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金曜日、野山さんから聞いた通り。朝から槇火紫斬奈はファンクラブからの嫌がらせを受けております☆(現在進行形で)

「ざまぁみろ!!!」

『ちっ、古典的な嫌がらせかぁ。まぁ、予想は出来たけれどね』

女子トイレに入った所を上からお水がざばー と降って来ました。えぇ、そうですとも。古典的な嫌がらせの“トイレの個室に入った人の頭上からバケツの水を入れる”です。しかし、先ほど言った通り予想は出来て居ましたので、前夜に学校へ忍び込んで反対側の世界の学校のトイレに“傘とレインコート”を隠させて頂きました。もうお分かりになりましたかね。はい、そうです。彼女達が仕掛ける前に私はバッチリ全身防御と予備に傘を差して便座の上に体育座りで待機をしていれば、ほら!勝手に彼女達が捨て台詞と水を落として去って行ったと言う訳ですよ。今まで私がやって来た仕返しのお陰でかなり範囲が狭まったんですよ。真正面からの嫌がらせは誰がやったのかはっきり分かるがその分返しが怖い。誰がやったのか分からない影でこそっとやる嫌がらせは準備するのが大変(朝早く帰りは遅い私の先にも後にもなるのは大変な事だ)そんな見つかるリスクの高い事はやりたくない為、彼女等は中間を選んだ。女子トイレで相手の頭上から大量の水をぶっかけるならば、相手を声だけで判断して誰がやったのかは判断しにくいだろうと言う魂胆の様だがお生憎様。私は足音、気配、声、体温によって誰なのかはっきり分かるその道のプロだ。だからトイレに入って来た時点で誰なのかはもう分かっていた訳だ

『時間の無駄だよね…』

そう独り言でボソ っと呟き綺麗に水を落とした傘とレインコートを、また同じ様に反対側の世界へと仕舞った。上手く行ったと信じて居る彼女達の鼻をへし折れると思うとついつい鼻歌を歌いたくなるが、混乱を招く為に平然とするのが一番だなと思い、何も無かったと言う素振りでトイレを出た。女子トイレの周りには軽く人だかりが出来ていた。ずぶ濡れの私を見る為のギャラリーらしいが、お生憎、何の楽しい事何てなーんにもありゃしない。ただ、私が何も無かった状態で出て来ただけだ。この場に居たギャラリーは私の予想もしなかった状態で現れた事に皆驚き廊下はザワついていた。その中にはテニス部の紅白も混じって居たが、私の姿を見てガッカリした様子で2人の近くに居た女子に「嘘吐き」と言って各自自分のクラスに帰って行った。ざまぁw の意味を込めて2人の痛子、磯崎美咲と上川華妃へ小馬鹿にした表情を送ったが小さな変化をあの2人が気付く訳でもないので自己満足で終わる。クラスへ帰り自分の席へ行くと前の席が入れ替わって幸村精市が居た

「槇火紫さん、女子トイレでファンクラブから何かされなかったかい?」

『何も』

「“何も”?」

『えぇ、何も無かったわ』

女子トイレでは何も無かった事を、強調する様にクラス中に聞こえる様あえて大きな声で喋った。磯崎と上川グループが失敗したと決定付けるかの如く

***

4限目の途中で先生に気分が悪いと伝えてクラスを出て、まず職員室へ向かう。園芸部の先生にとある機械の使用の許可を得る為だ、その機械を使って何をするのかは予め伝えておく。もちろん未遂に終わった今朝の事も伝えるも忘れてはいない。やられたら100倍にして返せ!が私の家の家訓にもなっているので未遂だとしても仕返しはきっちり取らせてもらう。園芸部の道具入れへ行けば目的の機械を手に取って運動場の方へと向かう。その時ちょうど4限目終了のチャイムが鳴った

「何で槇火紫、濡れてなかったのよ!」

「絶対おかしいよね!」

「槇火紫、奥から2番目のトイレに入ったわよね」

「うん。絶対間違ってないけど…」

「失敗したね」

「ご飯食べたら会長の所に行かないとね」

「うん」

おっと…目的の人物達を発見!運動場側の校舎前に置いてある日当たりの良い、ベンチで昼食を食べると言う情報通りの4人組。朝の仕返しを昼にする。しかも仕返しの方がえげつないと来れば、彼女達は私に対して今後して来ないと思われる(今までの経験上)私もお昼早く食べたいので彼女等が弁当箱を開けるタイミングを、見計らいながら片手に噴霧器を持って竹酢液を花壇の花や木々に掛けて行く。竹酢液が制服に掛からない様に注意しながら振り向くタイミングを見つける。4人組とは3mも離れていないですが気付かれません。さすが空気な私

「いくら考えても分からない事はしょうがないよ」

「そうだね」

「食べて正直な気持ちを伝えよ」

「うん、そうだね」

「「「「いただきまーす」」」」

よし今だ!と振り返ると、きゃあ!何これ!? と叫び慌てている4人の女子が居ました。何が起きたか分からないままの私と園芸部にもう1つある噴霧器を、片手に持った幸村精市が清々しい顔でごめん気が付かなかった と悪びれる様子もなく彼女達にそう言っていた。何やってんのコイツとジト と見つめるが幸村精市はニッコリと笑うだけ。竹酢液を掛けられ全身ずぶ濡れになった彼女達は食べられなくなった食事を中断してその場を立つ。私の顔を見てジロリと睨まれたが、風邪引くよ早く着替えなきゃ と言う言葉で諭され校舎へと戻って行った

『幸村くんは何で居るの?』

「槇火紫さんを呼ぶ為にかな?」

『ふーん』

「真田とジャッカルは教室で待たせてあるから、早く教室に戻ろ」

『…そうだね』

どうしてここが分かったの?とか絶対に聞かない。そして何で一緒に食べる前提になっているの?とかも絶対に聞かない。本当に幸村精市はどっちの立場なの??


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