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「俺、先帰っとくな」

『ありがとう、お兄ちゃん。また後で』

「おう!」

氷帝学園の前まで輝兄に送ってもらい、さよならした。まぁ、どうせ学校を出たら兄の家に寄るので結局また顔を合わせる形になるが、お礼はしっかり伝えないとお爺ちゃんに怒られてしまう。さて、学校の中に入るとするか

***

校門の横の警備室へ顔を出し学校へ来た用事の説明を行う。職員室の方へ繋いでもらい許可を得る。生徒会長の居ると思われるテニス部へ向かって歩き出した。校内は放課後と言う事もあって部活を行っている生徒で賑わっている、立海の制服を着ている為氷帝学園の生徒達から不思議な目で見られるが、まぁ、そこは気にせず進んで行く。クラリネットとフルートを持つ吹奏楽部の3人の生徒さんが私の前を歩き出す。どうやら行先は同じな様なので、盗み聞きになってしまうが他校の女子生徒がどう言った会話をしているのか気になったので聞き耳を立ててみる

「やっぱり、あの噂ってホント?“10人の生徒と良好なお付き合いをしている跡部様”って言うの」

「マジで、跡部様。パネェしかし可哀想だよねその女子達結局、一番になれないなんて…」

「ざまぁwwって私思った」

「気持ち悪いなぁとは思った。ってかアンタ言葉をもっと選んで使えよ。今時ハーレムとかねぇ…」

「立派に仕事してるからありなんじゃない?生徒会もテニス部もしっかり纏めてるし」

「あーん?俺様に出来ねぇ事はねーんだよって言われそうww」

「お前跡部様のファンクラブから刺されるぞ」

「ごめん!彼氏から電話が来た」

「死ねリア充ww」

「爆発しろww」

「リアルで草を生やすなww」

「「お前もなww」」

今時な感じの会話を聞いた。さすが“跡部様”噂でもぶっ飛んだ噂がある様で驚いた。女子生徒3人組は部室棟と思われる建物の中へ消えて行った。片手で数えるほどしか来た事のない学校、案の定迷ったので近くの生徒さんへ道を聞く。地面に簡単に地図を描いて頂き説明を受ける。ふむふむ部室棟を左に曲がって東中庭を通って行けば早いそうだ。…東中庭?そんなに中庭があるのか??この学校。探検などすればきっと私は即迷子決定だろう。とりあえず、説明された通りに向かった

***

中庭には私の記憶では屋根はついていない筈ですが…商店街のアーケードの様だ。ガラスなのかプラスチックなのかは分からないが、天井から光が入るこの東中庭はとても暖かくて気持ちがいい。ここで昼寝何てしたらきっといいだろうな〜と思って居れば茂みから少し金髪が見えていた。覗いて見たらやっぱり知り合いだ。気持ち良さそうに寝ているテニス部レギュラーの芥川滋郎だ。部活の真っ最中な筈だがサボりか?とにかく起して一緒にテニス部へ向かおう

『ジローちゃん。ジローちゃん、部活はどうしたかね』

「…うぁ?あれ??斬奈ちゃんが居るー!どうしたのー?」

『生徒会長さんに用事。さぁ一緒にテニス部行こう』

「…」

寝起きのテンションが一気に上がって一気に下がった。テニス部に行きたがらないご様子だ。何があったのかは分からない。ふと思い出せば最近のメールにはテニス部の話は一切出て来ていなかった事を思い出した。これは今日学校に来て正解だったと思いジローちゃんを促す

『ジローちゃん、ジローちゃん。私テニス部の場所分からないんだ。このままだと迷子になっちゃう。私をテニス部まで連れて行ってくれないかなぁ?』

「うん、いいよ。斬奈ちゃんの為に俺テニス部へ案内する」

『うん、お願い』

私の迷子癖を知っているジローちゃん。そうお願いすればジローちゃんは嫌と思って居てもその目的地に私と一緒に向かってくれる事を、私は知っている。これはあざといと言えるのだろうか…書類を持っていない右手を差し出せばジローちゃんの左手がちょっと強めに握って手を繋いでくれた。いたた…。ジローちゃんからのちょっとした抵抗だと思っておく

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