※注意
※銀土がパパママです。子供います。





「ぼくのかぞく」
いちねんはぐみ さかたとうごろう


 ぼくのかぞくは、おとうさんとおかあさんとおねえちゃんとおにいちゃんのごにんかぞくです。
 おとうさんは、おうちでよろづやというしごとをしていて、おかあさんは、しんせんぐみでふくちょうというしごとをしています。おねえちゃんとおにいちゃんは、もうおとななのでおとうさんのしごとをてつだっています。
 おとうさんはおうちでおしごとをしているので、あさごはんとばんごはんをつくってくれます。おとうさんのごはんはとてもおいしいです。ぼくはまよねーずがだいすきだけど、おとうさんのごはんはまよねーずをかけなくてもおいしいのですごいとおもいます。
 ごはんとたべたあとは、まいあさおしごとにいくおかあさんといっしょにおうちをでててらこやへいきます。おかあさんはとんしょにいくときはくろいろのたいふくをきています。ぼくはいつものきもののおかあさんもすきだけど、たいふくをきたおかあさんとてをつなぎながらあるくのもだいすきです。
 てらこやでべんきょうがおわると、おねえちゃんとおにいちゃんがむかえにきてくれます。ふたりがおしごとでいそがしいときは、おばあちゃんやおにいちゃんのおねえさんがきてくれます。
 おうちにかえるとおとうさんがごはんをよういしてくれていて、おかあさんがおうちにかえってきたら、ごにんでたべます。
 おねえちゃんとおにいちゃんはごはんをたべると、ふたりでおにいちゃんのどうじょうへいってしまいます。だからよるはおとうさんとおかあさんとさんにんになります。
 おねえちゃんとおにいちゃんはかぞくだけど、べつにおうちがあるらしいです。うちはごにんかぞくだけど、おうちがたくさんあるのだとおかあさんはいっていました。
 ぼくはむずかしいことはよくわかりません。
 でも、おうちでおしごとするおとうさんと、しんせんぐみでふくちょうをするおかあさんと、けんかもめんこもつよいおねえちゃんと、やさしいめがねのおにいちゃんとごにんでたべるごはんはとてもおいしいです。
 だから、ぼくはおとうさんとおかあさんとおねえちゃんとおにいちゃんのごにんかぞくでよかったとおもいます。



「十五郎は?」
「寝たよー」
 少しだけ開いた襖の向こうでは、愛息子が胸元までタオルケットを掛けられて静かな寝息を立てている。むぐむぐと頬を動かして、寝返りを打ち枕に顔を押し付ける仕草は、どこぞの銀髪の天然パーマと同じだ。
 親子っていうのは、こういうところまで似てくるのかと笑みを零してから襖を閉じ、湯上りの汗ばむ首筋をタオルで拭いながら、自宅兼事務所のソファに腰掛け何かを読みふける銀時の横へ腰を下ろす。
 飲みかけのまま机の上に置かれている麦茶の手に取り、口をつけるとぬるいはずのそれが、火照った身体には大層冷たいもののように感じた。
 ふぅと一息吐いて、土方は銀時と膝が触れ合うほどの距離ににじり寄ると、銀時に肩を抱き寄せられる。

「…何読んでんだ?」
「んー…」
 抱き寄せられ、手元の紙を濡らさぬように髪を耳にかけながら覗き込むと、今日息子が寺子屋で書いてきたらしい作文があった。夕食後に、銀時と土方そして神楽と新八の前で、寺子屋で読んだときと同じように十五郎が起立の姿勢で元気よく読み上げられた内容を思い出すと、それだけでなんだか目頭が熱くなってくる。こうして、一人その作文を読み返していた銀時も、恐らく同じ心境なのだろう。

「…俺の手にすっぽり納まっちまうぐらい、ちっこかったのになぁ」

 作文を二つ折りにしテーブルの上にそっと置いた、その両手をじっと見つめる銀時の顔は、困ったような嬉しいような、複雑な表情をしている。きっと今の自分も泣きそうな気持ちを堪えて、銀時と同じような顔になっているに違いない。

「すげぇ幸せだなって…思うんだけど、やっぱ言葉にすると陳腐になっちまう」

 ぽつんと呟かれた言葉の意味。
 掌を見つめる銀時の視線の先、何も掴んでいないその手を、ぎゅっと握る。俯きがちに落とされていた視線が上げられ、まっすぐに土方を見つめてくる。知っているんだ。互いのこの掌が、どれだけ血に塗れているのかなんて事は。
 それでも、今こうして寄り添って、大事なものの傍で生きている。そんな温かい気持ちを表す言葉は、きっと「幸せ」だけじゃない筈だ。そう思うのに、それ以上の言葉が出てこなくて、いつだって口を噤んでしまう。
 言葉に困り、せめてと手を握り寄り添いながら、小さく呟くのは在り来たりな言葉。

「銀時…ありがとうな…」
「それは、こっちの台詞なんだけどなぁ…」

 クスリと笑い、顔を覗き込むようにキスを仕掛けてくる、その瞳はもう潤んではいなくて。
 唇に飲み込まれたのは何だったのか。


「じゃあ、もう一人子作りしますか?」
「ばーか」

 キスの合間に唇ごしに囁かれた甘い言葉を受けながら、背を抱かれソファに押し倒される。泣きそうになるのを誤魔化す銀時の癖だなんて、とっくに知っているけれど、気付かない振りをした。

(幸せだなんて、そんなもん…)

 お前の傍に居られた時から、ずっとなんだと…
 告げる事の無い言葉を胸の奥て沈めながら、土方は笑いながらそっとその背を抱いた。











おまけ:

「んぅっ…」
 口付けを交していると、飲みきれなくなった唾液が口角から喉へと垂れる。唇を離して、銀時が舌先で首元へを辿り、それを舐め上げた。その柔らかく触れる舌先に、ぞくぞくとした感覚が背筋を這う。
「ぁ…」
 銀時と名前をこめて視線を向けると、大丈夫と小さく囁かれそっと乱れた髪を撫でられる。その大きな掌が気持ち良くて、すりっと顔を摺り寄せると、銀時は目尻を赤くして「ちくしょ」と舌打ちして、ぎゅっと縋る様に抱き締めてきた。
「銀…」
 そんなに強く抱き締めなくても、逃げやしないから。求めているのは、お前だけじゃないから。

「十四郎…十四郎…」
 何度も名前を呼び合いながら、縋るこの身体が愛おしい。名前呼ぶ代わりにぎゅっと強く背中を掻き抱く。抱き寄せた筈の身体は、ソファの座面に縫い付けられて、身体を離されてしまった。離れていく温もりが寒くて、銀時を見上げると、
「んな、縋られっと…我慢出来ねぇから…」
 と、眉間に皺を寄せて堪えきれない顔で、銀時が吐き出す。着流しの合わせから手を差し入れらて、胸元を掌がなでる。掌の冷たさに、肌が粟立ち撫でられた乳首がぷっくり勃ち上がるのを自覚すると、それだけで頬に朱が走った。
(期待してんのか…俺ぁ…)
 こうして、触れられるのはいつぶりだろう。息子が生まれてから、前までの二人と違い、こうして触れ合う事が少なくなった。だから、きっとこんなにも期待に打ち震え、羞恥に駆られているのだろう。

「十四郎…こんなとこでごめんね…」
 寝室には十五郎が眠っているから、情を交すのはこんなソファでしか出来ない。
「構わねぇよ」
 でも、触れ合う事が出来ればどこでも良くて。そんな気のない返事を返せば、銀時は一瞬驚いたように目を見開いて、土方の意思を的確に汲んで笑う。
「そらぁ違げぇねぇ」
 だから、早くよこせと、銀時の作務衣の合わせと乱そうとした時だった。





「かぁさま…とぉさま…」


 ぐずぐずと鼻をすする声を上げながら、襖が開く。
 ばっと身体を起こして、ソファの上で、触れ合っていた身体を離す。
 ソファの背ごしに、寝室へ続く襖を見れば、いつも一緒に寝ているぬいぐるみを両手に抱き締めて、愛息子が目をしぱしぱさせながら、ぐずりながらたっていた。
 慌てて、着流しの前を合わせて、土方は銀時の下から抜け出し、十五郎の前へ駆け寄る。

「どうした?」
「かぁさまぁ…」
 十五郎の目線に合わせて、しゃがみこむと、母を認識した息子が涙を零しながら抱きついてきた。一人で眠っていて怖い夢でも見たのだろうか、ぐずぐず泣きながらしがみつくその背をぽんぽんと撫でる。
「…一緒に寝ような?」
 そう優しく土方が囁くと、胸の中に抱き締めた身体は何度からコクコク頷く。
 よし、じゃあ行こうと寝室へ向かうように促す。ソファの上からは銀時が仕方ねぇなぁとう顔で、「俺も行くから」と笑うから、十五郎と一緒に寝室へ向かった。
「とぉさまはぁ…」
「とぉさまもすぐに来るからな。一緒に寝ような」

 襖の向こうで交わされる言葉を聞きながら、机の上に置かれている作文用紙を手にとり、銀時は事務机へ向かい、その一番したの引き出しにそっと仕舞った。
 大事なものは、全部ここに。重ねた時間はここに仕舞ってあった。

「幸せ…かぁ…」



 滾った息子を宥めもせず、欲情に任して求める事もせず。
 手を離して、ただ傍で眠る。
 そんな温かさがいつだってここにあるから。
 だから、きっと泣きたくなるんだ−



 滲んだ涙を拭い、ぐずった息子を宥めながら眠るその二つの愛しい身体を抱き締めに行こう。そう思いながら、静かに引き出しを閉めた。







TOP

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -