが存在して居て、のんびり足を伸ばしてくつろぐ。学校で出た数学と英語の宿題も斬奈と一緒に行い、分からない場所も教えてもらい、こんなにも楽しい気持ちで勉強に取り組めた事がとても嬉しかった。この時間がずっと続けばいいのに…と思いながら瀬楽は眠りについた。瀬楽が寝に入った事を確認して、真白は隣に居る斬奈に小声で話し掛けた

「ねぇ、お姉様」

『なあに、真白』

「お泊り会は定期的に行いたいと、私思ってます。お姉様はどう思います?」

『瀬楽が了承すれば、私もいいよ。昔は良くやってたけどね〜』

「皆さん忙しくなられましたしね…」

『そうだね〜』

昔は、ホント毎日の様にお泊り会を行っていた。学校だけでは話す事が足りず、何時までも色々な話をしたかったから、友達達の家をローテンションで回ってお泊りをしていた。今は互いに忙しくなり、学校も違う為会う事も無くなってしまったけれどそれでも私にとって掛け替えのない同志には変わらない。この世界を助ける為の同志で友達のあの子達、元気にやっているとは思うがその便りが全然来ない為確認する事は出来ない(私からする気はない)心配はしていないむしろ私が心配される方なので何事もなければそれでいいと思いながら就寝した。そんな事を考えていた矢先、斬奈の知らぬ水面下では何かが進行していた事に気付いては居なかった

***

瀬楽が泊まりに来た翌日の火曜日から、瀬楽に対する嫌がらせ行為は本格的に始まった。が、瀬楽本人はそれを嬉しがっている為、対策も抜かりなかった

=火曜日=
瀬楽の下駄箱が襲われ大変な状態に陥っていたが、瀬楽は靴箱のネームプレートを別の所と交換、と言うか元の位置に戻して、中から上履きを取り出し玄関を後にした。瀬楽曰く…

「ファンクラブってやるパターンが決まっているから読みやすいのよね。いい加減気付かないのかしら?」

だそうだ。よくよく思い出してみると、決まった行動周期で動いている事を思い出した。マニュアル化でもしてるのだろうか?

=水曜日=
授業開始前、トイレに入った瀬楽。ファンクラブの子達に上から水をぶっかけられるが、折り畳み傘を使用して濡れるのを最小限に抑え。行動を開始する。E組に戻って来た岡崎、長見、筒井の3人。瀬楽に水を掛けたなどと言って仲良く席へ座った、授業開始してから10分後、ジェイソンのコスプレをした瀬楽が登場

「悪い子はいねぇか!!」

「きゃあ!ちょっと何すんのよ!!」

「あのセリフ、なまはげのだよね」

ホントそうだね、幸村くん。突如教室にやって来た瀬楽は背中に水の入ったタンクと、ホースで繋がった水鉄砲を持参して居た。水鉄砲は岡崎、長見、筒井の3人へ向けられそして、勢い良く水が発射され3人の周りは水浸しになった。3人の周りに居た生徒達はなまはげのセリフを言うジェイソンに何かを感じ取り3人の周りから逃げていた為被害は無かった。3人を水浸しにしたジェイソン瀬楽はロッカーまでも水攻めにして教室から去っていた。居た時間はおよそ3分

「岡崎、長見、筒井…綺麗に掃除しとけよ。全くファンクラブの連中は…」

地理の先生である、中沢先生は忘れ物を取りに教室を離れていた為、何があったかを知らない。ファンクラブは過激な行動を取る子達が多い為、先生達は煙たがっているので、基本的にファンクラブ女子の意見は先生に通らない。何を言っても無駄なのだ。ずぶ濡れな今の状態では先生から見たら、“また、ファンクラブか…”にしからならない。それを利用したのだ瀬楽は

=木曜日=
瀬楽は1限目が終わった頃に学校に到着した。頬に湿布を張っていたので襲われたのだろうとは分かったが、それ以外は無傷だったので何があったのかを聞けば

「ひみつー!」

と、ニヤニヤ笑い。C組の中を覗き、空席の人数を数えてまたニヤニヤしていた。その時ボソっと口にした言葉を私は聞き逃さなかった

「助けて貰えなかったのか…」

“助けて貰えなかった?”何の事だろうか?意味が分からないまま放課後を迎える。部活動が本日ない為一緒に下校する、寄り道をしたいとの事だったので瀬楽の行く方へ向かうと、学校近くにある森林公園の一番奥地までやって来た。人の声が聞こえ茂みに隠れると、やって来たのは大勢のファンクラブ女子。その中には天空寺と城海も存在する。何が始まるのかと息を潜めて待っていれば、奥から制服がボロボロで全身殴られた痕、肉便器として使用された証がついた3人が現れた。瞳は虚ろで体は小刻みに震え足も覚束無い状態だった。可愛そうとは思わなかった、どうせ彼女達3人は瀬楽を強姦させようとして、逆に自分達がされたのだろう。だから投げかけるなら“自業自得”だ。ここまでやられれば二度と彼女達から仕掛けられる事はないだろう。3人が回収されたのを見て、瀬楽と斬奈は帰宅した

=金曜日=
風の噂で昨日の3人は精神病院に行く事になったそうだ。どうしてそうなったのかは、頑なにファンクラブが隠していたが、午後には全校その理由が知れ渡った。嘘で固められた真実と共に、ファンクラブがどんなに隠した所で、無駄なのだ。彼女達を返り討ちにした瀬楽を黙らせないと結局話は漏れてしまうのだから。結局彼女達3人は“男好きのビッチで、自分達で蒔いた種により勝手に自滅した”と言う所まで話は簡潔された。最後の“自滅した”以外全て嘘なのだが、言った所で私に何か利益が来る訳ではないので言うのは止めた。3人が去ったファンクラブの一部の女子達はビッチ説が張られ、下校途中に強姦される事件が発生するが私には関係ない事だ

=土曜日=
体育館から帰って来た瀬楽は自分の机が大変な事になって居たので驚いた。その様子を見て一部の女子達は笑っていたが、瀬楽は気にする事無く掃除を開始した。そしてふ と気付いた。古文の教科書を取り出し深く考える。どうしたものか…と、それを見てこれを行った女子はさらに嬉しそうにしていた。そんな時

「瀬楽、教科書返して」

「あー、幸村くん。それがね…」

「うわぁ…何これ、ボロボロじゃないか」

「体育から帰ったらこんな事になってた…すまぬ」

「瀬楽は悪くないよ、こんな馬鹿な事をやった奴等が悪いんだよ。で?そいつ等の目星はついてるの??」

「明後日になれば判明するよ」

「そっか、明後日って事は月曜日。楽しい事が見られるだね」

「うん、見られるよ!だから楽しみ待っててね」

「分かったよ。教科書は真田にでも借りるよ」

「ホントごめんね〜」

「いいよ。あー楽しみ」

ニッコリ笑顔の幸村と瀬楽。それはとんでもない事が起きる嵐の前の静けさに似た雰囲気を醸し出していた。ボロボロにした女子達は会話の途中で瀬楽のクラスから消えていたので、顔色は分からないが予想は出来る。絶対に青白い筈だ。月曜日が楽しみで仕方がない瀬楽は鼻歌を歌いながら掃除を行っていた


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