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ジローちゃんと少しゆっくりとしたスピードで目的地へ向かう途中、グランドにキャンパスを広げた女子生徒2人が座りながらお喋りをしていた。聞く気は無かったが結構な音量だった為、自然に耳の中に入って来た

「昨日の週刊テニス見た!?将来イケメンになるだろう特集、跡部様に青学の不二くん、立海の幸村くん、四天宝寺の白石くん!もう既にイケメンバーだよ!!次はきっと美少女特集で私が特集されるに違いない」

「ちょーないですから、私達そもそも美術部ですから、0%よ。美少女になる確率が最悪合ってもモテないよ。逆に美男子になるんじゃない?あんた男っぽいし。もしも男になったらあんたの目標であるハーレムが出来上がるじゃん」

「かー!みっちゃんさんはこの2年で私の何を見て来たの?!男子に愛されないと意味がない!!しかし週テニは、何故忍足くんを入れなかったのだろう、付き合っている人が居るからかなぁ?」

「そうでしょうね、票が入っていたとしても彼女持ちは出したらアレでしょ。今年の4月のアンケートだし」

いやー、中学2年生でもう既にカレカノ関係が出来上がっている何て今時の子供達は早いね〜。早熟だね。そんな会話を聞いていればゆっくりとテニス部へ着いた。コート外では平部員が黙々と練習をしている中でコートの中からは部活中とは到底思えないキャピキャピとはしゃぐ女子生徒の声と、レギュラーと思われる方達の騒ぐ声が聞こえて来た。声が近付くに連れて左手を握るジローちゃんの力は強くなって行く。仲間意識の強いジローちゃんはきっとこれが嫌なのだろう。勝手に自分の場所に入られれば誰だって嫌だ。特にその傾向が強いと感じるジローちゃんは居たくなくって部活に出て居なかった様だ。もう少し早く気付いてあげれば良かったが、中々“物語”は進む気配が無かったのだ

『ごめんね、ジローちゃん。気付いてあげれなくて』

「! 違うよ、斬奈ちゃんが悪い訳じゃない。勝手に土足で入った彼奴等が悪いんだ」

『“等”?』

どうやら勝手にずかずかと土足で入って来たのはどうやら“氷帝愛され主の菊池百桜(ももか)”以外に居る様だ。となると、1人しか今は手持ちの情報にはないがきっと彼女なのだろう。今水道場からこちらへ向かって来て歩いて来ている“氷帝傍観主の山崎林檎”の事か。しかし、目がいいねぇ〜。水道場からここまでは結構な距離があるって言うのに…それかあれかしら。テニスキャラはどんな離れた所でも発見出来ちゃうセンサーとか持ってるとか?など思って居れば山崎は結構な距離までやって来て白々しい演技をした

「ジローちゃん!探したのよ!さ、部活戻りましょ!」

「お前にジローちゃんって呼んで良いって言ってないC〜」

「ご、ごめんなさい。芥川くん…」

『200名も居る部活のマネージャーさんが部員1人に構っていていいの?仕事たくさんあるんじゃない?だって…テニスコート内に居る見るからに“使えない”マネージャーのお陰で貴女にたくさん仕事回って来ているんでしょ?このままだとマネージャーの仕事今日の分終わらないでしょ』

「っ!貴女誰…立海の制服、部外者が私達の部活の事で口出しするのわけ」

『“私達”? おいおい、貴女。マネージャーが部の一員に数えられるとか思っているの?マネージャーは部全体を影で支えるだけの存在よ、夢小説じゃないんだから現実を見なさいよ』

「!?」

『マネージャーが居るから絆が強くなるとか思っているの?馬鹿でしょ貴女。部員同士の絆にマネージャーは入ってないんだよ、いい加減現実を見ろよ、ここは夢小説の世界じゃないって事を』

「っ!部外者の癖に変な屁理屈なんか言っちゃって!!」

『私はジローちゃんと進展出来る“友達”と言う立場だから、マネージャー止まりの貴女とは違うの。友達はジローちゃんが悩んでいる時、一緒になって考えて答えを導く事が出来るの。それに部活に嫌な原因がある場合、部外者の方が解決に導ける事もあるのよ?山崎林檎さん?』

「あんた何者よ…!!」

『さぁ?誰でしょうね』

クスクスと小馬鹿にした笑い方をすれば、山崎林檎は名前の通り顔を真っ赤にさせて下唇を噛みギュッと拳を握った。どうやら彼女の怒りに触れてしまったらしい。テニス部の見学に来ていた生徒達も、私達の只ならぬ雰囲気を感じ取って辺りがざわめき始めた。周りにいち早く気付いた山崎は、鼻で深く深呼吸をして心を落ち着かせ動揺した事を隠そうとしている。そりゃあそうか、一様彼女はお金持ちのご令嬢と言う立場がある為世間体を気にしている様だ。彼女の持つそんなちっぽけなプライドなど簡単に崩す事は他愛も無い。彼女の逆鱗に触れる様に煽ればいいのだ

『所詮、貴女は主役の私を目立たせるだけの存在…どんなに頑張った所で“脇役”は“主役”に勝てないんだよ?“傍観主・山崎林檎”』

「コイツッ!!」

パン!

「ッ!?」

肌が弾かれる乾いた音がテニスコートに響く。山崎の怒りが頂点に達して私に向けられた彼女の平手は、後ろから近付いて来ていた滝萩之介によって止められた。驚いている内に生徒会室からここまでやって来た本日の目的である跡部景吾が思いっきり山崎林檎の頬を叩いた。叩かれた衝撃で山崎はその場に崩れ落ちる、何故自分が叩かれなければならないのか分からず彼女が考えている間に話しは進む

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