昼休みに彼氏に呼び出されて行ってみれば急に振られた。
何の前触れも無かったのにいきなり言われたもんだから私は何の冗談かと笑えばどうやら冗談でも何でも無かったらしい。

短い付き合いでも無かったから、相手の考えている事はある程度分かっていると思っていたしそれなりに順調だと自負していた。

余りに唐突で、自分の中でもすぐには整理出来なかったし涙も出なかった。
ただ授業にも出る気にはなれず屋上で一人ぼーっとしていた。
さっき授業を終えるチャイムが鳴ったがまだ教室に戻る気にもなれず次もサボろうと決め込んで、また始業のチャイムが鳴るのを聞いていた。

眼下ではどこかのクラスが体育をしていて、騒がしい声が聞こえた。


キィ、と錆びついた扉が開く音がした。
私と同じくサボりかとそちらを見ればそこには幸村が居た。

「何サボってるんだよ。」

そう言いながら幸村は歩み寄ってくる。

「幸村もじゃん。」

俺はお前を探しに来たんだよ。そう言って私の横に腰掛けた。
何、心配してくれたの?茶化して言うと幸村は機嫌が悪そうに悪い?と言った。

「何があったとか別に聞かないけどさ、名前がそんな顔してると何か調子狂うんだけど。」
「あたしそんなに変な顔してる?」
「余命いくばくも無いって宣告されたような顔してる。」

自分では意外と平気だと思っていたけれどそうでも無かったらしい、アハハと笑って誤魔化してみたけど自分でもわかるほど乾いた笑みが漏れた。


「振られちゃったー。」
「…ふうん。」

え、それだけ?慰めてよ。そう言えば幸村は何で俺が慰めなきゃならないのなんて言いやがった。何だよ、心配して来てくれたんじゃなかったの。


「名前を振るなんて、そんなどうでもいいやつの事なんて気にする方が馬鹿だよ。」
「それ、一応慰めてくれてるの?何か私が悪いみたいな言い方なんだけど。」
「名前が悪いんだよ。」

えー何それ、うわなんかあたし泣けてきたかも。さっきまで平気だった筈なのに、ポカンと何かが空いているような感覚に気付いてしまった。
一気に喉の奥がつんとして涙が込み上げてきた。
やだもう。何なのこの展開。

「幸村の、馬鹿。」

出した声は自分でも分かるほどに震えていた。言葉を発した事で余計に涙が零れそうになる。
ギリギリ目にとどまっている涙が落ちないように堪えていると幸村が立ち上がる。

「こういうときは何でもいいから涙を流す方が良いんだよ。そうすれば少しはスッキリする。」

ポンと頭に手が乗っけられると涙がポロリと落ちた。

「何それ無理やり過ぎ…っ。」

一度流れてしまえば涙は止まらなくて、馬鹿みたいに泣いた。
その間幸村は何も言わず頭に置いた手を退ける事も無くただそこに居た。

「…はぁっ、ほんとになんかスッキリしたかも。」
「やっぱり名前は笑ってる方がしっくりくる。」
「はは、何その殺し文句。」
「名前にはもっといいやつが居るだろ。」
「今度は褒め殺し?」
「俺が居るだろ。」
「その冗談ウケる。」

残っていた涙を拭って幸村を見ると真面目な顔した幸村と視線が合う。思わずドキリとして視線をそらした。

「真面目に口説いてるんだけど。」
「…弱ってるときにとか、ずるい。」

幸村の手が伸びてきて頬の涙の跡を撫でられた。そのまま頬に手が添えられる。触れられている部分に熱が集中する。

「今まで待ってたんだから、今更手段なんて選ばない。」

幸村の顔が近づいてくる。目が反らせない。

「逃げないの?」
「幸村の、馬鹿…っ」

ま、逃がさないけどね。
そう言って幸村との距離がゼロになった。


end.







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