N.Aの視点


幼馴染3人である私と精市と学の6年間同じクラスと言う記録は、立海大付属中学校入学でその連続記録は途絶えてしまった。学はAクラス、私と精市はHクラスになった。最初の頃はクラスに学が居ない事がちょっと違和感だったが、それも直ぐに消えた。休み時間になる度に学が教室へ弦一郎を引き連れてやって来るからだ(と言っても弦一郎は学が廊下を走る事を注意する為にだが…)入学式が始まる前、教室に帰って来た精市は良い笑顔をしていた。あの笑顔は何か楽しいものを見つけた時にする笑顔で どうしたの?と聞けば ふふふと笑って誤魔化した。これはまだ教えないと言う時の反応だ。向こうから話をして来るまで待っていた方がいいと判断した私はとりあえず精市と体育館へと向かった。精市の後を着いて体育館に向かえば、精市は誰かを見つけて目で追っていた。目線の先に居たのは女の子。綺麗な顔立ちの雰囲気が何処と無く子供らしくない子だと私は印象を持った。これはまさか?と考えたが、今はとりあえず様子見と言った所だなと思い、思考を止めて精市と同じ様に聞き耳を立てていた

『うん。桜だけだと良くある風景画だけど、グラウンドや周りの建物とかも入れる事によって写真の時期が分かると思うんだ。それに、ここのグラウンドには誰が書いたのか分からないけど“新入生入学おめでとう”ってあったしね』

どうやらあの女の子は江崎典子さんと言う様で、写真を撮るのが趣味との事。因みに隣のGクラスの子。そう言えば体育館に行く前にGクラスの小学校時代の友達からメールが来ていて、凄く真剣に写真を撮る女の子が居るの!と文字を見ても興奮している姿が思い出せれるほどだ。あの時はあんまり気にならなかったが、精市が気にしているならば要注意人物と認識した方が良さそうだ。私は元からだけれども、江崎さんはどう見ても最近来たと分かる。横と後の女の子達とのぎこちない会話がそれを物語ってるが、江崎さんが写真の事を語るその時の表情や声のトーンなどは嘘ではないと伝わって来た。警戒はしとくべきだろうと思っていたら1週間が経った。向こうから来た子なら接触をして来ると予想していた私はちょっと戸惑っていた。江崎さんはどちらかと言うと精市を避けている感じがした。精市が毎回Gクラスの教室を訪れる度に江崎さんは居ない。クラスの子達の話だと休み時間に彼女は入学式時に話していた鷹内麻美さんと天海愛依さん共にカメラを持って教室から出て行って、予鈴ギリギリに帰って来ているそうだ。写真が趣味と自己紹介した江崎さんなので納得出来る理由だ。入学する前からもうテニス部に入部する事を決めていた私と精市の2人分の入部届を出しに行く為に担任が居る職員室へ向かった。私は職員室で初めて江崎さんと遭遇した

『たのもー…、…失礼します。田上先生いらっしゃいますか?』

「のんちゃん…」

「言い直したわね」

職員室の扉と共に時代錯誤と思ってしまう様な言葉が出て、その場に居た先生方全員の目が職員室のドアへと向けられた。視線に耐え切れず江崎さんは言葉を言い直した。後の2人は何を言っているのか分からないが、江崎さんの表情からして先ほどの言葉を掘り返されている様だ。担任と話した後、私は職員室の扉から出るまでずっと江崎さんを見つめてしまった

「…警戒はしなくていいかも」

職員室から出て人通りが少ない廊下を歩きながら私は1人ぽつりと呟いた

.

- 11/11 -


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -