短編 | ナノ


「…何だ、その手」

『今日は何日?』

「…14日」

『チョコ頂戴』

ずいっと事務所でカップラーメンを口に含む静雄の前に手を出して、せがむものは一つ。バレンタインのチョコだ。両手に紙袋と大量のお菓子を持ったナマエに対して静雄は「何言ってんだ?」と思いながら眉間に皺が寄った。その皺をもしこの場に他人が見ていればきっと、10人いたら10人が逃げ出す事だろうと思いながらも、先ほどから表情を変えないナマエを見つめ返した

「ふつー、女が男にあげるんじゃねーのかよ」

『日本のそれは普通ではないよ。それは日本独特の事だよ』

「そうか」

会話終了。ズズーとラーメンをすする音が聞こえて来るだけで、今度はナマエの眉間に皺が深く刻まれた。出会った時から出してある手が虚しさだけをその両手に落ちて来る。こっちを見らずラーメンの汁まで飲み干して、デザートのプリンを取り出した静雄の前にある机を叩いてこちらに注目させた

「何だ、まだ。あんのかよ…」

『チ・ョ・コ!!』

「あ〜、悪ぃ。給料日前だから買えないわ」

『何よ!食後のデザートにプリンは買えてるくせに、チョコは買えないって言うの!』

大好きなプリンを一口すくって食べ始めを止めたナマエは静雄の睨みも気にせずバンバン机を叩きながら要件を伝える。目が一瞬泳ぎながらジッと見つめられて言われた給料日前には嘘は混じっていなかったが、気に食わなかった。そりゃあ当日にいきなり押しかけてチョコくれって言うのもどうかと自分でも思っているが、5円チョコも買えないぐらいピンチなのかと聞けばきっとそんな訳はないはずだ。だって彼は食後のデザートとしてプリンを買っているのだから…

「ナマエ」

『何?』

「ほら、」

『え??』

「いらねぇのか?」

『いやいやいや!!頂きます!!』

粘っても貰えないと思い諦めて帰ろうとした時に静雄に呼び止められプラスチックスプーンの上に、一口にしてはちょっと量多めのプリンが乗っていた。何なのか分からないでいれば、口元にズイと近づけられ口の中に一口で入れる。するっと入ったプリンは口の中で甘さが広がって至福の時間だったが急に顔が火照ってしまう







((か、間接キス!?))

((あ、これさっきナマエが口に含んでたスプーンか))



20120212
しずちゃんは私の中では天然のイケメンさん(タラシとも言う)
でも、言葉使いが迷子になったのは反省しなければならないと思った
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