28

『ただいま』

「お、お邪魔します…」

「お帰りなさい、斬奈お姉様…」

『真白、あとヨロシク。私夜ご飯作るから』

「え、え?ちょっと斬奈!!」

「制服が泥だらけ!それに打ち身、青たん、腫れまで…これは治療し甲斐があります!さぁ、お風呂は沸いていますから入って来て下さい!その後治療させて頂きますね」

「え、あ、え?!」

『また、あとでね。瀬楽』

家の扉を開けた音を聞いた双子の姉真白がリビングから現れた。斬奈を笑顔で迎えた真白だったが、瀬楽の格好を見て目が見開かれ大層驚いていた。ジッ と見つめる為、瀬楽が少し後ろへ下がるのを阻止して真白に瀬楽を手渡して後は任せた。真白もパッ と制服の上から見ただけで、相手がどんな体の状態なのかをはっきり分かる目を持っている。1人だけ今の状況について行けて居ない瀬楽は、慌しく靴を脱ぎ棄て真白に引き摺られる様にしてお風呂場へ消えて行った。瀬楽の鞄を持って2階の自室へ行き、部屋着に着替えてキッチンへ向かう。リビングでは双子の弟真黒がゲームを行っている姿を発見

「おかえり、斬奈姉さん。誰か来たの?」

『立海のお友達』

「ふーん。料理手伝うよ」

『ありがと』

「今日のご飯何?」

『明日買い出しだから、残り物を使ったチャーハンとキノコスープ、サラダかな』

表情があまり変わらない弟真黒のテンションを見極めるのは実に難しい事だ。長く付き合って居ないと真黒の表情は全て無の様な状態にしか見えない。そんな弟が何やら嬉しそうにしている、兄妹が多い為兄弟の嬉しい事が自分にとっても嬉しく思う槇火紫家兄妹ズ。ゲームを終了して台所に立つ、斬奈の隣に立って並んで夜ご飯の用意を始めた

***

「着替えの洋服。ピンク色のかごの中に置いていますので」

「あ、ありがとう…えっと…」

「斬奈お姉様の妹で、双子の姉の真白と申します」

「ありがとう、真白ちゃん」

「どういたしまして、ゆっくり入られて下さいね」

「…」

パタン と扉が閉まり、斬奈の妹である真白は脱衣所から出て行った。大きなお風呂の中にゆっくり浸かり、瀬楽は深く息を吐いた。こんなに穏やかな気持ちになったのは、何年振りだろうかと考えてしまう。世間一般から見れば瀬楽の家庭は、裕福で順風満帆な誰もが羨む素晴らしい家族だ。だが、実際は世間の目をとても気にする見栄っ張りな家庭だ。世間の評価を良くしようとして、見栄を張りそしてその見栄に今にでも押し潰されそうになっている莫迦な夫婦が居る家だ。子供の瀬楽と2つ下の妹もこの見栄張り夫婦を見て来た事で、それに付き合わされている被害者だ。両親は愛があって結婚した訳じゃない。見栄を張り続ける為に、利用出来る価値があるからこそこの2人は結婚に至ったと、直接本人達から聞いた。仮面夫婦なのだ。そんな息苦しい家庭から抜け出したかったから、真央とつるんでいた。真央の家は神奈川県内全域を仕切る極道の家の娘、非日常へあたしを連れて行ってくれると思ったからだ。でも、これからは圧倒的に違う非日常が待っていると思うと楽しみが込み上がって来た。心を満たされて風呂を出れば、脱衣所の外に斬奈が居た

.

- 30 -



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -