短編 | ナノ
ユーリは自分の部屋なのに、居心地が悪そうだった。キョロキョロして、殺風景な部屋の中を見渡していた。何故、居心地が悪そうなのかの理由はただ一つ

『どうしたの?ユーリ。何か虫でも飛んでいるの??』

「いや…そうじゃねぇが…(お前のせいだよ!ナマエ!!)」

名前を呼んだ女性の方をチラっと軽く見ると、ユーリは軽く溜め息を吐いて下を向く。その様子を見ながら女性・ナマエは首を傾げ、ベッドを降りてユーリに近付く。椅子に座るユーリを覗く形で、ナマエはしゃがんで話しかける

『ユーリ、顔色悪いよ??』

「っ!?(見えているって!お前!!!) 大丈夫だから!」

『ホント?あ、顔赤くなったよ?熱があるんじゃないの??』

「いや!ホント大丈夫だから、お前はゆっくりしていていい…。」

『それなら、いいんだけど…』

ユーリの顔が青ざめているのは、無防備で男の部屋に来た。ナマエに対しての怒りを、通り越しての悲しみの為。顔が赤くなったのは、少し大きめのTシャツの襟元から中が見える為。要するにナマエの着けているブラジャーが、間近で見えてしまうって事の様だ。まだ挙動不審のユーリに促され、ナマエは渋々元居たベッドの上に座った。髪の毛を乾かす為タオルで、纏めていた髪を下ろす。首筋に潤った髪が垂れ下がり、乾かす時の水が目に入らない様に目を閉じる。その表情が一段と色っぽくてユーリは、ごくリと舌で唾を飲み込んだ。

「(やべーな……)」

下半身が疼くのを感じユーリは、再度下を向き冷静さを取り戻そうと格闘する。しかし、すればするほど、ナマエが欲しくなる

水が流れるその首筋に

豊満でそれでいて引き締まった肉体に

ふっくらとした少し厚みのある綺麗な唇に

触れたい、キスを落としたい、

そう強く願ってしまっていた。船内放送の音を聞き、その考えを振り払い、ユーリは立ち上がる

「ナマエ、お前俺が行ったら、お前も帰れよ。」

『ふほーい』

「……」

本当に分かったのか?と思いつつ、この体の疼きを止めるべく急いで大浴場へ向った。風呂は大浴場って言っても、せいぜい10人が入ればやっとの事だ。その為、時間で区切って皆入れる様になっている。女性陣は多少人数が多くても、皆仲良く入れるが。野郎からしてみれば、大人数では入りたくない。食堂で風呂の順番を決めて入るのが、大勢になったバンエルディア号のルールとなった。で、今回の7人のメンバーが、こいつらだ。ゼロス・スパーダ・ルーク・アッシュ・スタン・ロイド。もう、頭を抱えるしかない、ユーリがその場に居た

「ひゃっほ〜〜い!!」

一番乗りに風呂場に入ったのは、ゼロスとスパーダ。女性風呂側の壁に、聞き耳を立てていた。その様子を見てげんなりしながら、シャワーの前で体を洗い出すユーリとアッシュ。ふと、隣のアッシュを見ると、少々前かがみなのに気付く。ユーリの視線に気付き、アッシュもユーリを見て互いに苦笑する

「風華か…」

「ナマエか…」

ほぼ同時に相手の悩みの種の名を言うと、互いに強く握手をした。アッシュもここに来る前に、ユーリは自分と同じ境遇に遇ったと悟った。互いに溜め息を吐き、浴場の中に体を沈めボーとする。ボーとする2人は考えている事は、一緒だった。とにかく、部屋に戻ったら、あの悩みの種が自分の部屋に戻っています様にだ。深い溜め息を吐くと、顔をお湯につける。すると、湯船に入って来たゼロスの言葉に2人は驚いた

「俺様ー、一番目に入りたかったなぁ〜」

「どうしてだ?」

「風華ちゃんとナマエちゃんが、互いの胸揉み合いしてる声が聞こえたんだって〜」

「「!!!???」」

「まじで〜〜〜!!ってか、それ誰情報だよ…」

「我々の仲間チェスターくんからの情報よ、スパーダくん」

「チェスター生で聞くとは…羨ましいですなぁ…」

悩みの種の話が出て来た二人は、動悸が著しく早くなるのを感じていた。早鐘の鳴る様に心臓が痛い、リアルに想像が出来る自分が憎らしい。なまえとナマエは通常時でも、一緒に引っ付いている姿を良く見かける。それが今は自分達に、とって毒にしかならなかった。更に追い討ちは、ゼロスとスパーダの真似事のお陰で、今にも鼻血が出る勢いだ。前かがみになるのを止め様と試みていると、意外な伏兵が出現で荒れる事となった

「ナマエと風華の胸なら触った事あるぞ」

「「な、何ーーーーー!!!いつ!!何で!!」」

「一昨日かな?何でって、ルーティの部屋に呼ばれた時に触った」

「ありえない!!何故?スタンが!!!」

「そこに居た、アニスからだけど“一番そう言ったのに疎いから”だってさ」

「あぁ、それもそうか…」

思わぬ伏兵スタンの出現により、男性風呂は大荒れ模様となった。絶叫するゼロスとスパーダからの、質問攻めにゆくっりと返答していくスタン。遠くで聞いていたユーリとアッシュは耐え切れず、湯船から立ち上り浴場を後にする。放心状態の2人はさっさと着替え、各自部屋に戻って行った

***

部屋の前に着くと、ユーリは扉の前で深く深呼吸して中に入った。プシュっと自動扉の開く音が聞こえ、中に入るとベッドでスヤスヤと寝息を立てる姿が。その場でうな垂れ、扉に無意識で鍵を閉める。自分のその行動に驚き、頭で鍵を開け様とするが体が命令を聞かない。体は正直とはこの事を言うのであろうか、と思いながらユーリは近付く。ベッドで熟睡するナマエの顔の隣に腰を下ろすと、最後の理性でナマエを起こす。遠くから声を掛けて起こそうと試みるが、夢の中のナマエには届かない。顔を出来るだけ近づけた状態で、ユーリはナマエに声を掛けた。ナマエはうんっと、色っぽい声を出して寝返りを打つ。すると、両手をユーリの首に回し自分に近づけると、ユーリの唇に噛み付く様なキスを落とす

「ちょっと…!まっぁ……!」

クチャクチャといやらしい音が聞こえ、ユーリの理性は綺麗に吹き飛んだ。相手にその気があろうと、なかろうともう我慢の限界だった
ナマエのキス攻撃から逃れると、次は自分からナマエの唇を奪いに掛かった。角度を変えながら深く、深く、口内を攻め立てる。ユーリの攻め立てる舌の動きに一緒になっていた、ナマエの舌に変化が起こった。本人が徐々に覚醒し始めた証拠でもあるが、もう理性が吹き飛んだユーリにとってどうでも良かった

『!』

「よぉ、お目覚めか?」

完全に覚醒したナマエは、目の前にドアップで映るユーリの顔を見てビックリする。唇を離しユーリは、多少優しい言葉を掛けた。ここで、ナマエが暴れるや大声で叫ぶなどしたら、それで止めて今までの関係には戻れない。それはそれでもいい、もう少しナマエが男に対して警戒心を持つ様になる筈だ。そんな事を考えていると、意外な展開が待っていた

『赤ずきんちゃんが狼さんにキスして、理性が飛んだ狼さんに襲われている図』

「…分かっていんじゃねーか…。で?お前はどうしたい?」

『…』

例えがあれだが、状況を分かっていると言えば分かっていた。ナマエに覆い被さる様に覗いていると、下から返事が返って来た。首筋にキスのおまけ付で…明かりを消して暗くなった部屋の中で、ナマエの喘ぎ声が小さく響く。その声に興奮して、ユーリのナマエを触るのも次第に激しくなる。互いの吐息を聞きながら、ナマエはユーリの洋服を器用に脱がす。ナマエは既にユーリによって、上半身何も着けていない状態だった。貪る様にユーリは、ナマエの体に無数の紅い華を着ける。片手で綺麗で少し弾力のある胸を揉み解し、片方は一気にスパッツと一緒にパンツを下げる。ナマエの秘部に指を当てると、ぬるっとした感触があった。既にそこは湿っていて、受け入れる準備は整っていた様だ。あまり、焦って入れたくは無いのだが、今は余裕がほとんど無いに等しい。その為ナマエに一声掛けると、自身を取り出す

「いいか?もうちょっと、濡らすか??」

『いらない。第一、ユーリにその余裕があるの?』

「はっ、痛い所をつかれたな…」

『ふふふ…でしょ?だから、構わないから頂戴。ユーリを』

ちゅと、ユーリの頬にキスを落とし、微笑むナマエ。苦笑してナマエを持ち上げ、自分の上に乗せると、ゆっくりと中に入れる。全部ゆっくりと入ると、程よく締まる感覚が更に、ユーリの気持ちを高める。真正面で向き合った形で、ナマエの顔を見ると気持ち良さそうに微笑む。その姿をいつまでも見ていたかったが、自分の自身はそれを許してはくれなかった

『あっ…ふぁ、あ……!』

「ふぁ…?あぁ??ここか?ナマエ…」

『そこ!!もっとちょうだい……!』

「あぁ、いいぜ。やるよ」

動かす腰は次第に早く動き、ナマエのいい所を探す。声が高く上がった場所を重点的に突けば、体がビクビクと振るえ快感に耐えている様だ。その様子を見ながらユーリは強く激しく腰を動かし、ナマエを攻める。激しい動きに耐え切れなくなり、ナマエは自らも腰を動かし始める。トロンとした表情でユーリを見つめ、キスをねだる


『キス…』

チュウ

『…もっと!』

「……」

ねだられた為、ユーリは唇に軽くキスを落とす。しかし、不満な様でナマエは頬を膨らませ、もっととせがんで来る。どちらかと言うと、行為の方に集中したいユーリは腰を動かすのに精一杯。苦笑いしてナマエに後でと、言うとせがむのを止めて行為に集中する様だった。激しく動く腰に合わせて腰を動かすと、ユーリは自身を取り出しイった。それと同時にナマエも、体に電気が走った感覚に襲われていた。2人同時に果てベッドに倒れこんだ。息を整え、顔を見合わせる2人、ユーリは少し深めにキスを落とすとナマエを抱く。顔をユーリの胸に埋め、ナマエはユーリを見つめる

「ナマエ…、好きだ」

『私も好きよ、ユーリの事。ただ…』

「ただ?」

『事情があってね、村の掟でね。ってか、私が決めた事なんだけど…』

「何だ?」

『“体の相性が合う人と結婚しろ”なんだ…』

「何だそれ??」

『だから、体の相性が合えば夫婦円満は間違いなし!!って事。私達の村はそのお陰で今の所、夫婦喧嘩は一切起きてないんだよ』

ナマエの言う事が、あまり理解出来なかったが、一つだけ分かった事はある。一線を越えると、ナマエは一気に可愛くなると言う事が。男性陣の前ではアホっぽいのやバカっぽい事もやるが、大体きりっとした“大人の女性”だ。それが女性陣の前だと、180度変わって10代前後ぐらいの子供っぽい所が見える。(オヤジっぽい時もあったりもするが…)可愛い部分が見えたユーリは、優越感でニヤニヤと笑いが込み上げて来た。急に笑みが零れたユーリを見て、ナマエは一気に萌が引くのが分かった。はぁ…と軽く溜め息を吐いたナマエは、頭を抱え反対向いてこう言った

『とにかく、村の掟でユーリと付き合うってまだ言えないから』

「あぁ………?」

『……。聞いてないな?』

ユーリが悶々と考えている最中にも、ナマエは“掟”の話をしていたのだ。しかし、ユーリは別の事を考えて上の空だった為、耳の中を通り過ぎていた様だ。呆れたと呟き、せっせと服を調えてベッドから降りた

「帰るのか??」

『当たり前でしょ?する事はしたんだし』

「さっぱり、してんな…」

『だってそれが、私ですから』

あんだけ激しく動いていたはずなのに、ナマエは普通だった。洋服から紅い華が見えないかをチェックすると、ナマエはクスリと笑った。その様子を見ながら、体を動かす度に揺れる髪を捕まえて口付けを落とす。目線が合い、ナマエの顎を持ち近づけると軽くキスを落とす

「“掟”は知らんが」

『知らんのかい!!』

ビシ!

「とにかく今は、俺だけのものにはなれないって事だろ?」

『そう言う事で間違いはないわ』

「なら、互いに欲しがった時に、しましょう?か」

チュウ

最後に言ったユーリの言葉の返事は瞼にキスだった。キスをしたナマエは、クルっと反転して扉を開けて出て行った。その様子に苦笑してユーリは、ベッドに潜り込んだ。最中のナマエを思い出しては、ふと思った

「(たっく…どちらが狼さんだよ…)」

狼さんの恐ろしさを教えるはずが、赤ずきんは一枚上手で狼さんを試した。そんな感じのする、ナマエの最後のキスだった。自分はもしかしたら豪いもんを好きになってしまった様だと、思い欠伸をして眠りにつく


―END―
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