『どう?獅郎ちゃん…今日は良い日なるんじゃない??』
「うーん…」
柔らかな頬笑みを向けて女性は男性・獅郎を呼び彼が寝っ転がる隣に腰を下ろした。獅郎と呼ばれた男性は女性の言葉を聞き、寝ていた体を起こし女性と目線を合わせた。そしていつも通りのヘラリとした笑顔を見せて笑った
「なーに言ってんだ、ナマエ…この晴天お前がやった事だろうがよ…」
『あら?何の事かしら?私分からないわ!』
「全く…」
クスクスと無邪気に笑うナマエを見ながら獅郎は近くにあったお酒に手を伸ばす。が、ナマエが先にお酒を取って、獅郎には杯を渡してそこにお酒を流しいれる。お酒が入った杯の水面には満点の星空が映っていた、それを覗いていればポツポツと1つずつ星が夜空から落ちて来ていた
「始まったか…」
『えぇ、始まったよ』
天空から降り注ぐ星々は“流星群”1時間の間に30個から60個の星が流れ落ちる。しかし、今年のは今まで見た中では1番多く神秘的な程だった。後にこの流星群は“奇跡”と称され、次に同じ様な流星が落ちるのは何百年、何千年先と言われて多くの人々に語り伝えられる事を今はこの2人は知らなかった。だが、獅郎は夜空から降りて来るこの星達を“流星群”としての囲いに入れておくのは忍びないと思っていた
「ナマエ、この大量の流星群もお前の力なのか?」
『私の力じゃないわよ。私はこれだけの星を引っ張るほどの力はないわ、でも星を呼ぶのには力は使ったけどね…』
「何だよ、結局力使ってんじゃねーか」
『“星を呼ぶ”事にはって言ったじゃない!そこは間違えないで頂戴な』
「へいへい」
『…それにこれは“願い”だよ、星に乗って何千年もの昔から人達が願って来たのがこうやって目に見える様に具現化して私達の前に現れているの』
「ナマエ…」
そう言ったナマエの両手の中には金色に光るゴツゴツしたゴルフボール大の石が在った。それはキラキラと輝いて辺りを照らす。石を優しく両手で包み込んだナマエの口元が微かに動いた、それが終わった瞬間。ナマエの手の中から金の光は弾け飛び手をすり抜け光は上空へと上がり、夜空に溶け込み星となった。その星はそのまま夜空を駆けて行った
「なぁ、ナマエ」
『なぁに、獅郎ちゃん』
「お前なら今日のこれに何て名を付ける?」
『そうね…私なら―――
流星雨
かしらね…』
(それは願いを乗せた“希望(星)”が過去から未来を巡る旅)
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企画『夏色。』様に提出いたしました