記憶を埋葬して


望side
女神様と会ってから私はずっと何処かにいた。何処に居たのかは分からないが、きっと、今。私が生まれる為の準備をきっと世界が行っているのだろうと思う。そうじゃなければ女神様に私は騙された形になっているだろうから、けど、いや…確実に言ってそれは無いに等しい気がする。あの女神様の痛子を思い出した時の表情を見れば一目瞭然。女神様があの痛子の味方をする要素は全くと言ってないだろう。だからあるとすれば……

『遊び感覚』

何となく口に出した言葉は今の自分にもはっきり聞こえるほど鮮明に耳に届いた。ここではどうやら言葉も分かる様だ。しかし、1人で居るのに喋れてもはっきり言って寂しいだけ何だが…

『ふぅ…』

「溜息吐いてどうしたの?」

『?!え…っ』

「?」

…何と言っていいのか分からないぐらい驚いた。自分1人しかいないと思っていたこの場所に、幼稚園児が自分の目の前に立っていたのだから、え?いつから居たの?って思っていればその幼児は見覚えが会った。「どうしたの?」心配する時必ず顎に手を置いて首を傾げる仕草。こっちが『大丈夫、何でもないよ』と言えば必ず「大丈夫なら、笑って!」真っ新で純真に笑う太陽みたいな笑顔を持つ、彼女は…

『ごめんね、実(みのり)』

「いいよ、望。お母さん達が向こうで待ってるよ!」

私の大事な“半身”で私が何よりも優先して来た可愛い妹だ


私はごく一般家庭の生まれだ
ちょっと有名な会社に勤めている優しい父親とちょっと抜けているピアノ教室を開いている母親と現実を見据えた私とそして、この家の中心にいる双子の妹の実。小さい頃から大人しい私とは反対に実は私の分までいつも笑っている様な女の子だった。だから周りからすごく愛されていた。一時期私も実を恨んだ事もあったが、恨んだ所で何も変わらないと分かってからは止めた。分かったと言うよりも気付かされたが一番しっくり来る表現だと言えるか…実は私のそんな汚い心にも気付いて苦笑した「恨んでいいんだよ」その言葉で私は実を恨む事は止めて、実と一緒に居る時間を増やした。そうすれば、きっと何か分かる気がしていたから。幼稚園、小学校、中学校、そして高校。私達は一緒に、いつも一緒に行動していたあの事故までは…あの日初めて実が一緒に帰るのは止そうと言い出した。何か私は実に嫌われる様な事を行ってしまったのか?と思って聞いても実は今日だけ!と言ってそのまま学校を後にした。私はショックで落ち込んでいると友達が種明かしをしてくれた。明日は私達双子の誕生日。実はこっそりお父さんとお母さんにお願いしてお小遣いを前借までして最近私が欲しがっていた腕時計を買いに行く為に一緒に帰るのを止めたと言う話だった。嬉しくて私はちょっぴり泣いた。皆で実が買い物に行ったデパートの入口で出待ちをして驚かそうと話し合って向かうと、そこは炎々と炎が燃え上がる火事が起きていた。道路の中央には玉突き事故を起こしたと分かる何台ものトラックが横転していた。悲鳴の中、終え盛る炎の中で、私はその時だけ鮮明に見えたものがある。トラックの下敷きになっている実の腕を…腕なんかだけで人が判断出来るのはきっと双子の絆だと思う。あの場に行く前から私の体は腕以外全身叩かれた様に痛かったから。だから腕を見ただけで全身が叫んでいた“実を助けなきゃ”そう思ったら私は体が動いていた。動いてトラックの下に居る実の元に行った

『実!!』

「のぞみ…?あ…れ?な、んで??」

『いい!!そんな事は後で話すから!ここから脱出するよ!!』

「む、りだよ…わたしのからだ、うごかないんだもん」

『無理じゃない!!あんたが動かないなら私が実を担いでここから離れればいいだけの話!!』

時間が無かった。トラックから流れ出ているガソリンにいつ引火しても可笑しくない状況で、急いで実とここを離れなければならなかったからだ。ようやく実をトラックの下から助け出して安心していれば、一番奥のトラックが爆発した。もうここも危ない。そう思って私は実の傷に触らない様に慎重かつ素早くその場から離れた。だけども離れたからと安心していた私の後ろで一番大きいトラックが爆発して炎の塊が私と実へ向かって飛んで来た…そして―――
目が覚めた時、私は病院だった。意識が朦朧とする中で、喜び合う両親を奇跡だ!と言う医者の人達を見て私は疑問を言葉にした

『お母さん、お父さん。実は?』

「「…っ!」」

『?』

その後聞いた言葉に私は納得していた自分がいた。“実は死んだ”体が石の様に動かない事がきっと私自身が知っていたんだと思った。そして、今自分が生きているのは実のお陰だと言う事も聞いた。トラックの荷台に乗せてあった荷物は特殊化学薬品で炎と結びつくと高圧なエネルギーの塊を生み出し全方向に飛んで行くと言う話だ。そしてそれは私と実へと飛んで来た。私はとっさに実を庇い、全身大火傷皮膚を移植すれば助かる、だが実は内臓破裂大量出血で意識が無くなる寸前で私達2人は病院に運び込まれた。そこで実は医師達に言ったそうだ「私は助かりません。それは自分で今はっきりと分かります。だから私が亡くなったら姉の望の為に使ってください」そう言い、伝言を残して実はこの世界から息を引き取った。笑い掛けてくれる実はもうここに居ないけれども、それでも実と私は一つになって生きている。だから、それだけで私は生きる事を捨てようとは思わなかった。それでも心には見えない傷があったけれども、それは看護婦さんが癒してくれて、私は看護師になる事を決意した。医者でも良かったが私が生きようと思ったのは看護師さん達の力が一番大きかったから、医者ではなく患者の一番近い所に居る看護師になる事を夢にして私は夏休みで体を動かせるまでに回復をした。次は私が同じ様に人の心を癒してみせる!そう信じて居れば死んでしまったのだろうけど、私は次こそ自分の力で努力で夢を叶えてみせる。だから実、お母さん、お父さん。私は生まれます。努力で復讐する為に!!




記憶を葬して

さぁ、これから私の舞台だ

(復讐の下準備をしよう)


Text:酷白。




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