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ねぇ、アンタ何者なの? と言う問い掛けに対して私はこう言う者です と正直に答えてあげる筋合いはないのでちょっかいを掛ける

『見ての通り、神奈川にある立海大付属中の生徒よ』

「そう言う事を聞いているんじゃないの。どっちの味方なの?」

『どっちって?そもそも味方とか何処から出て来た言葉なの?唐突にそんな言葉を突き付けられても分からないんだけど…』

「ふぅ…」

分からない?なーんて嘘、分かっているけど教えてあげない。だって私からしたら貴女達全員“敵”何ですもの、敵には私、塩しか送らないと決めているから。最強ならその“最強の力”を使って私を暴けばいいのよ、まぁ、出来ればの話だけどね。私にも分かる様な溜息を吐いてあからさまに、私を馬鹿にした態度を取る中島萌子、油断している証拠。神様から貰った“最強設定”があるから自分はこの世界で1番“強い”と勝手に確信しているから出た溜息。実際その力を使ったと言う記録は無いのにも関わらず、彼女はどうして自分が最強だと思えるのかが正直分からない。そして、彼女の持つ最強設定が事細かく設定されてある事に対しても中島はなーんの疑問も持っていない。まぁ、それは“神様から愛されているから〜”とかで良い様に解釈したのだろう。素晴らしい能天気な頭をお持ちの様だ。何かを考えた後、中島萌子はジッ とこちらを見つめ直し、ゆっくりとこちらに近づいて来る

「貴女、私に逆らわない方が身の為よ」

『どう言う意味かしら?』

「こう言う意味よ!!!!」

中島の振り上げられた大振りの拳が斬奈目掛けて振り下ろされた。目を瞑って居ても何処に殴ろうとしているのかが手に取る様に分かる。これも中島と斬奈の経験の差、どれだけ本当の命を賭けた“殴り合い”を経験して来たか。と言う差だ。バシン と肌と肌がぶつかり、斬奈は中島の拳を簡単に止めて力を受け流す。受け流した力は衝撃波となって周りへ飛び散った。風も吹いていないのに廊下の硝子がガタガタ と揺れ動く。止められた拳を元に戻そうと力を込めて斬奈の腕を振り解こうとするが全くビクともしない。何が起きているのか中島には分からなかった

「嘘?!何これ!!」

『逆らうとどうなるの?』

「あ、貴女…本当に何者よ!?」

『私?私は、貴女が今使っている“最強の力”のオリジナルよ』

「おりじなる?」

『そう、神様が“最強設定”と言うのがどんな代物か分からなかったから、神様達の間で一番信頼のおける人物をコピーすればその“最強設定”なる物になるのでは?と神様は考えて、私の能力をコピーした。けれど、神様は知らなかった。コピーをした所で私と同じ様に能力を使用する事は“不可能”だと言う事を。中島萌子…お前が今の所使用出来るのは、コントロール不能のその馬鹿力のみ…そうでしょ?』

斬奈は中島を自分の方へ引き寄せて耳に囁く様に真実を伝える。ニッコリ と笑って問い掛ければ中島の顔はサァ と青褪めた。どうやら本当の様だ。何も答えないが彼女の表情が教えてくれた。自分しか知らない筈の事を知っていると言うのは人間にとってとても恐怖な事だ。恐怖に満ちて行く人の表情はとても私を愉しくさせてくれるスパイスになる。口角を上げて不敵に笑う

『早くその力を使い熟さなきゃ、中島…アンタ愛しの彼と仲良くなる事も無くこの世界で惨めな暮らしをしないならなくなるわよ?』

「!?」

『いや…もう今の時点でなっているか…』

「っ!」

パッ と手を離せば中島は青褪めた状態で反対へと走り去って行った。これだけ差を見せれば馬鹿じゃない限り中島萌子は自分に刃向っては、来ないだろうと考え斬奈は目的の音楽室へと向かえばぐるん と世界が反転した。あぁ、またか… と壁に手を付いて項垂れて居れば影の中からアウルの声がする

≪主様、来ます≫

『うん。ホライ』

≪Yes, Master≫(はい、マスター)

斬奈の掛け声で左手の手の中に黄金の光が集束し形を成す。光は弾け斬奈の身の丈以上の杖となる。杖は女性の声で話斬奈の言葉を聞き、足元に見た事のない魔法陣が作成され黄金に光る

『バラアクア』

≪Balaagua≫(水の弾丸)

「きゃあ!」

斬奈を中心に、周辺を囲む様に数十個の黄金の光球が出現した。杖ホライの声と共に黄金の光球は渡り廊下の方へと飛んで行き何かに被弾した。女性の声が聞こえ斬奈は残していた数弾のバラアクアを残したまま、声のした渡り廊下の方へと足を進める。廊下へ入ると中央で煙が上がっていた。ホライを煙へ向け声を掛ける

『いきなりこちらの世界に招き入れるなんて何用かりら?』

「くっ!」

『“人外主・大野姫妃桜(ひさき)”さん?』

「…」

『聞かないの?何で名前を知っているとか』

「…」

『だんまりのまま?あぁ、そうか、さっきの中島萌子との会話を聞いていたのね』

悪い化物(ひと)と見下した表情で大野を見つめていれば、廊下に倒れ込んだ大野がジト とこちらを見つめていた。ブレザーの左ポッケに隠されたナイフを取り出して仕掛けに来るのだろうと、簡単に予想出来た為。大野が立ち上がる瞬間にホライは呪文を発する

≪Carcelinfinidad≫(無限牢獄)

「!? 何これ?!」

『何って?見ての通り“牢獄”危険なお前を外に出させない様にする“檻”それと…』

≪Prohibicion Hilo≫(禁戒の糸)

「ぐっ!体が動かないっ!」

『縛らせて貰ったわ。私、貴女みたいに暇じゃないの。この世界から帰らせて貰うよ』

「これ、外して行きなさいよ!」

『私が氷帝を出たら勝手に外れるよ』

金色の細い糸が何重にも両手首両足首そして胴体を縛り上げた。相手の体を束縛するバインドタイプの魔法だ。禁戒の糸には特殊な仕掛けを施してあり、危険と思われる人物以外には使用しない様にしているが、大野姫妃桜は“人外主”だ。生半可な殺し方ではこいつは死なないだろうから、手荒な方法を取らせてもらう。強めに掛けた魔法はこれ以上の戦闘を逃れる為に呪いを掛けて学校を後にする。あぁ、そうだ1つ言っとかないといけない事があった。大野の前から去る直前で後ろを振り返り伝える

『その糸あまり動かない方が身の為だよ。摩擦で糸が喰い込んで来るから』

大野の斬奈を止める声を聞き流しながら、斬奈は元の世界に戻り氷帝から出て行った。目的の榊先生に会うと言う目的を忘れてしまったが、これ以上氷帝に居てもきっと良くない事が起きそうだったので、輝兄の待つ東京の私の隠れ家へと向かった



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