* 主人公社会人設定




はあ。

ゆっくりと上ってゆく煙を見ながら私は態とらしくため息を吐いた。


流れてしまえ!


「何だよ。」
「…いえ、何も御座いません。」

っていやいや、聞こえるようにため息を吐いたにも関わらず何もないは無いだろうと自分で思いながらも言えば、案の定突っ込まれた。

「そんな盛大に吐いておいて何も無いはねぇだろ。」

面倒臭がりな割りにこういう事は流してくれない私の彼氏はとてもじゃないが学生には見えない。色の抜けた髪に悪い目つき、身体つきもさることながら態度も中々に年相応とは言い難いく、煙草も良くお似合いではあるが彼はまだ未成年だ。一応彼女として、というかその前に良識ある大人として一言注意はしておきたい。

「煙草、やめたら?」
「今更。お前もたまに吸ってるだろうが。」
「いや君一応未成年でしょ。」

そう言えば手にしている煙草を口元にやりゆっくりと紫煙を吐き出して「うるせー。」の三文字で片付けられた。

「…。」

私達はいつもこんな感じだ。
会話はあまり長くは続かない。
お互い学生と社会人とあってあまり頻繁に会う方ではないが会った所で大して会話が弾むわけでもなく主に沈黙の度合いの方が大きい。
とはいえ、そういう空気が気まずいものでは無いのだけれど。

もう一度彼を見やるとまた煙を燻らせていた。

様になるなあ。
思わずその動作に見惚れつつ吐き出されたソレをぼうと眺める。

煙は、部屋の天井へと上っていきその内空気に紛れて見えなくなった。

やめればと言ったものの別に煙草が嫌いなわけではない。
自分も吸う時があるし、寧ろ煙草を吸っている時の動作は結構好きだったりもする。

ただ。
たまに思うのだ。
あの肺を満たす煙が恨めしいと。

自分でも馬鹿げていると思う。
でも、自分もああやって彼の中を満たせられる存在であればいいのにと思う。
そして依存症にしていつか真っ黒に染め上げて内側からどんどんどんどん侵食してしまいたい。
そんな下らない事を考える私はどうしようもなく彼に惚れているのだ。悔しい。

「…おい、名前。」
「え、ああ、何?」
「もしやめたら何してくれんだよ?」

あら意外。あれで会話は終了したと思っていたのにと仁の顔を見やれば面白そうなおもちゃと見つけたと言わんばかりの意地の悪そうな笑顔でこちらを見ていた。

そういうところはまだまだ子供だなと思う。そして可愛い。ああ、本当どうしようもなく惚れてしまっている。

とにかく愛しさと悔しさて堪らなくなった私は無言で仁にキスをしてやった。



ああもういつか見返してやる

end.







人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -