始めは全く馴染みの無かった教会も、もう随分慣れた。
名前から、毎週日曜日は教会に行くのが習慣なのだと聞いてから、何となくついて行くようになって今では自分の習慣にもなった。

朝早く、誰も居ない小さな教会で名前は目を瞑ってただひたすら両手を絡めて動かない。
毎週毎週、飽きる事無くお祈りをする。
それをただ俺は眺める。毎週毎週、飽きる事無く。

朝日が降り注いで、長い睫毛が顔に影を落としている。
特別美人という訳でも無い名前は、この場所でこの時だけまるでそれこそマリア像のように綺麗で、神聖な存在になる。
それが自分には眩しすぎて遠すぎて、でも何故か目が離せない。その存在に本能的に惹きつけられる。

「仁王君は、お祈りしないの?」
「見てるだけでええ。」
「折角なんだから、すればいいのに。」
「俺は神様なんか信じとらん。」

そう言えば、名前はこんな所でそんなこと言っちゃ駄目だよ、と笑った。
こうして話して居れば何て事無い普通の女の子だ。

「お前さんは、いつも何を祈っとるん?」
「内緒。」

以前にも聞いた事があった。
その時も、名前は同じ答えをして、同じように何処か悲しげに笑った。

何故か、これは勝手な想像に過ぎないが、その小さな身体にとてつもなく大きな物を抱えているような感じがした。
どんな天気の時も欠かさずに教会へ行って、それがいつから続けられている事かは分からないがひたすら祈る。
それほどまでのその願いを俺は知る由もないし想像すら出来ないが、きっとそれはとてつもなく切実であるくらいは分かる。

「名前」

腕を引っ張り抱きしめた。
想像以上に華奢な身体はすっぽりと腕の中に収まってしまう。

「に、仁王君?」

慌てたようにじたばたするのも気にせずにただ抱きしめた。


ただ、抱きしめる事しかできなかった。


半分だけでいいから、分けてくれ

end.







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